2014 . 1 . 21

続きで、話が飛んで、視力について-眼瞼下垂と関係があるような?ないような?‐Ⅲ

視機能の編の、続きの続きで網膜です。像を結んで光を感知し、神経に信号を与える臓器、カメラではフィルムです。網膜は視信号を作るところなので、信号を送る神経や信号を受けて脳内に像を造る脳の話も加わります。

その前に前回書き忘れた白内障の件を書き足します。

白内障は、水晶体の透過性低下です。加齢によることが多く、だれでも必ず年齢とともに生じます。薬剤性や、先天性や、物理的な要因もあり得ますが、ほとんどは加齢性です。視力としては、すりガラスを通してみていることになる訳で、ぼやけるのです。老視も同時に進むので、近くが見にくくなり、離すとぼやけるので、字が読みにくくなります。手術で人工レンズに入れ替えれば治せるのですが、屈折調節ができなくなります。レンズをどの焦点に設定するかですが、日常生活での1メートル前後に合わせる場合が多いようです。当然老眼鏡は要ります。遠近両用レンズもできたのですが、かえって焦点がうまく合わないようです。

そういう訳で、私共が携わる機会の多い、加齢性眼瞼下垂の手術患者さんの中には、白内障治療として眼内人工レンズの挿入手術を受けた人が多くいらっしゃいます。その場合、注意点が二つあります。一つは、眼球を押さないこと。強く押すとレンズがずれて焦点が変わる可能性があるからです。私たちは眼瞼を手術するだけですが、やさしく、触るように注意しています。もちろんその結果ずれた人はいません。もう一つ、眼瞼下垂手術を受ける方は、眼瞼が被さっているために視野が狭くなっている人が多いのですが、そのために白内障の手術したための視力の良好化と屈折の変化を自覚していない人も多くいらっしゃいます。白内障の手術後に、眼瞼下垂手術をして視野が広がった結果、初めて視力の良好化に気付く人もいらっしゃいます。これはいいことですが、逆に初めて屈折の変化に気付く人もいらっしゃいます。手術後に「ピントが合わなくなった。」と言われて、レンズの焦点距離が患者さんの生活に合ってなかった事が、露呈する症例はたまにあります。術前に瞼を開くシミュレーションの際に聞いておくことが必要だと思います。

それでは、網膜です。網膜は神経に繋がるし細胞を並べて、それぞれが感知した光度、色を神経に伝えて、総合して像とする器官です。この場合デジタルカメラに凝らして画素と言えます。デジカメの画素数は今や500万なんてざらですが、網膜の視細胞はその100倍は下らないのです。人間は凄いのです。

でも生き物の細胞の中で網膜の細胞は再生しないので、大事に使いたい物です。網膜の視細胞は加齢では自然減少はしませんが、何らかの原因で壊れたら、減ります。

また、網膜の視細胞と視神経と脳の視神経野は他の多くの器官と同じく、生下時には未熟で連携がありません。新生児はほとんど見えていないか、見えた物を判断できないのです。視力が発達するには網膜の機能が発達し、脳の処理能力が向上しないと像として認識できないので、視情報が入らないと、つまり眼球が網膜に光を入れないと発達しないのです。ここで形成外科医の出番です。先天性眼瞼下垂の患者さんの中で、角膜が隠れている程重症の新生児。この子はこのままでは視力が発達しないのです。屈折調節して、近くに合わせれば大きな像はなんとか見えますが(牛乳瓶の底みたいなアレ)、遠くはぼやけます。これは弱視となります。視力の中で網膜、神経、脳の問題は不可逆的なのです。ですから、先天性眼瞼下垂症の患者さんで、角膜が隠れている場合、3歳までに開かなくては一生視力が得られませんので、1歳前後にに手術します。通常生まれた産科から形成外科を紹介されますが、地方の医療過疎地域では見落とされる事もある様です。私は今まで数例幼少時に手術しました。ところが、先日、未治療というか、幼少時に眼瞼下垂を放置された患者さんが来院しました。可哀想に、視力が得られない。矯正して!よく見えない。0.5以下です。いわゆる弱視です。でも美容的に眼瞼下垂をなんとかしたいとのことで、吊り上げ手術をしました。上が見える様になって喜ばれました。この私のブログや池田先生のブログで、眼瞼下垂の診療について詳しく説明してきたので、最近は眼瞼下垂の患者さんが殺到しています。特に未治療や幼少時の治療不備で成人になっての先天性眼瞼下垂患者さんは、すがる思いで来院されました。私はこの1年に5人も手術しました。皆さんいい形態と機能を得られました。放置された患者さんがいた事が残念です。

網膜の病気は視機能に置いては致命的です。緑内障、加齢性黄斑変性、網膜剥離、糖尿病、高血圧などたくさんの病態があります。沢山あるのは、それだけ大事で不可逆的だからです。

各論は私の範疇ではないので割愛しますが、加齢病態の一つとして、対処していきたいものです。当院はアンチエージングをメインテーマにしていますからね。

そこで、自分に起きた病態を明かします。実は私は、2011年3月8日に網膜剥離を発症しました。原因は加齢と済まされましたが、物理的外力も考えられます。朝電車を降りたら、右目の前がモヤモヤしていまいた。気にしないで診療と手術をしていたのですが、翌朝は下の方が見えない。前は普通に見えます。すぐに気がついて、近くの眼科で眼底検査をしてもらうと網膜剥離が見つかったのです。進行すると困るので、すぐに手術の手配をしました。             翌日に卒業した北里大学病院の眼科にかかり、3月11日に手術予定を入れてもらいました。ところが、震災が発生しました。手術は延期となり、進行しないか不安でしたが、なんとか15日に手術を受けられました。術直前には、下Ⅰ/4の網膜が剥がれていました。また、水晶体も加齢で濁っているので、白内障と同じ様に眼内レンズに入れ替える事になりました。度数は35㌢の固定レンズ。丁度手術に使う距離です。                              現在、右目は35㌢の屈折に固定で調節は不能ですが、視力は矯正すれば1.0あります。左目は、近視老視で、75㌢から50㌢にピントが合います。2〜3Dです。老眼鏡で1Dの矯正と遠近眼鏡での1.5〜1の矯正をすれば生活や、診療、もちろん車の運転にもに支障はありません。特に40㌢前後は普通に見えますから診療時は無矯正です。ただしちょっと患者さんに接近しますから嫌がられる事もあります。

屈折と視力の関連を理解して頂けたと思いますが、検査には特別な器械がいるにで、私達には客観的評価ができないのです。ここまで説明した範囲で、症状の診察で私達に判る視力の評価をしますが、精密な評価は眼科に委ねますから、精密検査が必要な時は紹介いたします。

視機能の話を3回に渉って書いてきましたが、専門ではないだろうと言われそうです。でも、私はかなり関知していますよ。眼瞼下垂の治療時前後には、留意すべき事が沢山ある事は述べてきました。その意味で私は反芻し、改めて重要性を再認知させてもらいました。ブログを公開する事の有用性を最高した次第です。

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