2023 . 3 . 21

鼻唇角(鼻柱基部)と鼻唇溝(鼻翼基部)はシリコンプロテーシスが有用で安全です。ヒアルロン酸等の注入では持続性がないので・・。

その時代の医療水準は学術的に成立します。医科大学や市中医療機関で研究された先端の医療行為法でも、本法では厚労省の管轄する日本医学会に加入している学会に於いて議論され、医学的に有用性が認められてコンセンサスを得た診療行為だけが保険収載されます。対して代替医療という言葉があります。医学的に学術的に有用性が認められていない医療行為です。サプリや自費治療は受ける側は有用性があると思い込んでいて良いのですが、大規模に治療結果を調べても統計的に有用性が認められなく、医学的に一般的に応用できないから保険収載(*脚注)できない訳です。

じゃあ、美容医療は保険収載されていないから、代替医療なのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。保険収載されていないのは、美容医療は不要不急の医療だから、保険収載されないと厚生省が決めたからです。医療資源は逼迫していますから。逆に、美容セーケーは医学でないと捉えている人も居ます。確かにチェーン店や非形成外科医はビジネスに特化している輩が多く、広告宣伝を多用しているなら資本主義社会に於けるコマーシャリズムに使っているので医療というよりは商売と見做されても仕方ないと思います。ちなみに私が今書いているブログは、広告ですが誘因を目的としていません。美容医学の知識を紹介して、患者さんにより多くの診療の効果を満喫してもらいたいからです。

とは言え、美容医療に於いても、根治的治療,Parmanentと一時的治療,Instantがあります。根本的治療は手術が主体で、形態を改良して、長期的に効果を持続させることです。加齢と経年変化が伴うため場合によっては修正が必要になりますが、半永久的とされます。後者一時的治療はT医師がプチセーケーと名付けました。埋没法や注入療法が主体です。持続性は無視して、ダウンタイム=術後の炎症反応に因る腫脹や発赤、内出血等の人前に曝したくない時期が短い(あくまでも無いのでは無い)のを売っています。切らない腫れない痛くないとのキャッチフレーズも打っていますが、実際はゼロではありません。しかも事前の説明は不確かで、術後は個人差で片付けられます。

私は別に、プチ整形を否定する訳ではありません。日常的に利用しています。ちなみに私は術前にある程度の説明をします。ただし私も個人差と言う言葉で説明する事もあります。それに注入法では、効果は量に(つまり料金)も依存します。料金体系は自由診療ですからクリニックで変わります。また、美容医療に於いては個人的な形態的差異に応じた治療が必要です。美容医療の経験が物語ります。ですから手術に精通した美容形成外科医が同様の効果を得る為に行なうべきです。私は鼻や頤、また特に鼻唇角と鼻唇溝への注入中には、手術中の理想的な形態変化を頭の中に描きながら入れています。私にとって注入療法は、言ってみれば代替治療の一種なんですね。

本題です。鼻柱基部と鼻翼基部はどの部位を指しますでしょう?。夫々は点です。

鼻柱基部は両側人中稜が鼻柱に当たる2点です。2点の間が鼻柱と上白唇の交わる溝です。鼻唇角はこの溝を側面から見た角度で、上白唇の前傾と鼻尖の上下位置と鼻柱の下がり具合が影響しますが、90度以上は欲しいのです。鈍角化は鼻柱基部の増量で可能で、鼻孔内からポケットを造って挿入すれば創跡も見えません。柔らかい自家組織では容積が足りないので、通常は軟らかいシリコンプロテーシスを挿入します。ヒアルロン酸で同様の形態を造るには量を要します。

鼻翼基部は両側の鼻翼の最下点です。したがってここを増量しても意味がありません。法令線は人相用語で医学的には鼻唇溝,Nasolabial fold と称され溝ですが、上方は鼻翼の側方の三角形の窪み二繫がります。ここの皮下には表情筋が沢山停止していて斜め上に引き上げます。顔は曲面ですから、後に引き込むので溝が出来てきて、皮膚が折れ返ってきます。なお鼻唇溝の上外には頬脂肪体,Malar fat があり加齢で下垂してきますが、鼻唇溝部でつっかえて伸し掛かります。こちらを減らしても溝は消えません。また下垂にはリフトをしたくても、引き上げる相手がありません。誰に聴いてもMid Face lift は難しいと答えます。ですから鼻唇溝を浅くするには増量が適切です。私は鼻翼の内側の切開から後方の梨状口縁の骨の上に達してから、矢状方向へ方向転換して鼻翼の横にポケットを造り、鼻唇溝の上方の三角形の窪みを埋める鼻唇溝プロテーシスを頻用しています。深い層に入れるのでむしろ皮膚に負担が無いので安全です。もちろんヒアルロン酸でも意識して同様の埋入を頻用していますが、上に書いた様に表情筋の停止部なので、吸収が早い部位です。

この様に、鼻唇角(鼻柱基部間)と鼻唇溝(鼻翼横)のどちらもシリコンプロテーシスの良い適応です。

症例はは22歳女性。初診時のカルテから転記します。上顎歯槽骨が傾斜強い。E,Aesthetic-ライン,Lineは直線上ですが、鼻唇溝の上方の三角形の部分が深い。側方から見て鼻翼が隠れる深さが3㎜は埋めたい。鼻唇角は75度。実は2年前に、鼻中隔延長術を受けて鼻尖は下方移動したが、逆に鼻柱基部が喰い込んだ。なお触れると鼻柱にはスペースがない。基部にだけ入れられる。

1ヶ月後確認のために再診。鼻唇溝上方の三角にプロテーシス。鼻翼幅35㎜:鼻尖幅18㎜(約2対1)で鼻翼縮小術は不可。厚さ3〜5㎜のプロテーシスが適応。鼻中隔延長術の移植物(耳介軟骨)は鼻柱の後半分には無い。中隔軟骨から鼻柱表面まで5㎜で+3㎜は下げたい=8㎜の小円錐形。上下口唇と頤はH-Aが入っている。静脈麻酔を希望。

手術室に入るなり、「私、これまでの麻酔中に結構話たりするのでよろしくお願いします。」と念を押されました。私やナースは「エ〜!、でも別にいいですが、騒がないで下さい。動かないで下さいね!。」と釘を刺します。さらに「大人しくしていようと念じておいて下さい。」と加えます。麻酔中でも深層心理は起きているので、念じていれば大丈夫なはずなのです。

画像は各方向で比較しましょう。

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正面像の術前と術直後。術直後にも鼻唇溝上方三角にマーキングしています。術後も患者さんに触れてもらって、プロテーシスの位置を確認してもらう為です。もちろん鼻唇溝の窪みは埋まっています。鼻唇角は喰い込んでいません。

IMG_2596術後1週間で抜糸できました。位置は適正です。鼻が腫脹で大きかったのは治りつつあります。

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近接画像の術前とデザイン。鼻唇角は喰い込んでいる為に影になっています。鼻唇角の下の両側人中稜にマーキングして中心を知っておきます。

切開部のデザインは鼻孔内ですから撮影しませんでした。

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プロテーシスを作成します。実は鼻唇溝プロテーシスは頤(下顎尖)プロテーシスの中でも横長の小さい物を二つに割って使います。上左図は清潔シート上に鼻翼の画を描いてプロテーシスのカットラインを描いて、上右図の様に造ります。鼻唇角プロテーシスは台付きL型鼻プロテーシスの台だけを切り取って使います。今や台付きプロテーシスの鼻尖部は入れません。台を鼻唇角へ流用し、残るI型は鼻尖に軟骨移植時に分離型として使います。

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上左図は三つのプロテーシスを顔の上に乗せました。鼻唇溝プロテーシスは最大厚4.5㎜としました。上右図は三つのプロテーシスを挿入して創縫合後。鼻唇溝の上方の窪みは埋まっています。なお鼻翼が拡がっているのは腫脹です。必ず戻ります。聴くところによると、”鼻翼基部プロテーシスは鼻翼が拡がる”。という説があるそうです。私の症例ではありません。何故でしょう?。今後メカニズムを思考します。どうも口内からの挿入が原因と考えられます。鼻翼の下にも入るからでしょうか?。もう少し考えさせて下さい。

IMG_2598術後1週間で診ると深い鼻唇溝が浅くなりました。鼻唇角はこの角度で診ると鼻翼より上ですが、角度はどうでしょう。下の4方向を観ましょう。

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下面像での術前と術直後。鼻唇溝の窪みは見事に埋まっています。

IMG_2599術後1週間の下面像では鼻唇溝が見えません。なお、傷跡はどちらも鼻孔内なので、見えません。これまで、鼻唇角プロテーシスの切開は治りが良くないことがあったので、抜糸を遅らせていましたが、現在は真皮?(粘膜?)縫合を2針加えてからは癒合良好です。これからは術後1週間で抜糸します。

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鼻唇角は4方向でよく判ります。上列の術前は90度以下、分度器は持ち合わせていないのですが、約75度でしょう。

鼻唇溝上方三角の窪みに鼻翼が”埋まって”いて、最後部が隠れています。

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鼻唇角は90度以上、約105度でしょうか?。術直後は腫脹で鼻尖が持ち上がりオーバーコレクションに見えます。

鼻唇溝上方三角の内側の鼻翼の折れ返り線が見えます。埋まっているからです。

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術後1週間の4方向では鼻唇書くが鈍角で口が出ているのが目立たなくなっています。鼻唇溝も浅くなり、鼻翼が埋まっていませんから、口元がスッキリしました。

術後2週間でも画像をいただきました。

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順調に経過していて、腫脹が軽減してきて、膨らみが減った感じも、「むしろ表情時に見えすぎないで丁度よくなってきた。」と、笑って見せてくださいました。(笑っている画像は忘れました。)

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可愛い系ですが、術前と比べてスッキリ系になりました。鼻唇角は90度です。

また、私が「その後自家組織で入れたんですが、どうですかね?。」と問うと、患者さんは「自家組織は安全なのかも知れませんが、減るでしょう。」私「確かに!。」「それに三つの手術分は取れないし・・。」と言い訳がましく断言しました。とにかくお悦びです。なお傷跡を覗いても、もう見えません。

術後1ヶ月で見せてくださいました。

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鼻翼は腫脹で拡がっていたのが戻りました。術前に測り上にも記載されていますが、35㎜で元通りです。よく術前に患者さんに訊かれます。「鼻唇溝プロテーシス後は、鼻翼が大きくなるって言われていますよね。」私「間違いです。」と断言します。「口の中から入れると広がる様ですが、私は世界でただ一人鼻の中から入れますから、広がりません。」と優位性を売ります。ただし付け加えます。「逆に鼻翼の内側から入れるので、短期的には腫れて鼻翼は広がります。必ず戻ります。」その通りになってますよね。

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鼻唇角は90度+@で、予定通りです。直角より鋭角か鈍角かで全く印象が違います。口が出て見えなくなります。

帰り際患者さんが、笑って見せてくれました。「笑うと浮いて見えますよね。」私「入っていなくてもそこは膨らみます。筋の停止部だからです。」患者さん「本当はもう2㎜程度厚さが欲しかった気もしますけれど、もしそうしていたら、モロに浮いてしまいますよね?。」と納得されます。私「触れても見えない程度が適切でしょう?!。」とドヤ顔で説明して、「また次回、できれば来月も見たいです。」何故なら、この様な小さい手術では、微妙な腫脹が影響する手術だからです。さらに患者さん「ガミースマイルができなくなって良かったです。」とも言ってくれました。一瞬考えて私「上唇鼻翼挙筋の上にプロテーシスが乗っているから上口唇の引き上げ力が弱くなってそうなるのでしょう。それは良かった!。」と一緒に喜びました。実はこの副次的作用を教えてくださったのは本症例の患者さんが初めてで、逆に術後初期の異物感を訴えられる方がほとんどです。今後の経過を見たいと思います。

術後1ヶ月半でも診せてくださいました。

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とにかく位置は適切です。触れれば判ります。でも浮いては見えません。術前の影の深さと法令線の長さと比べてみましょう。明らかに効果が観えます。

鼻唇角プロテーシスも中央に固定されました。近接画像で鼻柱基部が見えるから鼻翼との水平位置も綺麗に揃っています。

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特に4方向での法令”線”の消失によって表情も明るくなります。

下には術後3ヶ月で完成を視ましょう。

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ご覧の様に、鼻唇溝プロテーシスは左右対称的です。鼻唇角プロテーシスは中央にあります。本来は触れてみないと判りません。笑ってもらうと鼻唇溝が膨らみます。誰でも笑うと膨らむのです。ですから、むしろ自然です。

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患者さんは鼻唇溝の増量が、ちょっとだけ足りない様な気持ちを明かしました。さらに誰かに「上にあるかも?。」と言われたそうです。触れれば正しい位置にあります。私「もし厚さと長さを増量したければ可能ですが、もう一度同じ手術をすることになります。」「また、口の中から入れれば大きなものを入れやすいけれど必ず落ちます。」と、説明はしました。その間画像を見直して、「充分に埋まっていますよね!?。」と念を押しておき、「いつでも相談にいらっしゃって下さい。」と、にこやかに帰られました。性格がいい女子なので、また診たい気持ちもあります。

本当に見せてくれて、画像もいただけました。

コメントをいただきました。「今回の結果として、鼻孔が上向いたと見えます。画像でも・・。鼻翼が広がる噂は否定されましたけれど・・。」私「そうです。鼻翼が広がるっていうのは間違いです。でも、鼻孔は・・。」と画像を見比べてみるとそうとも見えます。考えて、”画像は同じ向きでないかも?・・、フランクフルトラインに沿って取らないと解らないかも?・・”フランクフルトラインとは、下眼瞼の眼窩縁と外耳道の下縁を結ぶ線で、これを含む面が水平面です。でも、”そんな説明してもしょうがない”。「鼻孔縁下制術は出来ます。ブログに載っていますよ。」と教えると患者さん「視てみます。」と乗り気です。

どうでしょう?。4方向から見ると鼻孔縁は見えません。それに「鼻柱基部と鼻翼基部が同じ高さですよね?!。」ドヤ顔で言いました。今回黒子1箇所をLASERで除去したので、もう一度来院される予定です。その際検討しましょう。

脚注=保険収載とは:日本は世界でも数少ない国民皆保険を採用しています。会社員の社会保険は義務で会社が給与から引いて払います。国民健康保険は保険料を払わないと傷病時に診てもらえないので皆さんが保険料を供出します。他にも種類がありますが、基本的にこれ等で年次に得た金銭は公的機関が基金として貯めておきます。

さて皆さんが病院やクリニックなどの医療機関に罹ると、代金は通常3割払います。これだ!。何それ?。元値が不明じゃないか?。それは保険点数です。保険診療では、診察代も治療費もその行為の内容別に細かく点数が決められています。点数は料金の1割と同じことで、高齢者以外の一般人は3割、つまり点数かける3を帰りに支払います。残りの7割は保険基金に月単位で請求します。合わせて10割、点数の10倍が医療機関の売上です。

ところで保険点数ですが、毎年見直さられます。また診療行為のカバーする項目が増えます。実は保険医療機関には保険点数表という分厚い本を置いていて、行為ごとにそれに従って点数を記載しておきます。だから点数表も毎年買い替えます。簡単に健康保険の仕組みを説明しましたが、診療行為のうちで、保険が適用になる内容と認められることを保険収載といいます。

なお保険収載された治療行為でも、”保険点数表に”美容を唯一の目的とした行為は含めない”と書いてあります。疾病ではないからです。美容外科がカバーする医療行為の多くは、保険収載された行為と同じでも保険摘要できません。なお美容が”唯一”の目的でなく、原因のある機能障害を伴えば形成外科科目の診療行為として保険適応になる場合があります。またチェーン店系の非形成外科医の主宰する美容外科クリニックは、保険医療機関に登録しませんから、保険収載されている医療行為でも自費診療しか受けられません。

保険点数表を読みながら例示します。傷跡修正(瘢痕形成術)では”拘縮などの機能障害の改善を目的とし、美容上の改善には算定できない”と書いてあります。眼瞼下垂症でも”視野障害の程度により算定する”とありますが、顔面正立で上を見られなければ視野障害ですから、(目が小さい)日本人の多くは算定できます。ただし切開手術に限ります。当院は形成外科を修了した医師が多数在籍していますから、保険適応の形成外科診療と自費診療の美容外科診療を使い分けられます。蛇足となりましたが、ブログの他の板にも説明しています。

当院では、4年前に厚生労働省より改定されて施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

6月から費用の説明も加えなければなりません。鼻唇角プロテーシス挿入術は15万円+消費税です。鼻唇溝プロテーシス挿入術は両側で28万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として手術部位だけ載せる場合20%オフとなります。