2017 . 5 . 17

唇は印象を変える。ただし3か月でも傷跡は見えます。

面白い症例で、組み合わせ手術による確実な結果を得るべくデザインに腐心しましたが、最終結果が出るまでは日時を要すると考えられます。3ヶ月で患者さんに評価はいただきましたが、まだまだ見せていただく事になりました。症例の紹介はコピペが主体になることをお許しください。

症例は40歳前後の女性。顔のバランスとして下顔面の割合が長いタイプである事を治したいと来院されました。「見た中で一番形がいいし、創跡の位置が適切で、それでいて創跡がほとんど見えなくなっているのはこちらだけです。」とお褒めに預かりました。

サイズ計測に入ります。鼻柱基部〜Cupid’s bowの底を計りますが、15㎜でした。これまで書いて来た様に15㎜が基準です。実は私、一目見てあんまり長くないかも、でもなんかモッタリしている口元だなあ、と思ったので計ってみたんです。口角だけが薄く寂しいからでもあり、下がっていないのに暗い感じがもします。

私は診察時の当初は、短縮術の適応かどうか迷いました。でもなんかモソっとした口元が治せないか考えました。歯槽や歯が貧弱ですから、ぺたっとしていて唇も貧弱感があり、その為に長くないのに長く見える。例えれば日本人(アジア人)の平板な中顔面がノッペリしている為にやつれて見えるのと似ている形態です。長く見えるのは短くしてしまいたい希望は汲めます。歯槽が突出していないのに、口唇そのものが薄いと冷たい感じになるのです。まずは口唇(鼻の下は白唇部です。)短縮術を適応しました。

そして口角挙上術のデザインを検討しました。患者さんは「口角が薄く後退しているのは当然としても、それより内側まで薄いのです。」「先生のブログでは5〜7㎜上、内側に5〜7㎜三角形に切除とありますよね。」私「これまでその範囲で調整して来ました。」患者さんは「でも私、口角はそんなに下がっていないので、するのなら内側までしっかり切除して下さい。台形でもいいから。」と提案されました。よく診ますと、確かに口角から1㎝内側まで薄く貧弱です。台形に賛成です。それに鼻翼幅が34㎜と小さいので、ここだけ切除すると、口角が下がる。だから赤唇縁での挙上術が必要なのです。「だったら鼻翼基部の直下まで赤唇縁を切除するデザインが求められますね。」と廻りくどく説明して同意しました。

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型の如くの手術です。 深さは選べますが、本症例はやや裏返られせたいので、皮下脂肪層まで切除し、口輪筋をPlication; 折り畳む事にしました。3層縫合です。2層めの真皮縫合の終わった時点で創はピッタリ寄っていました。口角挙上術は下口唇縁まで切開を延長してたわみを無くすデザインです。口角を口輪筋ごと移動させて引き上げます。あたかも微笑んでいる様な口元が作り上げられます。

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術直後の腫脹と傷の為に形態の評価は難しいと思います。口唇周囲は血行が豊富なので腫脹が強く、周囲の表情筋が効かないため、力の無い写真になっています。でも血行が良いため腫脹の軽快も筋の回復も遷延しない傾向にあります。

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術後1週間での抜糸にいらっしゃいました。確かに腫脹の軽減傾向は見られますが、内出血が顕在化してきました。実は上の画像ではコンシーラーで隠してくださったのですが、赤唇部の紫は隠せませんでした。口紅で隠せるのかもしれません。

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上画像は術後2週間です。術後1週間のブログに口紅で隠せるかどうかと書きましたら、患者さんは読んでいただいたそうで、本当に術後2週間には口紅を引いて、カモフラージュして再来されました。気持ちが伝わって嬉しかったです。どうでしょう?。上手い!。口唇縁をスムースに書き上げています。なんかこの画像では、品性を備えながらも吸い付きたくなる様なセクシーさも感じさせる口元を演出しています。あくまでも化けているのですが・・。

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そして上の画像が術後3か月です。この手術では完成とは宣言しません。こうして診てみると、かなりいい形態ではあります。軽くメイクされてきました。術後経過の画像を比べてみると、表情はより優しく、楚々とした笑顔が美しいので、気持ちが盛り上がり診察しながら話していると、「まだまだ完成では無いでしょう?」と訴えられました。一つ一つ説明されました。

要約すると、1、左鼻翼基部から左鼻柱基部の創跡にギャザー。2、右下口唇の創跡にギャザー。3、左の上口角付近の創跡に線状陥凹がある。4、上赤唇縁のカーブは口角だけが挙がっている。どの点も、画像ではよく見なければ判りづらいですが、近接してみると見えます。でもよく考えてみたら、口唇にそんなに近づいたら合わしたくなるでしょ?。対面しての雰囲気は素敵としか言い様がありません。

それぞれに対してプランは提示しました。1&2に対してはCO2LASERで突部分をチッと焼けば平らに近づきます。3は治ると思います。治らなければ切り取ります。4は当初からの懸案でしたかが、余り気にならない形態になって来ました。もちろんメイクも関与しているのでしょう。3&4は同時に二次修正できます。顔面の創は血行が良いため治りはいいのですが、部位に因っては運動量が多いので引っ張られて創跡の発赤が遷延する事もあります。口唇は当然その部位です。ですから、少なくとも半年は経過を見てから二次手術をしましょうと提案しました。本症例患者さんとは信頼関係が成立しているので、承諾して下さいました。

ところがもう一つ、「ブログの症例を見たら、あの石原さとみの様になった人ですが、外反が良いですよね。今となっては私もしたかったかも?」ですって!。ブログがフィーバーしているのは嬉しいのですが、人それぞれは違うし、合う合わないもあります。だから、マスコミニュケーションは間違った誘導をしかねない。美容医療をねじ曲げていると再認識しました。少なくとも、本症例患者さんの赤唇を外反させたら、似合わないと思います。楚々とした雰囲気の中に、そこはかとない色気が似合う人だと考えます。ご理解いただけるでしょうか?。

ただし、こうして口紅を引いてもらうと、確かになんかいい感じで口唇の色気を作り出せています。寂しくない口元なんです。でも口が出ていないから品があるのです。本症例の患者さんは協力的で、お互いに信頼しているから、今後も良い方向性を見出せると思います。

画像上形態は格段に改善し、確実にいい雰囲気が出ています。見た目の感じが大事です。ですから逆に形態改善の余地があるなら、まだまだ検討の余地があるのです。その意味でも、まだまだ診ていかなければならず、しばらく症例の評価を楽しめます。だから口唇は面白いのです。