2023 . 2 . 6

下眼瞼形成術は多種類。術前の形態が様々で、治したい点も多種あります。加齢変形にも美容的にも使います。

シワ、たるみ取りには剥離が大事!といつも強弁してきました。ですからあ〜、糸だけでのリフトは、長持ちしません。コマーシャリズムのチェーン店系が売りつける(電車の窓に広告があります)剥離しないで切って縫うだけの”なんちゃってリフト”はやるだけ損です。それでは何故かを説明するために加齢変形の仕組みを説明しましょう。

まず体内の加齢は細胞の老化です。DNAに刻まれた細胞分裂回数に限りがあり、足りなくなってくるのです。内臓の組織も血管もです。特に免疫系の細胞が少なくなると、感染症や癌などの疾病を起こし易くなります。

さて次に形態的な加齢変形ですが、深部から話すと、骨は肉眼では見えませんが、X線写真では見えます。カルシウムやタンパクの摂食に左右されますが、どうしても細くなり密度が減り弱くなります。なお顔の骨は、下顎歯槽骨だけが減量減高します。他は減りません。ですから、顔の輪郭は軟部組織の減量に伴って骨張ってゴツゴツしてきます。筋は衰えるのですが、鍛え方と摂食で遅らせられます。加齢と共に痩せると減量します。いよいよ体表の加齢変形に話が進みます。

皮膚の表側は、表皮細胞と角質からなります。細胞は表皮の最深部で分裂して表に押し上げます。途中で死んだ細胞は角質となり、垢となって剥がれていきます。サイクルは約30日です。厚さは0、2〜0、4㎜しか無いのですが、細胞が積み重なっているので、密です。こうして外界からの異物を通し難いバリヤーとなっています。ただし血管は無く浸出液で栄養されています。ですから加齢で栄養が落ちて分裂が足りなくなると、さらに薄くなり、弱くなります。

その下は真皮層です。真皮層はヒアルロン酸というゼリーの中に、コラーゲン等の線維が詰っています。コラーゲンはいわゆる蛋白質で、線維芽細胞が造ります。こちらは3か月でリサイクルします。毛細血管が豊富で、厚さは数㎜あり、線維が弾性を保つので、張りを与えています。ただし加齢で弾力は落ちてしまいます

真皮の奥に皮下脂肪層があり、表情筋の動きを緩やかに伝えます。クッションです。しわを造らない為にも働いています。皮下脂肪層の厚さは個体差や、部位、体調、男女、年齢で変化します。眼瞼は皮下脂肪層がほとんど無く、笑う筋の収縮が真皮に直接伝わる為に表情皺が真っ先に出来ます。

皮下脂肪の下には筋がありますが、人の表情筋は複雑な配列ですから、表情が豊かなのです。ただし、表情筋の収縮が真皮に表情皺を造ります。真皮に張りがあり、表皮が強い若年時は動かした時だけしわが出来ます。加齢と共に表皮が弱くなり、真皮の弾力が無くなると、表情時だけでなく、しわが刻み込まれてしまいます。紙に折れ線を付けた様になるのです。また表情筋は、覚醒時は顔に精気を持たせる為に常に微弱に収縮しています。タレントさん等の表情を見せる職業以外の一般人は、ただでさえ表情の造り方は意識的ではありません。無意識に収縮しています。ですから表情皺は常に刻まれていくのです。

なお顔面は、様々な臓器や器官が体表に存在しますから、上記の皮膚の構造だけでなく、他の動的形態や静的構造も影響します。多種ありますから割愛しますが、眼瞼だけ触れます。眼瞼は眼球に蓋をするためにあります。眼球は骨に嵌っていますがクッションとして眼窩脂肪があります。皮下脂肪ではありません。眼瞼内の眼輪筋下に、眼窩脂肪を抑える隔膜がありますが、これも加齢で弱くなり眼窩脂肪が前にはみ出てきて、下眼瞼を膨らませます。これが目袋です。逆に上眼瞼では眼窩脂肪が重力で落ちていき、膨らみが減って窪む人が居ます。窪み目の本態です。眼瞼には開閉を司る複雑な構造もありますが、その方面は眼瞼下垂の際にいつも説明していますから割愛します。

簡単に構造を説明しましたが、下眼瞼形成術に於いて、何を治すべきかのヒントも載せました。続けて治療法も載せます。下眼瞼の加齢変形ではいくつかの要素が原因となります。

先ず眼瞼は皮膚が薄い事と皮下脂肪が無い事が特徴です。ですから上下眼瞼とも、早い時期に表情皺が刻まれる事が多いのです。表情皺が主体なら、ボトックスでの対処が第一選択ですが、刻まれたら皮膚を剥がして伸ばして貼り直す手術が必要です。やはり剥離です。表情じわによって折り畳まれているうちに必ず皮膚が伸展しますから、引き延ばしも必要です。剥がして引っ張って戻すとその面が再癒着して伸びて治ります。筋は折り畳んで縫合して引き締めます。

上に書いた様に眼窩脂肪が突出して来た目袋を、”弛み、タルミ”と呼ぶ患者さんが多く来院されます。目袋の下には折れ返りの半円形の溝が出来、これを”クマ”と呼ぶ患者さんも多く来院されます。溝は洋語でPalpebro Malar Groove, 瞼頬溝と称します。溝を埋めればクマが見えなくなりますから、注入で治せます。ヒアルロン酸ではボコるので、私はPRP療法に限ると考えます。何例かブログに載せています。手術法としては、目袋の眼窩脂肪を取り除いても目の後からまた出てきます。ですから本当のHamra法が適します。目袋の眼窩脂肪を溝の下の骨の上に動かして埋めて止めます。目袋が平らになり溝が埋まる無駄が無い、一石二鳥の手術法ですが、剥離範囲が広いのでダウンタイムを要します。眼輪筋下=眼窩隔膜の前で剥離しますから、筋を骨に吊り上げて下眼瞼全体の張りも造れます。一石三鳥です。眼窩脂肪を動かす事をRepositioningとか、眼窩脂肪を温存することをPreservationと言います。今やSNS上に載っています。

他にもいくつかの手術法がありますが、加齢に対しては二つを使い分けています。今回はどちらでしょう。

症例は62歳女性。本年夏の来院当初から下眼瞼の小皺を気にされていました。数年前にも他院でシワ取り術を受けたが、表情が豊かと自己認識されていて、表情ジワが再発したと仰る。私も拝見して、確かに常々笑顔を魅せると感じます。ボトックスで止められるのですが、半年もたないのを知っています。手術を希望されました。

ところで、どう見ても年齢の割に目袋がなく、その下の瞼頬溝(溝クマ)が目立たない。実は同年代の私は目袋が厚く、瞼頬溝もはっきり見えます。つい私、診察中私の顔を見せて「〇〇さん。これないですよね!。いいなあ〜?!。」と言ってしまい悲しかった。今書きながらも鏡を見て確かめました。ちなみに瞼頬溝はPRP療法が最適です。1.5〜3年と長持ちする上に、同部位は皮膚が薄いので、他の注入物ではボコるから不適です。そういえば私も、10年以上前にPRP治療が導入された際に、練習を兼ねて、実験的に池田先生と打ち合いました。3年ところか、7年間は、飲酒の翌朝は浮腫んで下向くと見えました。でももうとっくに無くなっています

もとい、瞼頬溝は手術的には本当のHamra法(眼窩脂肪移動)が適応になりますが、本症例にはお奨めしません。下眼瞼形成術の中でも、真皮下で剥離しての眼輪筋の縫縮で緊張緩和しながら、平坦化だけが求められます。さらに筋を折り畳んでの涙袋作成術も求めません。元々ないまま過ごしてきた人に造ったら変わってしまうからです。患者さんも希望されません。

画像は術前から。

IMG_5075瞼頬溝はないわけではありませんが浅いです。

IMG_5087IMG_5086表情ジワは刻まれていませんが、縮緬ジワはあります。

IMG_5089デザインはシワのある範囲を剥離するべく点線で囲みます。切開線は瞼縁のまつ毛の並びの1㎜下です。前回と同じ線です。

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術中写真は二葉。上左図は、皮膚を剥離した後。赤いのは眼輪筋です。上右図は筋を縫縮してから皮膚を引き上げた後。瞼縁を越えて上に皮膚が載っています。この分の余りを切除します。測ったら5㎜幅でした。

IMG_5093その切除した皮膚です。目尻の下で分けて切除しています。

IMG_5095術直後の両側眼瞼図。皮膚は平坦です。

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近接画像で診ると平坦でシワは消失しています。

IMG_5079術後1週間で抜糸しました。

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術後3週間で診せてもらえました。

目尻にしわがなくなってお喜びです。

傷跡も目立たなくなっています。

下には術後3ヶ月での完成像。

あくまでも眼球を隠す画像です。上二図は眼瞼部。目尻の皺がなくなってお喜びです。

上左図は閉瞼時、上右図は上方視。下眼瞼は開閉で約3㎜上下します。皮膚の余裕も変化します。開閉どちらにしても、シワは減って、下眼瞼外反も呈しません。

近接像で下眼瞼縁の下垂も診られません。傷跡も目尻の外側だけまだ赤い線ですが、これも白くなり。瞼縁の傷跡線は谷線でも色がなく、これが自然状態です。

今後の次の手術を検討されていました。今回の経過が落ち着いたらもう一度診察しましょう。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の提示です。下眼瞼形成術は術式によります。皮膚切除だと20万円+税で、Hamra法では40万円+税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。