2018 . 7 . 6

やはり口周りの手術は最終兵器です。静脈麻酔は楽ですが結果は?。

先週は毎日1例ずつ、一日2例口唇短縮術をした日もありました。当院では手術枠が午後2時15分から午後6時までの3時間45分と限定しています。口唇(人中周囲の白唇)短縮術と口角挙上術は2時間の枠を必要とします。静脈麻酔下に手術するとなれば、ケースバイケースですがさらにプラス最低30分は要します。ですから一例ずつしかできません。

確かに静脈麻酔は楽です。患者さんは局所麻酔の痛みを感じません。医療側のスタッフも気を使わなくて楽です。術者は出血が少なくなり、いちいち拭き取らなくてよくなり手技が減ります。ただし静脈麻酔でも原則的にもう一人管理する麻酔科の医師が立ち会います。だから麻酔の医師が気を使います。

では、静脈麻酔下での手術と、局所麻酔単独での手術と何が違うでしょう。まず静脈麻酔下では局所麻酔時の痛みがないので、力まないから血圧が上がりません。その上麻酔注入量を上手にコントロールすると、就寝時中くらい(個人差あり)に血圧を下げられます。切開手術中は出血するに決まってますが血圧に影響されます。術中の出血は止めなければなりませんが、結構手間暇かかります。静脈麻酔下では手間が減ります。そして、術中動かないので何よりやり易いです。口周りの手術中は話すと動くので、時に応じて「今はしゃべらないで下さい!」とお願いします。私は局所麻酔で会話をしながら行なうので、SNSでは「話しながらだったので緊張が解けて気持ちが和らいで手術を受けられました。」との評判を得ていますが、口周りの手術中は適時動かないでいてもらいます。静脈麻酔ではその点で楽です。

ただし、静脈麻酔で血圧が下がるだけでなく、緊張がほどけているから血管拡張も起こします。血管が拡張すると血液中の体液成分=血漿が細胞間に漏れ出します。浮腫むのです。手術部位はさらに創傷治癒機転として細胞が発する化学成分が影響して腫脹を起こしますから、相乗効果で腫脹が倍加します。その点は画像を見て比較し、評価します。

症例は、?歳女性。白唇部長17mm。口角は下がっている。数年前に上口唇小体切除術を受けたがミリ単位しか上がらなかった。また、赤唇部には赤唇縁だけでなく厚みを出すためと口角にもヒアルロン酸が注入してある。一度溶かしてからの手術を予定した。側面画像で見られる様に、ヒアルロン酸で赤唇は前傾しているが、白唇は内反も外反もなく、正面像で見られる様にだらっと長い。口唇幅は45mmでバランス的に横への増大は少しだけ欲しい。

手術プラン(デザイン):白唇部5mm短縮を口輪筋を折り畳んで外反(C-カール)を作る。口角は目尻と頬骨隆起の中間方向へ、つまり約30度斜め上に7mm×10㎜の三角形の皮膚切除へ挙げる。口唇幅は両側2mmずつ増大して49mmになるデザインとした。ヒアルロン酸を予め溶かしておく筈だったがしないでいた。手術当日溶かすこととした。

下に正面画像で術前と術直後。

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下に近接画像で術前、デザイン、術直後。

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下に術前の左側面像と右斜位像、術直後の左側面像と右斜位像。

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前置きに書いたように、静脈麻酔下の手術では術後の腫脹がいつもより強いですね。しかもヒアルロン酸は更に増長します。ヒアルロン酸は水分を引きます。コロイドといって増えるわかめみたいに水で膨張します。静脈麻酔下に漏れてきた体液を吸って体積が増えます。溶かしても水あめが液になるだけで、体積が減るのは数日後ですから、術後の反応で倍加しています。

ただし組織内に溜った液成分は48時間後からどんどん吸収されます。しかもヒアルロン酸も吸収され出します。若しかしたら、術後1週間では結構治っているかも知れません。実は、精神的安定性も関与します。楽な気持ちで居れば、血管が拡張して吸収が早くなります。静脈麻酔で痛みを覚えませんから、術後も安楽に過ごせます。次週が楽しみです。

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上の画像は術後1週間で抜糸した直後です。確かに上口唇のヒアルロン酸は水分に溶解されて吸収されて行きました。若しかして上赤唇は術前より薄くなっているかも知れません。

でも、ヒアルロン酸が入った赤唇を外反させると、どう見ても分厚くなっています。今後の経過待ちです。本症例では静脈麻酔で施行した為に術中の出血が少なく術者としてはやり易いのですが、上に書いた様に、静脈麻酔下での手術では(全身麻酔でも)、術中から腫脹が亢進します。そして術後経過のダウンタイムは術後の精神性に左右されます。本症例は10人のうち2〜3番目に遅い方でしょう。伴って表情筋の回復も遅い方です。多くの症例を手術して来てダウンタイムはいつかは治りますが、順番があります。早くとも遅くても治りますが、待つしかありません。次週はどの程度でしょうか?。お楽しみに!

術後2週間で来院されました。形態は整ってきましたが、傷痕が拡がり始めています。

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患者さんの社会的生活態度に影響されているのです。口を尖らす、または窄める機会が多いのだそうです。患者さんがそう言いました。私が丁寧に細かく強固に真皮縫合しても傷跡が拡がりました。さすがに特殊な症例でした。

幅が拡がった傷痕は肥厚性瘢痕になります。その説明は次回以降に詳しく。

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。