とにかく、口周りの手術は良好な結果が得られます。特に可愛い女子は適応を吟味して適切な手術を施せば確実に可愛さアップします。本症例はその点で最も解り易い例です。
症例は32歳、女性。歯科で矯正したら口唇全体の傾斜が下がって白唇長16mmとそんなに長くないのに、長く見えるようになった。その結果赤唇は外反は保たれているが、白唇は以前よりは内反した。頤には脂肪注入がされていてご覧の様にE-ラインは一直線上。顔面縦比は上顔面60mm:中顔面55mm:下顔面62mm/上口唇24mm:下口唇40mmと下は脂肪注入で長くなった。顔面部品横比は内眼角間28mm:鼻翼幅34mm:口唇幅49mmで5:8の黄金比を理想とするなら口唇幅を5mm増大したい。
上記の所見から、口唇は4mm短縮したい。白唇部は側面像で見られる様に内反(逆Cカール)ではないが、歯列矯正前よりは外反が減ったとのこと。では外反を求めるかと言えばそれもやり過ぎ感を催すだろう。こうして、本症例には軽度外反を目論んで口輪筋上まで皮下脂肪全層を切除するプランとした。口角は45度方向に5mm引き上げて上に3mm、横に3mmの計算とした。
先ずは正面像から、下に術前の正面画像とデザイン後の画像。
術直後と術後1週間
下に術後2週間と4週間
下に4方向画像。
上の四葉が術前。下は術直後。
いつもながら術直後はすごい写真です。そして下には今回術後1週間の画像。珍しく白唇部にも内出血しました。
内出血するとダウンタイム的には長引きます。この手術の典型的な術後経過を説明します。口角の内出血は高率に起きます。でも1週間で抜糸したら、メイクで隠せます。もちろんマスクで当初から隠せます。白唇部は腫脹が強く、そのために運動低下を来たします。でも腫脹の軽減も早い部位で、術後2週間で結構すっきりしてきます。本症例はまだ術後1週間では、術直後よりは減りましたが腫脹しています。運動の回復には2~4週間かかります。年齢が影響するようです。一番気になるのが、トーヌスの回復です。自然に口が閉じる。鼻の位置がもとに復するのに、2~4週間かかります。運動障害が回復するだけでなく神経の回復もその頃だからです。でも必ず鼻の位置はもとに復するのはこれまでの症例が証明しています。
そして下は術後2週間の画像。フルメイクされてます。ルージュ(赤唇が綺麗でハイライトになっています。)が赤唇を強調しています。実はまだ白唇に内出血がうっすら残っているそうです。創跡はもう隠せてます。
それにしても可愛い。社会生活上こんなに可愛い女子(とてもその年齢には見えません。)が目の前に来たら、見つめていたくなり魅せられます。それもこれも素材のレベルが高いからです。契約上、上1/3顔面は提示出来ませんが上の上です。中1/3顔面はご覧の様に鼻が矢印鼻で鼻筋が通ります。
続けて術後4週間の4方向
メイクといっても、内出血をカムフラージュするコンシーラーは濃過ぎるのに対して、口紅がメインのすっきりメイク(黒子の濃さが違います。)の時は肌が綺麗な桜色です。これが若い肌です。創跡の赤い線は見えてしまいますが、幅がありません。私が丁寧に密に”真皮縫合”をしましたから。可愛い女子には特に丹念に縫合してしまいます。時々記載してきましたが、この手術に於いては真皮縫合が鍵です。口輪筋の処理にもです。
口唇短縮術は顔面の前面を切開する数少ない美容形成外科手術です。疾病でない状態に対して手術するのですから、創跡が目立たなくするべきです。どんな創跡でも消えることはありませんが、縫合した創跡は幅が拡がらなくて、周囲との形態の変形が無ければ見えなくなります。その為にはなんと言っても真皮縫合の質に依存します。縫合した創は数日で表面は閉じます。表皮層の細胞が増殖するからです。ところが、それより深層の真皮層は強固に癒合していません。真皮層のコラーゲンが硬く着いて、牽引力に耐えられる様になるのに約3か月かかります。その間に引っ張られると折角癒合した真皮層のコラーゲンが切れて、折角閉じた表皮層が伸びてしまいます。伸びた表皮は薄くなりツルッとして薄くなり、周囲の皮膚と違う風合い,textureになり、または僅かに溝になったり、逆にそこにコラーゲンが過剰増殖して肥厚性瘢痕になってしまいます。
この様な経過を防ぐ為には真皮の層を縫合しておいて支えるしかありません。創の中の合わさる面を跨いで糸で繋いでおけば、コラーゲンがしっかり着くまでの間を寄せ続けます。3か月でコラーゲンが強固になるまでの間を糸で支え続けるのです。これを真皮縫合と称します。形成外科医のみが修得できる特殊技術です。何故なら、表皮層は厚さ約0.2mで真皮層は厚さ約2㎜しか無いので、この中に糸を通す為には、細い糸(太さ0、5㎜以下)と精密な器械(先の小さな持針器と鑷子:ピンセット)が必要ですから使い慣れないとならないし、手の感触で真皮を掬わなくてはならないので習得には5年以上かかります。形成外科医以外がすると”中縫い”と称して適切な層に掛かっていないで、真皮層を支えていないとか、表皮から露出する等の下手を打つ事が多いのです。
口輪筋の処理ですが、原則的に切除はしません。顔面神経頬枝も傷める可能性があるからです。ただし折り畳みます。切除幅の半分は口輪筋縫合時に寄せます。縫合時に折り畳むとC−カールが出来ます。口輪筋全層を寄せると外反をしません。予めどちらかを選択してもらっています。口輪筋層縫合で半分寄せているので、真皮縫合と合わせて緊張に耐えます。基本的に真皮縫合が済んだ時点で隙間が無ければ、術後数ヶ月経ても創跡の幅が拡がりません。そうすれば溝にも肥厚も起きません。口唇短縮術(世界的一のアンチエージング美容外科医であるOscer Ramirezの提唱するBull’s horn design)の切開線は鼻翼基部から、鼻孔の底の土手,nostril sillにかけての麓の折れ返り線に出来ますから、谷線に縫合する技術も要します。だから逆に谷線に幅の無い創跡が有るなら、見えなくなるのです。
本症例の患者さんは、下1/3顔面はエステティックラインがゼロで、上口唇もC−カール(外反)を持っているが、上中下顔面の比からしてやはり下顔面が長く、上下口唇のバランスは頤を長くしかも前にしているから、比率はいいが、上白唇部の16㎜が間延びして見える。術前と術後を比べると上白唇の面積が減った分赤唇と頤が強調され、微笑みどころかささやいているかの様な口元です。もちろん口角が挙がっているので、笑みがこぼれているため、誰に対しても好感を与えます。
やればやる程奥が深いのです。そして深化した私は必ず、顔面縦横の比率を計測します。どれだけ切除するべきか?、いやその前に切除を優先するべきか?。また口角をどの方向にどれだけ挙げるべきか?。毎回デザインに腐心します。今回の本症例の患者さんは白唇部長16㎜で、15㎜を標準とすれば切除の適応性は低いのですが、上に書いた様に細かく計測するとむしろ良好な結果が得られると判断しました。
あくまでも術後3ヶ月での完成像まで載せていきます。実際に本当に創跡の幅が拡がらない事をお見競ることが出来る自信があります。そして見事な形態をも画像上紹介します。こうして皆さんに喜んで貰いたいからです。