2020 . 1 . 6

フェイスリフトの新しい試み。Jowlにすげえ効かせた。

症例は40歳女性。今回は全顔提示なのですが、画像を視れば判る様に、いくつかの部位に対して手術して来ました。今回いよいよフェイスリフトの画像のブログ提示です。

ブログを視てくれていて、しかも他院のネットの説明もサーチされていて、知性が高い人なので理解がよく知識が豊富です。フェイスリフトに対する知識も仕入れていて、私と細かいコンサルトを繰り返して来ました。前々から要望されていた訳ですが、他の部位が落ち着いてからにしました。

フェイスリフトでもなんでも、剥離範囲が大事です。切開して、切除して、縫合しただけでは引き上げられません。眼瞼でもそうです。鼻は何かを入れる際に適切なポケット作成(つまり剥離範囲)が必要です。上口唇短縮術でも切除だけでなく深さが大事で、筋を露出して処理することが重要です。口角挙上術では赤唇粘膜とその下の口輪筋を一体に引き上げるための剥離範囲が重要です。この剥離とは皮膚と最低一層の皮下脂肪を、その深部の組織から剥がしてポケットを作ることですが、ポケットの中の出血のコントロールが難しいのです。具体的にはバイポーラー電気メスでの止血ですが、実は適切な層での剥離なら、出血源は数少なくて済むのです。

なおフェイスリフトとは、剥離した皮膚と一層の皮下脂肪を、深部組織とずらして引き上げ、元の傷の線に当ててみて余った皮膚を切除します。皮膚はたるみを伸ばすとそれ以上伸びませんから、その位置で切除します。そうして皮膚を伸ばして縫合すれば挙がりますが、剥離しないと深部組織は折り畳まれるだけです。しかも傷の線だけに負担が掛かりますから、週単位で傷跡の幅が拡がって後戻りします。適切な層を丁寧に剥離する手間と止血を怠るチェーン店系のSなどではその様な経過をたどる症例が多いようです。後日よく見ます。

皮膚と一層の皮下脂肪層を剥離した後に、深部の皮下脂肪層とSMASを折りたたんで縫い縮めます。こうすればSMASはそのまま癒着します。その上に皮膚皮下脂肪を引き上げて、SMASの上に戻して引き上げるとその位置で表の組織と深部の組織が癒着します。簡単に言えば剥がしてずらして癒着させます。癒着すれば後戻りが少ないのです。

今回診療中、やはり一番気になるのはJowlです。患者さんもこの言葉を知っていました。フェイスリフトでは剥離範囲がいろいろで、Sなんかでは切って縫うだけ、剥離ゼロですし、かといって前方まで剥離するには全身麻酔が必要ですし、SMAS(筋膜等)下の剥離は顔面神経総称の危険があるため、形成外科医しかするべきではありません。また最もよく効き、持続性も最大なのはRetaining Ligament, 靭帯付け替え縫合法ですが、時間(最低8時間)とリスクも最大ですから、費用も最大です。日本では、2人の美容形成外科医しかしません。

私は近年(当院での約10年)はMACS liftという概念でフェイスリフトを施行してきました。Minimal Access Cranial Suspension, 訳すと小さめの切開で骨に吊りあげるリフトです。切開は耳輪の前から耳珠の後ろに隠して、耳垂を回って耳後部の溝までです。通常剥離範囲は切除量+@の2.5〜3㎝としてきました。SMASを何針かPlication, 折り畳んで縫い上げる際に、一番上の糸を頬骨弓の骨膜に掛けるのがCranial Suspensionです。

今回は新しい試みとして、Jowlに向かってマリオネットラインの後ろまで皮下剥離範囲を延長しまいた。もちろんその深部のSMASも吊り上げましょう。患者さんと示し合わせてやってみることにしました。さてどうなるかお楽しみです。

術前と術直後の画像を見ながら説明していきます。

IMG_4925IMG_4934

上が正面像の前後。左の術前画像の口角の真横の顎のラインと術後の同部の幅を比べて診ましょう。明らかな差が見事に判りもっとます。もっと言えば凹んでいますが、そこのSMASに糸をかけたからです。よく効いています。ただし、その後ろが膨らんでいます。これは腫脹でもありますが、前下の組織を後ろに持って行ったからでもあります。もちろんこの面は、腫脹が引いてからでなければ評価できません。いずれにしてもよく挙がりました。JowlのSMASをあげるとその前の口角まで挙がったかも知れません。すでに私が口角挙上術を施行しましたから、オーバーコレクション,Over correctionにさえ見えます。

今回顔面フル画像を頂きましたから、せっかくですから、4方向を載せていきます。

IMG_4928IMG_4929IMG_4927IMG_4926

上1列目左図は右側面、上1列目右図は右斜位、2列目左図は左斜位、2列目右図は左側面。Jowlはあります。咬筋も膨らんでいます。ボトックスしておいても良かったかも?。

IMG_4933IMG_4932

デザインは実線が切開線。耳珠,Tragus部は後ろに回っています。耳後部は見えませんが、後頭部との折れ返りにあり、前の耳珠の高さまでです。

点線が剥離範囲です。耳前は幅2.5㎝で、下顎縁に沿ってマリオネットラインの直ぐ後ろまでマーキングしました。

下に手術直後の4方向の画像を術前と同じ並びで載せます。

IMG_4937IMG_4938

右顔面にはJowl の部分に凹みが見えます。咬筋部の膨らみは術前と変わりません。引き締めているからです。

IMG_4936IMG_4935

左顔面の引き上げの部分の凹みはさらに目立ちます。

ところで傷の線ですが、連続縫合糸がかかっているので血痂がらせん状について目立ちますが、抜糸すれば見えなくなっていきます。

下には術後1週間の画像群。

IMG_5027術後1週間で抜糸した直後の正面像です。

耳の前付近が腫脹しました。実は手術翌日も診ましたが 、その際は疼痛が強いと訴えていました。腫脹も増強していたはずです。あらゆる侵襲に対しての反応は48時間がピークですと説明しました。その通りに疼痛は3日目から軽快して行ったそうです。でも腫脹は一度起きれば徐々に吸収されますから、程度問題ですが、本症例では術後1週間では術直後よりかなり多い様です。そりゃそうです。剥離範囲は面積ですから、最大の侵襲性です。本症例は通常のMACS liftと比べ物になりません。顔が腫脹で大きくなっています。そして下を見ると・・。

IMG_5028IMG_5029IMG_5030IMG_5031

左右顔面とも、内出血が明瞭に診られます。血腫ではないかと心配して触診しましたが、波動,fluctationがないので否定的です。血腫は圧力(血圧)が強いので皮膚が伸ばされて効果が減弱しますから穿刺吸引または再開創を要します。この場合要しません。でも内出血は組織内つまり血管外に血液が滲みですことですから、その分容積が増えて腫脹に直結しますし、血液はもう大血管拡張因子を含みますから血漿も滲み出しますから、腫脹も助長します。また疼痛物質も含みますから痛みました。ということは糸を掛けたSMASも腫れています。

4方向の画像を診ると、手術直後の画像で診られた凹みと膨らみの凹凸が診られません。Jowl 部が腫れたからか、早期の後戻りなのかは経過を見ないと判断できません。後方の斜め前下の膨隆は増強していますが、明らかに腫脹です。持ち上げた分の膨らみがどれだけ残るかは時間経過を待たないと判りません。

なお傷の線の糸は抜きましたが創縁を引っ搔きますから出血もしますし、発赤が強くなります。ちなみに皮膚を剥離していますから知覚神経も一部ないので、抜糸時の疼痛は軽いとのことでした。知覚は約3ヶ月で回復します。

今回は術後1週間までの画像で経過を診ました。本症例では侵襲が大きいのでまだまだ形態的には評価が下せません。ただしやりたいことは判ったでしょう?。患者さんもよく判ったそうです。Jowl までの剥離はJowlを無くします。今度は持続性が問題となります。次回は術後1ヶ月に落ち着いているでしょうか?。どのような経過をとるでしょうか?。

術後1か月で診せてもらいました。

IMG_5440Jowlを挙げたところが凹んでいましたが、なだらかになりました。でも、その後ろがまだ膨らんでいます。しかしそれにしてもこの手術(剥離範囲)は見事に効きますね!。Jowl(ブルドッグを代表とした動物の顎)はありません。若年者の人間の顎です。

4方向も診ましょう。

IMG_5441IMG_5442

右顔面から見てJowlはありません。

IMG_5443IMG_5444

左顔面から見てもJowlはありませんが咬筋部(エラ=下顎角部)に膨らみが見え、元のJowl部をの段差が視られます。

確かにJowl見えません。咬筋部の膨隆は?、腫脹か?、咬筋か?。下顎縁のカーブは気になりますか?。骨格的にはどうでしょう?。今回の新たな試み、Jowlまで剥離して直接引っ掛けて挙げたら、後ろに溜まるかも知れないのは織り込み済みでした。腫脹も後ろに溜まるので経過を診て来ました。予定通り、週単位でエラの膨らみは減って来ました。「上手くいったという事ですね?!。」と訊いたら同意されました。でもこの膨らみが腫脹か筋かはまだ判明しません。だからボトックスの要もペンディングしました。

前に他院で10年前数回BTX注射を受けたそうです。しかも歯ぎしりに対して歯科でBTXしたらこけたことがあったそうです。逆に言えば強いから歯ぎしりするのですが、量の問題があったのでしょう。次回来月以降に腫脹が引いたら噛んでもらって検討しましょう。経過診て、BTXか?。

耳後ろのプリーツは3ヶ月以降に修正術を要するかも知れません。とはいっても画像では見えないし、本人にも見えないし、同伴者も気にならないとの事でした。