2021 . 9 . 20

PRP療法は適応次第ですが、瞼頬溝(黒グマ)には最適です。今回特殊な病態にも応用しました。

本症例は珍しい病気をお持ちです。これまで治療不可能とされてきた強皮症の中でも限局性の、いわゆる剣状強皮症を、PRP注入療法で形態的に改善できるかという難しい症例です。疾病そのものを治せなくても、美容的に形態を改善できれば患者さんに取って光陰でしょう?。インターネット上で渉猟するも、注入療法を行っている医療機関は数少なく、それもコラーゲン注入がせいぜいです。そこで、私たちにはPRP治療には10年以上の経験がありますから、応用してみました。

実は今回のPRP療法は、下眼瞼の目袋の下の瞼頬溝を埋めることが目的だったのですが、剣状強皮症にも入れてみようかと、ひらめいたのです。周囲の医師に聞き回っても、誰も経験がなかったし、議論の末、理論的には副作用とか合併症は起こし得ないと考えました。ただし唯一、強皮症はコラーゲンが炎症で退縮するわけですが、筋も骨もコラーゲンを含むので、万が一骨が退縮していたら問題を生じないかは懸念されました。そこでまず、同部を触診してみました。骨には病変が及んでいないと診られましたし、患者さんも調べて知っていて「実は、骨に病変が及んでいないと聞いていますが、年のため近々MRI検査を受けます。」と教えてくれました。やれやれ杞憂だったのかと安心しながら治療に及びました。それより何より、どれだけの効果と持続性があるかが興味を引きます。画像でフォローしていきましょう。

症例は42歳女性。7年前初診。ハードコンタクトレンズを20年間装用してきて早くから眼瞼下垂症状を感じていて来院されました。診察所見から後天性後葉性眼瞼下垂症を診断して、前葉性も伴っていることから、切開法で挙筋前転術に加え、皮膚は幅2㎜切除して重瞼固定も行いました。開瞼が良好となりパッチリとして、従前の状態に戻りお慶びでした。今回久しぶりに来院。「すごく開いていた。」「嬉しかった!。」でも、最近落ちてきたそうです。先日NILT法を施行して、上手く挙がりました。その後下眼瞼に視点が移りました。そこでPRP療法の紹介です。

この患者さんは幾つかの美容医療を受けてきました。下眼瞼のクマは半円形の下眼瞼が色着くことですが、その色には3種類あります。”黒グマ”、”茶グマ”、”青グマ”です。茶色は他の部位にも生じる色素沈着で、下眼瞼は皮膚が薄いため擦ると傷み、外傷後色素沈着を起こします。青紫色は皮下の毛細血管内に鬱滞した静脈血が、眼瞼は皮膚が薄い為に、透けて見えるのです。全身の静脈還流が低下した、所謂値の巡りが悪い際に目立ちますから、日内変動します。因みに全身の皮膚のうち上下眼瞼は最も薄い部位です。

本題の黒色ですが、目袋の下の影ですすから、眼瞼の半月形内では無くその下に診られます。目袋は解剖学的に説明すれば、眼窩骨縁が支持靭帯,Orbital Retaining Ligamentで半円形に皮膚と繫がっているので、その上の眼瞼の組織、皮膚、眼輪筋、眼窩脂肪が加齢で伸展して伸びて重力で下垂して来たものが伸し掛かって,overhang、下に影が出来るのです。また眼瞼は眼球の前にあるので、眼窩骨との位置関係、つまり目が出ているか奥まっているかでも目袋に個体差があります。ちなみに私は目の窓が大きい特徴に加えやや出目なので若年時から目袋がありましたし加齢で余計に出てきました。今から10年以上前にPRP療法の初期に実験で使いました。またアジア人では、頬骨幅があり頬骨体部(下眼瞼の半円の下の骨)が後退している人が多く、眼窩縁に影が出来易いのです。 ところで、クマは疲れて見えます。

上に書いた様に青グマは疲労の象徴で、茶グマも染みに見えて暗ったく見えます。黒くまは歌舞伎で隈取りと言う言葉がある様に悪人の象徴です。顔の中でもクマは目元なので目立ちます。目袋の下の黒グマは、瞼と頬の間の半円形の谷なので、瞼頬溝、Orbitmalar Grooveと言いますが、英語でTear troughとも称します。地震の巣を南海トラフや相模トラフという通り、谷です。治療法ですが、茶グマには色素沈着改善薬のハイドロキノンがありますが、なかなか消えません。青グマには血行促進や疲労回復しかありません。

黒グマは解剖学的な前後位置関係の改善が可能ですから、手術や増大術が功を奏します。ただし、眼窩脂肪除去だけというのはあまりお得ではありません。結膜側からの手術なので傷跡ができないのはメリットですが、腫脹や内出血は高率に起きます。そして、眼窩脂肪は目の周りを取り囲んでいるのですから、下だけ摘出してもまた出てきます。たくさんとれば上眼瞼まで窪みます。下眼瞼の弛みが原因ですから、まつ毛の根本で皮膚を切除すれば張りを作れますが、皮膚だけでは表側だけ筋皮弁法でしっかり吊り上げれば巧く抑え込めますが、筋皮弁法はダウンタイムが酷い手術です。Hamra法はもっとです。

近年私は、目袋を治すよりも、その下の折れ返りである瞼頬溝をPRPで埋めることを第一選択として奨めています。そもそもアジア人は、頬の前がフラットな人が多く平板な顔なので、頬前を増大することで優しさを醸し出せるので、昔父は頬前プロテーシスをよく入れていました。私も仲良しのV.クリニックのDr F.を真似て、下眼瞼縁から瞼頬溝へのプロテーシス挿入術をしたことがあります。ただし同部位は皮膚が薄くて浮いて見えるので抜いたこともあります。

今から10年前に当院ではPRP療法を美容医療に本邦で初めて導入しました。その際池田先生と私で実験的に打ち合いました。その結果上にも書いたように瞼頬溝がなくなりました。約2年は保てて、しかもその後5年間は飲酒後などに再増殖します。私はPRP療法は皮膚の改善が主体でなく、プロテーシスと同目的の増大術,augmentation だと考えます。瞼頬溝は皮膚が薄いので、ヒアルロン酸などの硬い物質の注入では合わないと思います。笑うなどの表情で浮いて見えます。触れると硬く判ります。プロテーシスで懲りています。対してPRP療法は組織を増やす作用ですから、周囲と変わらない質感で増量できると思います。治療法の細かい方法や手技は10年の経験が物語ります。あえて説明しませんが、瞼頬溝にはPRP療法が第一選択で、逆にPRP療法の他の部位への注入は瞼頬溝への半分以下の効果しか見込めないと思います。

画像を診れば判ります。各方向の注入前と直後です。

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この画像では剣状強皮症の部位も写っていますが、下眼瞼に注目して下さい。見事に埋まりました

4方向でも診て下さい。

IMG_2910IMG_2925右側面で、目袋の下の影が消失しました。

IMG_2911IMG_2926右斜位像ではフラッシュの方向から写った影が消えました。

IMG_2909IMG_2924左斜位ではもっと良く判ります。

IMG_2908IMG_2923左側面でも注入前に写った黒グマが消えました。

剣状強皮症に対してPRPを注入しました。拡大像です。

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立体像は撮りませんでした。正面像でも凹んでいるのが見えました。注入直後は刺入に因る赤い跡が見えますが、ブツブツの凹凸が平坦になりました。そうです。注入でツルッとしました。

術後経過が楽しみですが、下に1か月の画像群。

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下眼瞼には涙袋と目袋があります。涙福利を温存して目袋の下の溝を埋めたのです。黒グマは目福利の下の瞼頬溝です。見えません。額の画像では真っ平らではありませんが、ブツブツが無いので目立たなく保たれています。

IMG_3638IMG_3635両側斜位像でも下眼瞼は平らです。

IMG_3637IMG_3634両側面像でも影の黒グマは見えません。

術後1ヶ月半に、別の部位の手術後についでに、画像を頂きました。

IMG_3550下眼瞼は溝が見えません。剣状強皮症の部位もざらざらと凹んでいたのが、目立たなくなっています。

 

当院では、厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。 医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

料金は1CCが10万円+消費税、2CCでは15万円+消費税ですから、2cc以上がお得です。通常頬こけには1CC以上、瞼頬溝には1CC以下、鼻唇溝には深さによりますが1CC以下で足ります。なお、PRP後のYAG LASERは本来1万円のところ、五千円にしています。