この夏は、毎日の様に面白い手術をしていました。それは、眼瞼下垂手術&重瞼術切開法に蒙古襞の拘縮解除する目頭切開手術一辺4mm60度のZ-形成法の併施です。診るたびに明るい。明るいのは目元のキラキラ感です。
症例は28歳、女性。先天性には奥二重で3年前埋没法を受けたが右側は約1年で浅くなった。LF11.5mmと軽度の先天性眼瞼下垂症でソフトコンタクトレンズを4年使用したためか、後天性眼瞼下垂症も合併している。眼裂横径24mm、内眼角間35mm、角膜中心間55mmと蒙古襞の被さりが強く、拘縮も強い。三白眼も呈しているし、開瞼時に前頭筋も収縮して眉を挙げている。
切開法で重瞼を定着させたいから受診。ラインは変えなくてよい。挙筋はLT法で強化できる。蒙古襞の拘縮のために、吊り目状態で内側の白目が隠れているし、黒目の上に掛っているのを解除しないと不自然な形態になるし、眼瞼下垂手術と重瞼術の効果を阻害するため、拘縮解除を目的としてZ-形成法による目頭切開を予定した。
術前、術直後、術後1週間、術後6週間の画像を並べます。眼瞼の形態は明らかに改善していて、特に内側方面が丸く挙がったので吊り目が解消して、アーモンドアイになりました。そうです。そうしました。これがきれいな目の窓でしょ?。私はよくできたと思います。
続いて近接画像です。
ついで近接像。上段に右眼瞼、中段に左眼瞼。左から術前、術直後、術後1週間、術後3週間。 下段に術後6週間の左右眼瞼。
本症例は最近のZ-形成術による目頭切開手術の中でも、術後の肥厚性瘢痕が比較的目立った症例でした。6週間がポイントだと題名にあるのはその経過を見せるためです。
目頭付近の創跡は、肥厚性瘢痕になり得ます。過去の手術法では必発でした。創跡の線は縦方向に縮まります。3~4週間でタイプⅢと言う硬い幼弱なコラーゲンが析出し、傷の内部を固めます。その間に引っ張られると、中のコラーゲンが切れます。多くの場合身体は反応してタイプⅢコラーゲンをさらに析出させて余計なコラーゲンを創の上に盛ってしまいます。これが別名ケロイドもどき、本名は肥厚性瘢痕といいます。傷跡の線が赤く盛り上がる状態です。
創跡に縦方向の力が掛かると出来るのですから、目頭切開を三日月型切開して縦に弧状の傷跡を残すと必発です。昔から云われているのに今でもやっちゃう美容整形屋がいます。そこで私達医学的知識と経験が豊富な形成美容外科医は縦の傷跡を避けるデザインを考案しました。まずW-形成法です。でも一部に縦方向の傷跡が残ります。50%くらいの症例で肥厚性瘢痕を生じました。
今から20年ほど前にZ-形成術が応用されました。当院ではさらにデザインを工夫して、現在まで駆使しています。縦方向の傷跡は無いので、肥厚性瘢痕は出来にくい筈ですが、ご覧のとおり斜めの創跡はあるので軽い肥厚性瘢痕は起き得ます。軽い程度なら約50%に起きます。
肥厚性瘢痕は幼弱なタイプⅢコラーゲンが成熟したタイプⅠコラーゲンに置き換わっていくと平らになって発赤も消え、白い線になります。
肥厚性瘢痕の経過は創傷治癒機転の標準的スケジュールに沿います。創傷治癒に於いて傷が閉じる当初の数日は出血器から炎症期といって、まず皮膚の表面が閉じていきます。だから抜糸は1週間以内に出来るのです。但しその時点では、まだ深層は癒合しきっていません。上に述べた様にコラーゲンは徐々に作られるからです。約3~4週間でタイプⅢコラーゲンが埋めます。ここまでが肉芽形成期です。そして6週間頃にはタイプⅠコラーゲンに置き換わり始めます。約3か月でほとんどがタイプⅠコラーゲンに置き換わり瘢痕は成熟します。
ですから、肥厚性瘢痕は約3週間から目立ちます。上の画像を見てもそうですよね。そして6週間までは増加することもあります。治り始めることもあります。通常私は、3週間で増加する場合にはステロイドの局所注射をします。本症例では行いました。その後6週間に診て増加していなければ、軽快するだけです。3週間目に注射をしないで6週間まで増強すると治るのに日数を要することがありますが、結構速く治る症例もあります。だから6週間までは良く診ていくことが大事です。本症例では6週間で軽快が進みました。後は発赤が消失するのを待ちましょう。
本症例では肥厚性瘢痕は軽快しています。患者さんが早く治したいのでステロイド注射を受けたからです。
今回は画像が重要です。手術の効果と自然な形態が期待できます。人には個性があり、理想への道は千差万別です。その点で今回もデザインに自信があります。もう一度術前と術後6週間の画像を比較して下さい。
印象が違います。術後6週間の画像では形態的に開瞼機能的に良くできています。カラコンしても黒目の露出率がかなり挙がっています。可愛いでしょ?!。