口周りの手術は最終兵器だと書いてきましたが、そうならない症例もあります。他院での治療に不備や不足を感じて、再手術や追加手術を受けようと悩む患者さんが、少なからずいらっしゃいます。本症例が何を治したいのか画像を見ながら説明していき、術前と術直後から経過を診ていきましょう。
症例は31歳、女性。本年5月に初診。鼻の下が長いと訴え、当方を受診。既に他院で、鼻翼を内側で切除して3mm縮小されている。不足例です。口角は下がっていない。半年後に再来し、診察して手術プランを立てました。やはり白唇は5mm切除、口角は45度7×7mm。鼻翼は更に小さくしたいし、創跡が連続出来るから同時手術は可能です。内眼角間に合わせて37mmを32mmにするため、内側を幅2mm切除して鼻孔底を糸を通し引き寄せる事とした。先ずは症例紹介から。
画像を診ましょう。正面像は術前、デザイン像、術直後、術後1か月の順に並べます。
左斜位像と左側面像と下面像の術前と術直後と術後1週間を並べます。
術後1か月を経ました。術前と術後2週間と術後1か月を比べましょう。
口唇の中でも白唇部は単純に短くなりました。術前に平坦だった人中の尾根とくぼみは手術で作製されました。赤唇は赤唇縁が挙がりカーブがはっきりし、赤唇縁の弓型は強調され弓の幅が小さくなりました。白唇の外反は適度です。口紅で強調していますし口角の創跡もカムフラージュされています。口角はキュンッ!と挙がっています。鼻翼は丸く小さくなりました。
下の4方向で見ましょう。術前の右斜位と右側面像と比べてみましょう。続けて術後1週間と術後1か月の4方向から立体的に見てみます。
立体像の比較では、単純に短くなるだけですっきりします。ただし、立体視すると、腫脹による膨らみが見られます。上口唇(鼻の下は白唇部)短縮術と口角挙上術が最近のトレンドですが、今回は口の上の鼻翼縮小術も併施したので更に腫脹が遷延します。術後1週間では白唇部はまだ腫れていました。術後1か月で白唇部の腫脹は軽減中です。僅かに外反傾向になってきました。赤唇は口紅で美しく魅せています。鼻基部の創跡は今回は隠していません。
最近多くの症例を手術してきて、患者さんの特徴に応じて、術式を微妙に変えています。デザインのこだわりを強めています。実は、以前よりさらに上手くなったのかも知れません。本症例でもいくつかのポイントを強調しました。
1、鼻翼は術前の下面像で見られる様に、張り出しは無くなっているが幅が広いので、内側で引き寄せる適応です。その際鼻翼のどの辺りが幅があるかを良く見極めなければなりません。本症例は四角い鼻翼で、この場合鼻翼の下方を小さくしたい形です。正面像で比べれば変化が判ります。鼻翼が丸くなりました。
2、本症例では上口唇短縮の目的はありますが、寂しい。正面像や側面像で見ると、E-lineがマイナスなのはいいですが、白唇部の後ろの歯槽も下がり過ぎて傾斜が無く、歯も傾斜が無いからその結果赤唇も下がっていて寂しいのです。今回は鼻翼縮小と併施するので、手術直後は膨隆の程度が増強するのでやり過ぎ感が見られます。しかし腫脹が軽減する術後1か月の画像ではいい形が見られ、赤唇の露出にはお悦びです。側面像でも豊富な口唇(=白唇+赤唇)が見られます。術後1か月では、すっきりしてきました。さらに今後の経過が待たれます。
3、寂しい口唇では、人中も平板です。赤唇の弓もなだらかです。また、赤唇縁の両外側も薄く寂しいです。当然に口角挙上術が求められますが、口角は静的に挙がると動的な動きも無理な力が入らなくなって綺麗になるのです。術後1か月の正面像ではキュッと締った笑顔の様に口紅を引いて来院されました。
3’、人中と弓ですが手術中の調整になります。数ヶ月来この記事を載せてきました。患者さんの中には「人中や弓は欲しいかも?!」と依頼する人もいます。本症例では軽度強調が良いと考え、縫合時に両側1㎜寄せてみて、見てもらいました。「この程度がいいね!」と言ったら動きが弱いのにかすかに微笑んでくれました。術後の正面像では人中が強調されました。弓も急峻になりました。下面像で見ると前後方向にも弓が見られます。
4、鼻の位置の変化は判りますよね。鼻翼は口唇短縮術の結果引き下げられています。術後は挙上筋群のトーヌスが働かないからです。術前の画像と比較すると、術後1か月の正面像では鼻柱も鼻翼も元の高さに戻ってきました。鼻翼挙筋の回復には2週間以上かかるようです。必ず戻るのですが、日時にはばらつきが有ります。
本症例は最近の定番である上口唇短縮術と口角挙上術の併施に、鼻翼縮小術の内側切除法を同時施行しましたので、腫脹が増強しました。術後1か月でもまだ一部に影響が見られます。形態は見えてきました。形態は可愛いのですが、まだ創跡が見えます。患者さんは長い目で見て下さると言ってくれました。次回3か月で私は「完成!」と言いたいところです。