2023 . 8 . 25

こめかみリフトが流行っていますが、今回は2回目で、上方を追加して眼瞼に効かせます。中顔面リフトの上半分狙い。

私がよく行う皮下広範囲剥離リフトは、時間と侵襲度の為に上中下に分けています。その前に一般人や不勉強な医師が間違っている、上中下の顔面の分け方を説明します。医学的な上顔面は生え際〜眉下、中顔面は眉下〜鼻下、下顔面は鼻下〜頤先端です。等量がバランスが良いとされています。レオナルドダビンチが提唱しました。でもあえて言えば、白人の基準ですから黄色人種とは値が違います。目の上下や口の上下でわかるのではありません。それでは比較になりせん。

本当は上顔面リフトは前額部リフトですが、適応者は少ないです。これまでに私のブログに2例載っています。額は顔面の中で最も血行が良いので腫れが多く、ダウンタイムが長い部位です。下顔面リフトは主に下顎縁の上のたるみを引き上げる、いつものJowl liftです。耳前部からでは遠いので、マリオネットラインの外側まで皮下剥離して持続効果を得てきました。切って縫うだけのなんちゃってリフトと一緒にしないで下さい。でも剥離範囲が広ければ侵襲が強く、ダウンタイムも長く、時には血腫も生じ得ます。

今回のお題である中顔面リフトは、こめかみから上下眼瞼部を中心に挙げられます。ところが、眼窩内、つまり眼瞼部は、広範囲剥離といっても、層が違う為触れられません。また、中顔面は後ろから前に向かって湾曲があります。こめかみから目尻上下の眼窩より外側までは横を向いていて、前方は目が前を向いているから、上下の眼瞼部も前を向いていますから、Malar (鼻の横と目の下と顔の横で囲まれた三角形のエリア=上顎と頬骨の前)も前向きです。ですから、こめかみから切ると途中から曲面となり剥離操作が難しいのです。通常私はゴルゴ線の外側まで、つまり頬骨隆起部の斜め下までの剥離をします。

こめかみリフトで挙げたい部位を選ぶ際に、中顔面全部は難しいのです。何故かと言えば、目尻を跨いで上下を同時に剥離しようとすると、間違って眼瞼に道具(剪刀=手術用の鋏)が突っ込んでしまいかねないからです。だから本症例でもそうですが、適切な部位を選びます。

毎回書いてきましたが、患者さんのお顔は、生来様々な形態を呈しています。それぞれの人が何を治したいかも違います。チェーン店系の美容整形屋は、診察や相談に時間を取れません。売上の半分近い、多額の広告費を取り戻さなければならないからです。ビジネス的チェーン店系クリニックでは、医師の診察を短縮するために、非医療者(要するに単なる受付嬢)をカウンセラーと称して、来院直後に相談してから、医師が診察をします。その後の医師の診察はごく短く、治療プランも押し付けて、料金を決めてすぐに手術となるのです。診察といっても医学的素養は身に付けていませんから、診察の振りで、言ってみれば診察もどきです。さらに沢山の手術をこなす為に、手術時間の短縮も強制されます。聴くところによると、長引くとクビになるそうです。それでは丁寧に手術できるはずがありません。当然に、中長期的に悲惨な結果を起こしかねません。

当院には、何人かの医師が所属しています。美容医療は幅広く、簡単なものから時間を要する手術まで、当院では手広く施術し、医師を使い分けています。ですからダウンタイムが短い簡単な手術(持続性は無い)は、若い医師に多くこなしてもらって稼いでもらい、一方では、私の様に手術のレパートリーが豊富な医師は、手術で見事に嬉しくなる効果を得て持続性も高い手術を、丁寧に時間を掛けて出来るのです。言ってみれば、クリニック側にとってタイパ、コスパの良い施術は私以外が請け負います。難易度が高く時間が掛かる、実はクリニックにとってコスパの低い手術は、私がほとんど請け負っています。住み分けですね。私は好きでしています。手術の経過を観て、患者さんがお喜びになるのを見るのが、私の至上の楽しみです。美容医療は楽しいのです。この態度なら、チェーン店系とは違う好結果と持続性も得られます。

今回の症例は、こめかみリフトの2回目となりました。前回の結果はこの患者さんにとっては大きな効果がありました。Malarの下に垂れ下がっていたたこ焼きを引き揚げました。ですが、その場合こめかみの下方、目尻の水平部よりも下を切る必要がありました。結果的に目尻の上は引き上げられません。患者さんの希望があり、目尻より上を引き上げるこめかみリフト手術を追加することになりました。詳しいことはカルテを見て転記します。

症例は58歳女性。1年前から来院され、当初は上白唇短縮の件から相談しましたが、もう一つの問題として、こめかみリフトでの中顔面の改善を先行しました。何故なら、面長なのに頬骨隆起部が横に突で、幅135㎜とあり、頬前がフラットです。ゴルゴ線は浅いのですが、中顔面の下方のバットレス(顔の輪郭線の支え)に、Malar fatがたこ焼き状に垂れているのを、こめかみリフトで下方まで剥離して治しました。確かに現在画像で観られません。

頬骨隆起が横張っている分、こめかみが陥没していました。私が独自に使ってきたこめかみプロテーシスも考慮しましたが、PRPでシミュレーションも兼ねて埋めてみました。その後口角、上口唇と進みました。一回目のこめかみリフトから3ヶ月で2度目の手術の話が持ち上がりましたが、1年間診るようにお願いして、他の部位の手術を進めて来ました。

本年に入って、こめかみリフトは上方を追加して、目尻を挙げたいと具体的に訴えてきました。こめかみの陥没にプロテーシスを入れるかも検討し、剥離は必要な長さだけでならお安くします。と告げました。具体的に上眼瞼の外側も挙げたい希望でしたが、頬前Malarもさらに挙げたいと漏らしていました。私「どっちかにしましょう。」とお願いした記憶があります。

1年経ましたから、こめかみリフトの2回目に進みます。私「上方を追加しましょうか?。」と言うと、こめかみの陥没は髪で隠せて見えないから、プロテーシスは不要と申告されました。PRPでシミュレーションしてみて解ったのでしょう。前回のこめかみリフトで、たこ焼き状の下垂は無くなったことを確認すると、今回は下眼瞼を挙げたいと仰る。私「それは下眼瞼からでないと無理です。」と言うと、逆に「頬骨隆起部は温存したいし、昔は目尻がもっと上っていました。」と仰います。「並らばやはり前回のこめかみリフトより、上方の切開を追加して目尻を挙げましょうか?。」と堂々巡りの診察でしたが、手術部位が決まりました。

手術日にはもう一度確認しています。目尻の皺を水平にし、上眼瞼外側のたるみも挙げるつもりです。切開は眉尻部付近からで、35度方向に引き上げます。

画像は各方向の術前、術直後から提示します。

正面像では、上眼瞼の外側の重瞼が広がりが診られ、目尻の溝が下向きから水平に引き上がって診られます。患者さんは翌日鏡で見て嬉しい形だと言ってくださいます。

上下の両側斜位像では目尻の向きと上眼瞼の重瞼線の広がりがよく解ります。

側面像では近接画像も併記して観ましょう。

右側面像の術前とデザイン。切開線は眉尻の外から上で、方向は35度です。引き上げ方向の矢印は目尻を向いています。

上に書いた様に、剥離範囲は眼窩外縁を越えません。3㎝程度と広範囲ではありません。術直後は目尻の溝が水平です。

左側面像では術中像も撮りました。

上左図は術前。上右図はデザイン。剥離範囲は点線までです。

まず切開します。剥離操作は写真を撮れませんでした。上右図ではもう引き始めています。ルーラー(滅菌した定規)を後ろの創縁に当て、皮弁を引いてミリ数を測ります。10㎜でした。

その10㎜を皮弁上に当ててマーキングします。上右図は創中央で皮弁に割を入れました。

切開後その点を仮縫いします。その後に後方の創縁に合わせてトリミング線を描きます。

デザインに従って皮膚切除します。その後真皮縫合を片側12針!、創は3㎝長なので、2.5㎜間隔と細かい!。この時点で隙間がないことが重要です。皮膚縫合は連続でピッタリ合わせます。手術法を詳しく述べました。術後1週間で診ます。

目尻の向き、上眼瞼の外側の重瞼の拡がり。ご満足いただけました。患者さんは「仰った通り2/3程度戻ってちょうど良いですね。」と言ってくださいました。

斜位像でも側面像でも目的を達しています。私「若い時はこんな感じでした?。」と訊くと患者さん「若い時は目が吊り上がっていて私の特徴だったのよ。」と教えてくださいました。

傷跡は抜糸した直後は、私が引っ掻くので赤くなります。

上半分の赤い線が抜糸後です。赤さが薄い方です。本症例の患者さんは治癒力が高いのか何やっても治りが早いのです。画像の下半分の生え際に前回1年前の傷跡がありますが、白い線は見えますか?。やはり治癒力が高いのですね。

術後1ヶ月で見せて下さいました。

面白いことに気づいたそうです。こめかみが”こけて”なく見えるのです。私考えました。

眼窩外側を引き上げたら、その部位の土手状の膨らみが無くなって相対的にこめかみがこけてなくなったのですね。

傷跡はまだ赤いのですが、必ず消えます。

下段には、いよいよ術後3ヶ月の完成像です。

目尻野一は気に入ったそうです。

確かに4方向で診ても、重心が挙がっています。

ところがさらに1回目の手術効果を追加したいと申告されました。私「出来ます。意味があります。」と請負ました。こめかみリフトは傷が短く、剥離範囲も癒着が緩いので、複数回可能です。その節も画像提示を戴けると思われます。お楽しみに!

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の説明も加えなければなりません。こめかみリフトは40万円+消費税です。ただし今回は2回目の手術で切開も短いので25万円としました。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、こめかみリフト手術後は、顔面全体を載せますが目隠しします。出演料として20%オフとなります。