2017 . 5 . 16

美容医療の神髄-歴史秘話第90話-”口頭伝承”:美容整形屋と美容形成外科医”その65”「銀座から地方都市へ8:美容形成外科学医」

時空が跳んでしまいますが、先日T.M.先生とばったり出会いました。私は毎週火曜日の夜に銀座院勤務を早く切り上げて大阪に向かい、新大阪駅に20時前後に着きます。地下鉄に乗ろうと歩いていると、10mほど先に見たことのある顔!。目を合わせました。でも普通にカジュアルで地味な格好なので一瞬違う人かもと思っていながら、お互いに近寄りました。私から「仕事?」と声を掛けると、彼も「先生も?」私「名古屋から?」彼は「今日名古屋でした。私大阪の院長ですから明日に備えてきました。」私「僕も毎週大阪院に勤務しているんだ。」お互い早く目的地に向かいたいので、ここまで話して別れました。

すぐに思ったこと、いくらカジュアルにしていても、TVCMであれだけ露出している人が出歩いていて面倒にならないのかな?。そういえば地味に下向き加減だったな。でも、彼も忙しいんだな。かなり売り上げているという評判もあるし、これからもっと売れっ子になるんだろうな。そういえば私も2院を掛け持ちで手術三昧だなあ。彼も形成外科医を長年してきたから、まともな手術をしているんだろうな。でも、そういえばこちらの大阪院にTクリニック後に来た患者さんは、いまいち美的感覚が足りない結果があったな。まだまだ若いからかな?。やはり形成外科を多く修練していても美容的観点は涵養されないのか↓!。彼は父親とは別人格だから、落としては可哀そうです。これからもお互いに研鑽していこうと思いました。

話しを戻すと、学会等の団体の反目は、要するに形成外科医出身の美容外科医と、美容整形屋出身のチェーン店と危ないクリニックとが対立していると考えられます。美容外科診療に於いては患者さんの元の状態は様々で、社会的にも、経済的にも希望は汲むべきです。ところがチェーン店では全国的に広告を見せて患者さんを呼ぶので、誰もに一律に診療を施します。これでは、結果を気に入らない患者さんが続出する訳です。

だいたいにおいて、全国に何十店舗もあり、医師もバラバラだったり掛け持ちだったりするのに、同じ治療がなさ得る筈はないし、それに対して誰もが同じ治療で綺麗になる様な広告はウソ八百に決まっているので、患者さんを騙している様なものです。そもそも人が人を扱う施術は出来高払いで、決して請け負い契約ではありません。様々なメニューと医療側のバリエーションに富んだ引き出しから何が適応するかを診断するのが医師の仕事なのに、その部分は広告によって誘導され、さらに適応をカウンセラー(訳すと助言者)が相談して決めてしますシステムは医療でなく、ビジネスに違いありません。人間には尊厳があり、物ではないのです。広告は物を扱うのです。人間が人間に行なう行為を広告するなんて冒涜しています。

チェーン店はビジネスモデルが確立しています。Tクリニックが流行らせたのですが、嚆矢は十仁です。いずれにしても非形成外科医が編み出しました。そして儲ると医師を複数雇い、ビジネスモデルを学ばせます。昔(2000年頃)脱税して金塊を積んで琵琶湖をプレジャーボートで逃げた馬鹿野郎が居ました。面白過ぎて有名人になりました。彼は最もいい加減な医療者で、医学的観点が最低でした。実は関西には彼のところで学んだ美容整形屋が何人も居ます。今でも危ない美容医療を行なっています。電車の中に広告があるから知っているでしょう。

私は小さい頃、「お前のお父さんはヤクザ医師(薬剤師ではない。)!」と言われて悔しかったので、父に訴えました。父は「確かに稼いでいるからそう見られても言い返せないけど、いつかまともな普通の医療に見られる様になるさ。お前はどう思う?」と答えににならなかった。でもその時から私は`いつか僕はまともな美容整形医師になりみんなの目を開かしてやりたい`と想い、将来がおぼろげに見えたのです。

今でも、この頃の真面目な夢は見続けています。残念ながら今でも、上に挙げた様な輩は存在します。チェーン店は失われた20年の間にどんどん増殖しました。インターネットも持ちつ持たれつの関係で寄与しています。だからこそ、私はまともな美容医療を推進していきたいと心に誓っています。幸いにして当院では、広告宣伝は上手くて細かく、メニューも豊富です。決して押し付け医療ではありません。そうして稼いでいる隙間に私は好きな医療をしていられるので、やりがいがあります。

話しを戻すと、父は美容外科がまともな普通の医療だと見られる様に努力してきました。その為には先ず、学会が反目しないで、みんなで精進しあい、その中で不真面目な美容外科医師は淘汰されるだろうと考えていました。父はよく言いました。「美容整形医は二種類居る。金儲けが好きな奴と、美しい女性が好きな奴だ。お前はどっちになりたい?」私は女好きな方とは言いませんが、続けて父は「セックスが好きな女好きと、綺麗な色っぽい女性とと居るのが好きな女好きは違う。前者をスケベと呼び、後者を好色と呼ぶ。好色は美容外科医の条件だ!」とよく宣うのでした。そういう意味なら私は綺麗な色っぽい女性を見分ける目は持っているつもりですし、作り上げる自信はあります。その結果外面も内面もいい女を好むのが美容外科医の冥利です。

美容外科医療は、実は形成外科医療とは別物です。形成外科医療は形態と機能のマイナス要因を治す目的。美容外科医療は形態的にプラスをもたらす医療で、機能(社会的機能も)はマイナスを最低限にするべきです。ただし、技術と知識(解剖学、生理学)は同様に必要で、大学医学部での卒前教育では得られませんから、大学形成外科医局での卒後教育を受けるべきです。これがない美容医療の医師は危険人物か下手くそに決まっています。

だから、学会や団体を合同して、切瑳琢磨し、クーリティーを挙げていくべきだと唱え続けたのが父と私です。真面目に美容医療をしたいからです。その機運は育っています。厚労省が医師会に働きかけ、専門医認定機構を立ち上げ、現在システムの構築の段階です。数年後には各標榜科目に於いて、新規開業の条件が出来上がるでしょう。これでクーリティーを高められる様になるといいですね。

ただし逆に、美容外科的美学というかセンスを涵養する場が無くなっても困ります。美容外科は一人ひとり違う患者さんを、どのようにしたら患者さんが喜ぶか?、コミュニケーションが全てで、これをConsultation; 協議、相談といい、 Counselig; 勧告、忠告ではありません。それには、臨床的に多くの患者さんを診療しなければ身に付きません。形成外科医療はマイナスをゼロに戻す医療なので、個体差が少なく美容外科に比べて診療方針が医療側で立てられます。だから形成外科医医は、美容外科医療に携わっても押し付け医療になり易いのです。

昨今は、美容外科をしたくて形成外科に入局し、数年で美容屋に転向する輩が増えました。昔私達の頃は、最低でも7年居て認定医を取得しないと、形成外科で研修したと広言出来なかったのと比べて昔日の感があります。彼等若造が、形成外科で学んだ振りをして、美容外科に携わると患者さんの見方も知らないし、知識も不足でゼーンゼン出来ない奴になります。逆に長年形成外科だけに携わった医師が喰う為に仕方なく美容外科に手を染めても、患者さんの見方を全く知らないので見当違いの美容医療をしてしまうのです。

私は形成外科に入局した直後から、研究日には銀座美容外科医院で父の下で診療見て来ました。これだけで目が肥えました。何万人の患者さんを見て来て何万通りもの美容医療の見方が身に付いていると自負しています。もっとも、こんなに恵まれた環境にある美容医療者は数少ないでしょう。上に記した様に私とT.M.君くらいでしょう。今後の趨勢に期待したいと思います。

それはそれとして、次回からようやく大分院の話しをしましょうかね?