2017 . 3 . 22

黒目整形は内側が重要です。追加手術を希望されました。でも私も患者さんも更に拘ります。

黒目整形は切開法も非切開法も含みます。どちらも、眼瞼挙筋の強化を目的としますが、挙筋の強化法には二種類あります。

先天性眼瞼下垂症に対しては皮膚側から切開して挙筋腱膜の直接の短縮を要します。後天性腱膜性眼瞼下垂症に対しては眼瞼結膜側から結膜とミューラー筋および腱膜を縛る方法=LT法で腱膜と瞼板の連続性を再建する方法で可能です。

二つの方法を使い分けています。医療に於いて診断は治療手段の選択のためです。ですから手術法の使い分けには診断基準を確立しなければなりません。そうでないと患者さんの状態に合わない治療をしてしまう事になります。

これまで何度も記載して来ましたが再掲します。まず第一に既往歴です。幼少時の記憶がなくてもも左右差の印象を覚えている人も居ます。もちろん治療歴も聴きます。家族歴もあり得ます。そして、身体所見(あくまでも眼瞼部)としては重要な三つを調べます。第一に、前頭筋の収縮の機会は先天性では上を向くときも正面視でもほとんど変わりません。後天性では上方視時に更に眉が挙がります。第二に、挙筋筋力=挙筋滑動距離は先天性では低下、後天性では正常範囲です。第三に、先天性ではフェニレフリンテストに反応しませんが、後天性では反応してパチっと開きます。

最近では、一般人の皆さんでも知っている方が多くなりました。ましてや、美容形成外科医ならこのくらいは理解し、必ず診療行為として行なうべきです。残念ながら、チェーン店系美容整形屋にはそんな知性は持ち得ない様です。

いずれにしても機能的改善を求めるのですが、形態的(美容的)観点が欠けると、なんかきれいでないだけでなく、機能的改善も不充分になります。今回は他院で切開法で眼瞼下垂手術を受けた症例ですが、なんか形態的には不満足で、機能的改善も不充分な症例です。これ以上の改善を図る為には当院の形成外科・美容外科の最高レベルの治療が求められた訳です。その意味では診断が合っていて治療方法は適切でも、微妙な形態的問題が解消しない症例があります。そこに機能的改善の微妙なさじ加減の問題が介在しているからです。

症例は22歳、女性。先天的には一重瞼ですが、3年前にS美容外科で切開法の重瞼術を眼瞼下垂手術と称して受けている。目頭切開と目尻切開も併施されている。前回の結果として、右眼瞼の内側が挙がっていない。左も内側が挙がっていない。しかもハム状態が若干見られる。

では何をすると改善方向を見出せるか?、それには患者さんと私の相談を要します。一つには前回切開手術を受けているのでもう一回切開してもいいのかもしれませんが、やり難いのは確かでしょう。それに挙筋腱膜を上手に縫い寄せたらこういう結果にならない筈ですから、どうすれば治せるかが不明なのです。副次的;alternative に切らないでトライしてみる選択肢を適応する方が有害事象が無く、結果はゼロに近くてもマイナスにはならないと考えました。

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上に術前と術直後の写真を提示します。内側1/3の点=瞼板の内側縁にNILT法を施行しました。右側の眼瞼の内側はよく開いていて悦ばれました。

ところが、左側眼瞼の開瞼が不足していると訴えられました。それに内側の重瞼線が広くなっているのが治せていません。そこで早速右側眼瞼内側にNILT法=黒目整形の一種切らない眼瞼下垂手術を追加する事を私も乗りました。

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上の画像が2回目手術の術前と術直後です。ちゃんと左側眼瞼の内側が開きました。重瞼も狭くなって形態的にもきれいです。

ところが今度は左が右に勝ってしまいました。術直後だからでしょう?。まずはこれで様子診ましょう!。Herring現象でしょう?。判りません。

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上左の二画像は右眼瞼の、右の二画像は左眼瞼の1回目の術前と術直後です。

結果はマイナスではございませんよね。勿論ゼロではありません。少なくともプラス効果が得られました。

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そして今回2回目として、左にNILT法を追加しました。上左から、右眼瞼;前回の術後、今回の術後。左眼瞼;前回の術後、今回の術後。

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そして2週間後の画像です。今回右内側に追加しました。

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きれいなアーモンド型にできました。

前回左内側に追加したました。やはり右内側は落ちていました。左はアーモンド型なのに右の内側が二重がだぶついていました。右も一回は挙がったのですが今回よりは不足でした。

だから追加手術をやってよかったです。なかなかよく開いて、今回もクールビューティーで滅多に笑わない患者さんも術直後には微笑んでくれました。

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そして更に2週間後です。下に術前術後の近接画像。

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違いはよく判ります。右眼瞼(左の2図)の内側の上がりは改善しています。左の眼瞼(右の2図)の内側は強く入っていましたが、丁度良くなりました。患者さんからもお褒めに預かりました。クッキリパッチリしていて私も好きです。魅力的な目元です。右は上眼瞼全体が挙がりました。

ところがまだ、右眼瞼に不足を指摘されました。皆さんお判りですか?。糸は点に掛かっています。瞼縁の内側黒目(角膜)の内側縁の接線上のカーブがカクッとしているのが(切痕)点です。左では重瞼線にも切痕があります。ところが、右では糸の点より内側の重瞼幅が膨らんでいます。左では術前に重瞼の高さが挙がっていたのを治して図の如く全くの平行線です。右では内側の点から目頭に向かって重瞼幅が広がっています。一見してきれいな目元なのですが、指摘されるまでもなく、平行には仕上がっていませんです。

さて、原因について考えました。糸が掛かっている点は正しいと思います。瞼板の内側縁までしか掛けられません。通常点が正しければその内外にも引き込みが自然に出来ます。見た目の幅も平行か末広にしかなりません。逆末広側になるとすれば、開瞼が弱いか、皮膚のだぶつきかが考えられます。そうか!、私は皮膚を触っていません。前医の切除デザインに於いて、内側の切除が足りなかったのか、それとも挙筋の挙上力が不足かのどちらかが考えられます。まさか!これだけ挙がっていて挙上力が不足な訳はありません。皮膚の余剰としか考えられません。前医のデザインが下手なんだろうと人の性にしたら、今度は私にはね返って来て、「じゃあ、線下の皮膚を切除するしかないでしょう?。」と私と患者さん二人の意見は一致しました。いずれ追加しようと言う事になりました。

私は美容学にこだわりを持ちます。父から55年以上、私の美容形成外科医人生30年になります。それが美学です。私がこだわるから、こだわる患者さんが来ます。こうして広告(現在医療法ではブログを誘引行為としての宣伝とは見做していないが、知らせるという意味では広告です。)しているのだから、仕様がないのです。日常それぞれの患者さんの希望を汲み取って診療することもモットーとしています。患者さんは皆個体差が有り、希望には好みと周囲の社会性による差が必ず伴います。みんなに同じ事を施しても満足感は得られません。これが美容形成外科医55年の美学です。父にもそう諭されて来ました。

そういう訳で、今後とも本症例の美容的価値をお見せしていこうと思います。