症例は44歳、身体は男性。でも精神的には女性でいい女。ブログ見て来院。GID患者ですが、一目見て面長で下顔面が長い。まずは計測しました。
高身長で顔面も面長。上下比は60mm:56mm:67mmで上口唇34mm:下口唇46mmで白唇長25㎜!。部品の横比は内眼角間30mm:鼻翼幅32mm:口唇幅50mmと5:8の黄金比。赤唇は外反しているし、口唇結節はH−Aでチュンとくちばし状に丸い。これまでに鼻中核延長術と鼻尖への軟骨移植を受けている。鼻尖は下がっているが、鼻柱は下がっていない。鼻唇角が喰い込んでいる。この様な症例は面白いのですが、たくさん切除すると傷跡がねェ~とか言いながら押し問答しました。
検討の結果:白唇部は6㎜切除に落ち着きました。外反は不要ですから口輪筋上で皮膚皮下脂肪を全層切除するプラン。口角は既に下がり気味だが、口唇幅はあるので、目尻方向に7×8㎜の三角形の皮膚を切除してほぼ上方に挙げます。鼻唇角が喰い込んでいるので、鼻唇角プロテーシスも創から挿入出来る。
まずは画像を、下に術前とデザイン画。さらに下段に術前の右斜位と左側面。
術前の画像より上記の評価が成されました。デザインはその通りです。
下の2段は術直後です。
術直後は局所麻酔の分量で腫脹しています。でも既に形態は見えます。下に説明します。
下の2段は手術翌日です。
術直後より腫脹は強くなります。いつも強弁してきたように、術後48時間がなんでもピークです。腫脹はもちろん、内出血も後から表面化してきます。上の24時間では軽いのですが、48時間までは増加したようです。下の術後1週間では口角に見られます。
下の2段は手術後1週間の抜糸直後です。
創を見ると、直後は出血が持続していて滲んでいるのが、翌日には止まって拭き取っても滲みません。糸は透明ですが、糸に絡みついている血液が見えます。術後1週間で抜糸したら、糸を取った際に引き抜いたので、糸の跡が全部赤い線になります。これは数日内に消えますが、傷痕の赤い線は数か月かかります。
術後2週間で素敵な口元を撮らせてくれました。
本症例では鼻翼より鼻柱基部が上にあるままですが、これは白唇部切除の影響で鼻翼が下がっているからです。鼻翼は術後2~4週間で元の位置に戻ります。これまでの症例で証明されています。
いつもの様に、腫脹がすごい手術ですが、術後1週間はかなり軽快しています。幸いというか辛いかも知れませんが、生体は男性ですから血行が良いと考えられ、腫脹の吸収も早いでしょう。したがってその影響による運動制限の解消には、標準的に2~4週間かかる中でも早い方でしょう。
本症例は特殊な状況ですが、美しさを求める心をむしろ強く持っています。女性のジェンダーは、美しさを求めます。特に、M,male to F,femaleでは、生体は男性でも、精神は女性ですから、乖離しています。本症例の患者さんは幼少時から悩んでいたそうで、女の子のコスチュームで暮らしていたそうです。そういう精神状態は変えられません。現在では社会的適合性を得られる様に認知されています。もちろん女性として生活しています。
このような場合私の出番であるのは当然です。精神的に女性でありたいのに生体の形態が男性では女性としてのアイデンティリティーが確立できません。本症例患者さんは高身長に比例して面長で特に下顔面が長い。女性のバリエーションの範囲で下顎(=頤)が長かったりしゃくれている人は存在しますが、上口唇のそれも白唇長は本症例は男性の中でも長い、たぶん私が計った人の中で最長です。だから逆に、この点を改善すればかなりの変化が認められるはずです。実際にパーツの画像提示でも改善度が高いと見られます。
ですから、今回も細かい評価を避けて美容上のコンセプトを述べました。
次回をお楽しみに!