眼瞼が良く開くのに、皮膚が弛んで来てボテッと腫れぼったくなって来る症例は少なくありません。瞼を開く眼瞼挙筋による狭義の眼瞼下垂症なら、先天性筋力低下でも後天性腱膜性眼瞼下垂でも、挙筋の縫合術が必要です。一重瞼という先天性皮膚性の広義の眼瞼下垂“症”なら、(一重瞼は遺伝性疾患です)重瞼術が最優先です。しかし二重瞼で筋力が瞼縁と皮膚に伝わっている人でも、皮膚だけが伸びて来て邪魔になり目が開け難くなる人は皮膚だけ取れば良いので、眼瞼で除去してもいいのですが、眉下で切除する事も出来ます。
眉下切開は比較的経過が楽で、創跡もブローを書いて隠せるので、受け易い手術です。実は本症例は、他の手術との組み合わせで受けました。一緒には画像提示しません。ただしダウンタイムが一回でやり過ごせるのでお得です。患者さんもお悦びでした。ボテッとして邪魔だから、不随意に眉を挙げていたぼやけた表情がキリッとしまりました。画像を診て行きましょう。
症例は28歳、女性。眉を挙げる距離に相当する幅6mmの切除を決めました。シミュレーションを説明します。先ず目を閉じてもらいます。その時は眉が挙がっていません。私がその位置で眉を抑えます。眉の下に定規を当てておきます。目を開いてもらい「重いでしょう。」と訊き、「離しますから目をパッと開いてみて下さい。」と言い離すと、その瞬間に眉が挙がります。定規は動かさないで、動いた距離を測ります。極端に眉を挙げる人もいますから、もう一度「楽に視界を得られる程度に力を入れましょう。」と言ってやり直すと、患者さんは大抵「これくらいがいいですね。視界もいいですね〜!」とニコニコします。㎜数を記載しておきます。診察はこれだけです。
先ずは術前の画像から。瞼縁は充分に挙がっている筋性眼瞼下垂症を認めない二重瞼の症例です。ただし若干眉を挙げています。
予めシミュレーションで決めた幅6㎜をデザインします。
開閉画像を載せました。少なくとも目頭の上から目尻の上までは全て同じ幅6㎜切除するデザインです。上の線は眉の生えているところの直ぐ下です。眉がまばらでちょろちょろ生えているところがある人は下の邪魔な眉は切除幅に入れて一緒に切り取って無くします。6㎜下の線の内外両端は、上の線に向かって湾曲させて行きます。
下に手術直後の画像。
手術法:切除は切開する全域に渉って皮膚、皮下脂肪を全層取ります。メスを75度程下向きに傾けて毛根を守ります。眼輪筋を前面に渉って露出させています。眼輪筋を折り畳んで縫い寄せます。畳まれた余分な筋は萎縮して行く筈です。内外両端に余剰が無い様に皮下を剥離し、余った皮下脂肪をトリミングします。次の真皮縫合が重要です。ピッタリ合わせます。皮膚を連続縫合します。その後は創に軟膏を塗るだけです。
近接画像を診ると局麻と腫脹が相まって、重瞼が狭くなっています。
下に術後1週間で抜糸した直後です。
随分腫脹が軽快しました。重瞼が戻ってきました。眉を挙げませんからキリッと開いていて魅力的です。まだ内出血の後が黄色いですが、次週には消えるでしょう。
抜糸時に引っ掻いてしまう為に創の赤い線が濃化しています。視界は良好だそうです。
次週以降もっといい画像が診られます。
眉下切開と上口唇短縮術は、(いっけねえ!両手術を併施したのがばれたか?)美容形成外科の手術の中でも、顔面の前に創を作る数少ない(私は唯二と考えます。)手術です。
他の、例えば眼瞼の手術は二重の線を切るので目を開いていれば見えません。鼻は孔の中を切るので見えません。フェイスリフトは耳の前の創跡は消えます。
顔の前を堂々と切開するのは度胸が要りますが、だから逆に形成外科医が施行するべきです。またまた書きますが、日本はいい加減な国なので、医者なら誰でも何かでも標榜(看板を掲げる事)を出来ます。昨日まで麻酔科や内科を診療していた医師が今日から美容外科を標榜出来ます。実際チェーン店では医師なら誰でも、または新人でも雇います。形成外科医のベテランは報酬が高いので、先ず雇いません。
医師は学生時代には技術研修は出来ません。(学生が切ったり縫ったりしたら犯罪です。)専門的な知識を取り入れる手立てもありません。だから医師になってからの専門科の研修、その後の診療の為の知的研鑽が質を左右します。美容外科医に必要な技術と専門的知識は形成外科で研修しなければ身に着けられません。美容外科チェーン店系美容外科クリニックではビジネスしか教えませんから形成外科の研修は受けられません。
上段に書いた通り、顔面の前面を切開出来るのは真皮縫合の量と質に左右されます。そして真皮縫合の質が高いのは形成外科医だけです。だって他科の医者は真皮縫合と言う言葉さえ知らない者が多いのです。
真皮縫合の質とは、創を真皮縫合し終わった時点で引っ張ってみて全く拡がらないかです。真皮縫合でピッタリ合わせ無いと、術後経過中の数週間後から徐々に幅が広がります。他科の手術の傷跡が幅を持っているのはその結果です。ちょくちょく見ます。今日も外科の術後の傷跡が幅5㎜あるのを見ました。
私は形成外科研修7年と病院での形成外科部長歴8年でやっと、真皮縫合に自信を持てました。形成外科研修指導医は、桃栗3年柿8年柑橘類13年をもじって、糸切り3年真皮縫合8年皮弁形成(これは目頭切開Z形成法の際に説明します)13年と唱えます。私は身を持って経験しました。
今や人中部上白唇短縮術では日本一の経験者の様です。眉下切開も多用しています。これもそれも、形成外科の多少例の経験と美容外科の30年の経験が為せる技でしょう。ただし真皮縫合と皮弁形成の詳しい説明は「医学的で判り難いから読めない。」と多くの患者さんに嫌がられるので今回は記載しません。
今回眉下切開を説明しましたが、本当に創跡が目立たなくなるには数週間罹ります。次回本当に拡がっていないのを確認しましょう。そう言えば人中部短縮術の症例の術後を毎日診ますが、創跡の幅を測るとゼロミリで、つまり後戻りもゼロです。毎症例確かめています。
そして術後1か月で撮影しました。
まだ創跡の線は赤く目立ちますが、幅はありません。眉毛が多く毛が太いのに、創の線の周辺の毛は一度抜けてしまい、皮膚が露出しますから目立ちますが、デザインを診れば判る様に毛の根元のギリギリ直ぐ下を切っていますから、ここにも生えて来ます。だから創跡が白い線になれば毛に隠れて創跡は見えなくなります。通常3か月は罹ります。
次回を請うご期待!
傷跡は目立たなくなり、もともとパッチリしていた目の開きがさらに向上して、目と眉の間の腫れぼったさも軽快して、お悦びです。
当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
本年6月から費用の説明も加えなければなりません。眉下切開術は眼瞼下垂手術の一種ですから、保険診療です。3割負担で約4万円です。