2017 . 3 . 29

上口唇短縮術と口角挙上術の経過は、術後5週間で形態と運動は落ち着きましたが、傷跡は拘縮しています。

上口唇(白唇部)切除術と口角挙上術の組み合わせ手術の形態は良好です。動的なDynamic 形態と静的なStatic 形態がありますが、さすがに手術後5週間も得ると動きも正常化し、セクシー度合いが挙がってきました。本ブログをご覧になって、「唇の形がS.Is.さんみたいに可愛くなっていますよね!」って云われました。別にタレントをモデルにしたわけではありませんが、しっかりして表情に富んだ口元という意味でしょう。私は動的静的な形態改善を重視しています。静的形態は見た目ですが、同時に動的形態を作るためには解剖学的な構造の知識に基づいた手術法が必要なのです。その上求める静的動的形態は個人差もありますし、元の形態により手術法も使い分けなければならないのです。本症例はその点で満足な結果を得られそうです。実は経過が長いのです。それは最大限希望を汲んで手術法というか切除幅を大きくしたからで、術前から織り込み済みです。

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上の画像ではわずかな動きが自然にできてます。ただし、傷跡はまだ目立ちます。

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側面ではエステティックラインが整いました。口が出ていないし、鼻の下から頤にかけての上下の比率も気持ちいい感じです。斜位でもチョコンとした唇が乙女チックです。表情を作っていないのに、動的な形態として”微笑み”を湛えているかのようです。

それでは、経過画像を時計を逆回しして提示します。患者さんはブログの画像提示をご覧いただいて来院されるのですが、ちゃんと経過を追って画像提示しているクリニックは少ない様です。だから私の画像提示はウソがないので信用出来ると捉える患者さんが多い様ですOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

まず術後2週間ですが、まだすごい画像です。

次に術前画像。症例は26歳、女性。ご覧の様に歯列矯正中ですがそれは前後位置で、上下長を治したい形態。内眼角間30mm、鼻翼幅36mm、白唇長17mmと長いし、鼻の幅もある。相対的に唇の横長も短い。逆に横長に比して厚みはある。

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評価;まずどう見ても長い。だから切りたい。鼻の下だけの白唇を切除すると口角が下がって見えるので口角リフトは必要です。鼻翼のサイズがあるのですが、顔面とのバランスはよい。唇を大きくしたいなら、口角リフトのデザインを検討した結果斜め方向45度に向かってあげたらいいのではないか。さらにシミュレーションして、切除は口が閉じるギリギリの7mm。口角は8×8mm頬骨弓方向へつまり45度方向に引き上げると同時に内側に向けて丸く増やすデザインにしました。

もう一度術前の正面像と右側面像を提示します。

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鼻の下が長いのは一見して確かです。なんか下顔面が間延びしている。特に側面像でエステティックラインがゼロなのに鼻の下が長いのでバランスが白唇がべたっとしている。もう一つ唇の裏返りは少々足りないので、白唇部切除の深さは口輪筋までではなく皮下脂肪層内に留めて、軽く外反させる事にしました。

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術直後の正面像はすごい画像となります。腫脹が起きます。ただし鼻の下の創はピッタリ寄せられています。二層目の真皮縫合をする時点でピッタリ寄っていました。そこが重要です。だからこの手術は、形成外科医の独壇場だといえます。真皮縫合が重要です。真皮縫合で真皮層を寄せ続けないと幅ができてしまうのです。よく術前に患者さんに「後戻りするってきいたんですが。」と問われますが、広がらない様に縫合すれば、後戻りはしません。実は顔面は血行がいいので、形成外科医が真皮縫合して、真皮層が一度くっ付いたら広がらない部位なのです。形成外科の修練をしないで顔面を切る医師が横行しています。医療制度上の不備です。日本は酷い国なんです。顔を切るのは、形成外科医以外はしてはいけないと思います。

 

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もう一度術後5週間の画像を提示します。実はメイクして創跡の赤い線を隠してくれました。でも形は見えて来ました。運動も回復して、表情としてはなかなかいい。とにかく、創跡は目立たなくなります。これまで提示した症例をご覧いただけばお判りだと思います。

た〜だしい、本症例の5週間目が像では、口角部の創跡が目立ちます。そりゃあそうです。8×8㎜も切除しました。引き上げ量が多ければ移動距離が多い。それだけ創が引っ張られます。創は縫合すれば面と面がくっ付く際に収縮します。収縮するのはコラーゲンですが、創跡を治す際に出来るコラーゲン(膠質=糊)は幼弱なⅢ型コラーゲンが産生されます。これは創の線にまたがって収縮するだけでなく縦方法にも収縮します。これを拘縮といいます。緊張が強いとコラーゲンは頑張って拘縮が増加します。上画像で両側口角にV字型に創跡の線が見られます。本来口角は後ろにあり、赤唇縁の堤もないから切れるのですが、逆に後ろにあるから創跡が拘縮すると、前にせり出して来てしまいます。距離を短縮させようとするのです。所謂水かき状態です。Ⅲ型コラーゲンは創跡の真皮層をくっ付ける為のコラーゲンで、3ヶ月で成熟したⅠ型コラーゲンに置き換わっていきます。そして周りと変わらない軟らかいコラーゲンになります。水かき状も解消します。

実はこの説明まではご理解いただいてます。その後私は思い出しました。「目頭も水かき状になる事がある。」「でも必ず治る。」そうです。目頭の頂点は後ろにあり、現在私が常に施行しているZ−形成法による目頭切開の後、上下にV字型の瘢痕が出来ると拘縮して前に出てくる症例があります。本ブログでも紹介して来ました。水かき状と称しています。そして、数ヶ月の経過中で必ず拘縮が解除されて来て、見えなくなって来ます。ブログでも紹介して来ました。私は気が弱いので、いつ治るかびくびくしていて、患者さんが来院する度に「目頭の創跡は目立たなくなりましたか?。」と聴くと逆に患者さんに「目頭はきれいに仕上がって来ました。嬉しい!」と返され毎回拍子抜けするくらいです。治る水かきと治らない水かきがあるのです。それは緊張の方向の問題で。目頭Zー形成も、口角挙上も理論的に治る水かきであると考えています。次回拝見する日をお待ちします。

とか言っていたら、患者さんは次には他の部位の治療に進む話しを振り向けて来ました。それはまだ先の話しですが、少なくとも本症例の患者さんとは、しばらくいい経験を積ませてもらえそうです。ブログの読者の皆さんにも有用性が高いと思います。