2017 . 12 . 13

口唇(白唇部)短縮術と口角挙上術は細かい工夫をして素敵!

口周りの手術が定式化してきました。このところ銀座院と大阪院を合わせると毎週何例も手術しています。段々症例毎に何かしら工夫を加るようになりました。微妙なデザイン上の差異や切除深の違いにも気をつけています。奥が深いんです。その面白い点についても説明していきながら、術後1週間までの症例紹介を進めます。

症例は26歳女性。白唇部が長いのを訴える。計測値を下の画像を見ながら読んで下さい。白唇部:鼻柱~Cupid’s bowの長さは18mmと15mm(基準値)を超える。白唇部が前突傾向であり、歯槽部とANSが前突し、白唇部が内反している。口角は画像の如く下がっている。顔面縦の比率は上顔面65mm:中顔面56mm:下画面56mmと下顔面が長くはないが、上下の比率は交連から上が5:8の黄金分割比を超える。顔面部品比は内眼角間30mm:鼻翼幅33mm:口唇幅42mmと口唇幅が黄金分割比より小さい。

計測に因りますが、頭の中で考えながら選択枝を提示します。白唇部切除は現在は、原則的に5mm切除を越えない様にしています。内反している程度に依り用手的にシミュレーションしながら外反させるかどうかは検討します。やはり外反を求めて皮下脂肪層を全層切除しない方が望ましいと考えられました。口角は、横に拡げて口唇横幅を大きくしたいが、用手的シミュレーションの結果として、頬骨弓方向つまり45度の角度で挙げるデザインを選びました。その場合1/√2になるので、6mm切除だと口角が上にも横にも6/√2≒4㎜移動します。

画像を提示します。まず下に術前とデザイン後と術後1週間の正面像

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続いて術前の正面像と斜位像と側面像

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立体的に術前の、白唇から赤唇の長さと内反っぽさを見ておいて、下は手術直後の正面像、左斜位像、左側面像です。

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上口唇は術直後の腫脹が強いのでモッタリ感は増長しています。下に手術翌日と1週間の正面像。OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

手術翌日はモッコリ腫れていたのが、術後1週間では引き始めています。内出血はまだあります。

下2列は術前と術後1週間の両側斜位と両側側面像。

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OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAこうして立体的に見ると、白唇から赤唇への傾斜が綺麗に外反したのが判ります。赤唇の突出も愛らしいでしょう?。口角が挙がると品が良いですね。

口唇の手術は定番化していますが、今回の症例では何点かの工夫が加えられています。術後1週間で見るとよく判ります。患者さんも納得されお悦びです。留意点は他にもありますが、今回は1,口唇の切除幅と2,外反度、3,口角の方向、4,人中と弓の強調について箇条書きで説明します。

1、まず切除幅ですが、5mmを越える切除をした症例のうちの多くは術後創瘢痕の幅が拡がりました。さらに鼻翼横の余りが多くて、Dog earが目立ちやすくなります。Dog earは月単位で皮膚が収縮して目立たなくなりますが、まれに残ります。数か月経ても目立つ場合は処置出来ますが、出来ない方がいいに決まっています。ちなみに創跡の幅が出なければ、後戻りは起きません。

2、口唇の白唇から赤唇へのの外反は適度に欲しいです。白唇部の後ろは歯槽骨で、アジア人では前突している場合が多く白唇部がボテッとします。長さの問題以上に治したい面となります。歯槽が発達していて前突している人は、当然白唇部の歯槽骨の縦が長い人が多く、結局白唇部短縮術の適応となり、その際に外反を求めます。白唇部全層(皮膚、皮下脂肪、口輪筋)を切除したら、余り外反しませんから、皮膚と皮下脂肪層の中間層まで切除して、その下層の皮下脂肪半層と口輪筋を一緒に半分縫い寄せてから、真皮縫合でピッタリ縫い合わせると、外反が得られます。切除断面がくさび型にV字になっていてそれを合わせれば外反するという訳です。本症例はそうしました。術直後は腫脹でよく判りませんが、術後1週間で既に、外反が見られます。キュンッと突な赤唇はキスしたくなる唇ですね。

最近の工夫として、人中からCupidの弓を強調すると立体感が得られます。人中稜(尾根)は通常若干八の字ですから、鼻柱部の幅よりデザインの下線の部の方が幅があります。そのまま縫い合わせると人中が幅広になり、平板に近づいてしまします。そこで人中稜を真皮縫合する際に1㎜程度内側に寄せて縫います。すると人中稜と人中窩の山と窪みが明瞭化して、立体感が出ます。しかも、人中窩が深くなると赤唇部の弓型もはっきりします。本症例では見ての通りに、Cupid’s bowが急峻にできました。弓がはっきりした方が色っぽいです。人中や弓の立体感に付いては元々個体差があり、誰にでも適応することではありません。本症例は、だるい人中と弓を指摘し、意図的に強調しました。とはいっても程度問題です。僅かに1㎜ずつの引き寄せでこんなに可愛らしさがUPします。患者さんが第一声で「ワー、可愛い!」と、歓声をあげました。

口角の挙げる方向は、予めシミュレーションして決めた方向に向けて切除する三角形の頂点をデザインします。白唇部の長い人は口唇の横幅が少ない人が多い様で、45度方向にして横に拡げる事を望む人が多い様です。そして三角形の底辺である赤唇縁の切開線の長さは、挙げる長さに合わせていましたが、最近では口角からの距離を症例ごとに変えています。口角部の赤唇縁は後方にあるのですがその長さに個体差があります。白唇部が長い人は口角が下がっているだけでなく後退している人が多く最近では5〜6×5〜8㎜の範囲で使い分けています。本症例は口角が後退している方なので(術前の座位での正面像で見えない部位。デザイン画は臥位ですから線が見えます。)6×7㎜です。腫脹時は前に出てきますが、段々後ろに隠れてきます。口唇の幅は顔面とのバランスも考慮されます。本症例では顔面全体とのバランスがバッチリ合っています。

症例は上下の比率からして典型的に上口唇短縮術の適応症例でした。典型的症例は良好な結果を得られます。だから手術適応の吟味が重要で、しかも細かい調節の留意点を心得ないと思わぬ結果を呈し兼ねません。丁寧に時間をかけて診察して検討し、患者さんのイメージに合わせて、患者さんの意図も汲み取らなければ、内面と外面の乖離を来しかねません。ブログでは全体像を提示することは稀ですが、私は患者さんの特性に合わせて調節しています。これまでの症例でもイメージ作りを心掛けてきました。だから形態変化が症例ごとに微妙に違うでしょ?!

あとは私がいかに丁寧に3層縫合したかが創跡の質に関わりますから、中期的経過を見ましょう。細かいデザインと手術の工夫に付いても今後の経過で更に見えてきますから、お楽しみに!