2017 . 10 . 19

口周りの手術は正面像だけでなく側面像も大事です。

口周りの手術を行なう際には周囲の形態とのバランスが重要です。本症例では正面画像では予想以上に(時間がかかると推量していました。)いい感じの経過が見られます。そして側面像ではどうでしょうか?。皆さんの誰もが認識する様に下顎後退症です。白唇部切除と口角挙上術がこの面にどれだけの影響が及ぶかが、面白い症例です。

トーヌスが戻ってきて、早く治る症例です。取る量に因りますが、最近は限度を設定していますから、通常量では個体差があるのです。そりゃあそうです。神経と筋の回復は機能の問題ですから、数字で決められません。後段で説明します。

症例は30歳の女性。白唇長(鼻柱基部〜弓の底)21㎜と長い。内眼角間距離31㎜、鼻翼幅31㎜、口唇幅41㎜と横幅のバランスは取れている。顔面縦比は上顔面(生え際〜眉下)60㎜:中顔面(眉下〜鼻下)60㎜:下顔面(鼻下〜頤先)65㎜と下顔面が長い。下顎長は無いので口唇(白唇+赤唇)が長い為に違いない。歯は下げたが歯槽の前突は残り、上口唇の前傾も残る。ただし歯を下げて歯槽が突なため、口唇は前屈形となっている。この場合、歯槽前の白唇を切除して、赤唇を上に歯科も歯槽前にして前突を無くす形が求められる。切除深は皮下脂肪全層として、外反は軽くする方が傾斜が綺麗になる。口角は当然挙上が必要だが、小顔なので目尻に向けて5㎜とし、口唇幅の増大を目論まない。

画像は左から術前、術直後、術後1週間の抜糸直後です。上段は正面像、下段は左側面像です。

DSC00693DSC00755DSC00847DSC00752DSC00757DSC00851

DSC00846術後1週間で抜糸するとご覧の様な創跡です。

トーヌスとは、覚醒時に微弱な電気信号が流れ続けて身体も顔面も張りを保っていることです。術後は創内の神経が腫脹や内出血の影響を受けて、電気信号の伝達が落ちます。トーヌスが落ちるといいます。もし外傷とかで神経繊維が切断すると、切れた点から新しく神経繊維が伸びていって治りますが、この場合伸びるスピードはほぼ一定で治る時間が予想できます。ところが、術後の腫脹等で圧迫に因り神経伝達が落ちる際には、腫脹の軽減時間と程度には個体差が大きい為にトーヌスの回復の日数が予想出来ません。長いと数週間掛かります。

本症例ではご覧の様に1週間でトーヌスが戻ってきて動的形態が整ってきました。術直後と比べ1週間後には、正面像での鼻翼基部および鼻柱基部の位置と口唇の開閉度が、デザイン通りになってきました。1週間で正面像での口元が可愛くなっています。口唇のもっこり感が消失しているのは腫脹が軽減してきた証拠で、そのためトーヌスが戻ってきたためです。筋の種類としては口唇鼻翼挙筋と口輪筋が関与しています。

エステティックラインは鼻尖と口唇と頤の前後的位置関係で3点を結ぶ線が直線を基準に前屈か後屈かで判断されます。私は最近口周りの手術を頻繁に施行していきましたら、エステティックラインは前後的位置関係だけでなく、上下の比率に影響されることが判りました。

本症例では少なくとも見た目には違いが見られます。いい症例ですが、側面像では撮影方向の違いで判り難いのが残念です。少なくとも、診察時に診た際には可愛くなっていました。上口唇を短縮すると、下口唇が挙がります。上口唇:下口唇〜頤の比率として相対的に下が長くなったので後退の傾斜が緩くなったのです。相対的角度が変わると見た目が良くなるのでしょう。そもそも、頤が前に出ている人は長いと余計にしゃくれて見えます。だから逆に、頤が後退している人でも長ければ後退が目立たなくなると考えられます。

その点で今後の経過が面白い症例です。出来れば動画も載せたいのですが、ブラウザーが対応していません。その分私がじっくり見ていきたいと思います。なお頤形成術と鼻唇角増大術と鼻尖の改善の余地があります。今後検討していきたいと思います。どれもブログ提示症例の中にあります。