2020 . 3 . 16

なじみの患者さんで結果が出るから楽しい。今回は目尻切開と眉下切除で眼瞼形成術:保険診療ですが同時に載せます。

本症例は最近幾つかの手術を、段階を追って、日程を空けて施行してきました。どの場合も、患者さんとはよく相談して患者さんはよく理解してから手術に到るので結果が良好でした。手術前には判りやすく希望を述べ、そこで私は診察や計測して診断を得ると、患者さんは従ってくれるだけでなく理論も理解してくれて結果が見えてきます。眼瞼についても結果が得られてきました。

ただし眼瞼形成術は様々のデザインがあります。ということは術前の形態的機能的なバリエーションが豊富だからですし、周囲とのバランスも考慮しなければならないのです。また眼瞼の皮膚は身体中で一番薄いために加齢による伸展が早く進みますし、機能的にも(上眼瞼挙筋)経年変化を起こしやすい部位です。逆に言えば眼瞼はなおさらに診断が難しい部位です。

今回は眉下切開と目尻切開の同時施行ですが目的は違います。経過も違います。

眉下切開術は、加齢による皮膚の伸展=後天性前葉性眼瞼下垂症に対する第一選択です。後天性後葉性腱膜性眼瞼下垂には適応できません。二重まぶたは広がります。逆に一重まぶたの人は二重にしないでもたるみを取れます。眼窩骨の形態的個体差によりデザインは変えますが、何より眉の生え方に左右されます。経過は眼瞼を切開するよりは早く治りますが、早期のダウンタイムは1〜2週間あり、大きなメガネでないと隠せません。ただし傷跡は術後1週間の抜糸後はメイク(眉を描くか、アートメイク)で見えなくできます。適応症例を見極めれば受けやすい手術です。

目尻切開は、目尻の位置を外にする手術ですが、量的限界があります。眼球はあくまでも球形なので切りすぎて外にすると眼球から目尻が浮いてしまうからです。術前のシミュレーションで診断します。術式は幾つかありますが、その一つの靭帯縫合法は、鋭角になり変ですし、皮弁法は傷跡が目立ちます。そこは目頭切開と逆です。やはりYに切ってVに縫合するコンベンショナルな術式が適していますが、3つの問題点があります。1、後戻りが必ず起きます。2、まつげのない眼瞼縁ができます。3、結局Y型の目尻になり得ます。この点については次回説明します。ただし画像を見ても判る様に適応症例なら傷跡が目立たない良い結果を得られます。経過はわずかな腫張で済みますが、少なからず野症例に結膜下出血が起き、一度赤くなると吸収には2〜3週間掛かります。

症例は40歳女性。139/28:33で目尻切開の適応。理想は顔面幅を5等分するのです。つり目なので3㎜30度。靭帯は横に半割りする。垂れ目整形は不要。

Kクリニックで20年前眼瞼形成切開法。その後皮膚が弛緩した。日常的には眉を上げないようにしている。用手的に5㎜挙げるとスッキリ。眉は書くから目尻を越えて5㎜まで同幅切除できる。目頭の上は眉下からはみ出ない様で止める。

まずは画像を供覧します。

IMG_6868IMG_6871

上の画像は術前の遠近二葉。左図の遠景と右図の近接像では目尻側と目頭側の白目の面積が違います。輻輳のためです。顔面の幅も変わります。画角のためです。遠景像の方が目尻側の白眼が大きく映りますよね。下段に載せますが、目頭側は白眼の面積が増量しましたから、目尻側に増やしてもいい訳です。

ご覧の様に眉を大きく上げる癖はありませんが、近接画像では見開くのでちょっと挙げています。

IMG_6873IMG_6872

上には術直前のデザイン後。眉下切開のデザインは眉の形の希望を汲みます。しかも生え方は個体差があります。本症例はまばらな法でやや太め。上辺にも下辺にも二本ずつ線がありますが、眉をそ即したい希望で書き換えたからです。眉尻は目尻の上より5㎜外まであげたいのでさらに外側まで三角に切らなければなりません。四角くは切れませんよ!。眉頭は眉に沿ってカーブさせます。

目尻切開もデザインしていますが、まつげに隠れて見えません。

IMG_6876IMG_6877

術直後はお疲れで目が開きません。だから目尻も見えません。逆に眉を上げないのでデザイン通りに眉と眼瞼が近づいています。ついでに言えば、眉下も目尻も眉を上げないで過ごした方が傷の安静になります。

下に左右眼瞼の近接画像。

IMG_6869IMG_6870

近接画像では見開いてくれます。

IMG_6874IMG_6875

目尻切開のデザインは目尻の角から30度下向きに3㎜です。眉の生え方はばらつきがあるので揃えるために左右のデザインの線が違います。

IMG_6878IMG_6879

 

見事に眉の幅がそろいました。眉尻から傷がはみ出ていますが、必ず書くとのことで、術前に打ち合わせてからデザインしています。近接画像でも目を開かないと目尻切開の効果は見えません。

術後1週間で抜糸しました。

IMG_6964IMG_6965

上左図は近景像。輻輳しているので目尻側の白目が増えたのが判ります。遠景ではなぜか開瞼を弱めました。下の左右眼瞼像で説明します。

IMG_6966IMG_6967

いきなり私叫んでしまいました。「アアッやっぱり結膜下血腫が起きましたか?。30%くらいの人には起きます。残念です。」と頭を下げたら患者さんは「いや違います花粉症の季節で触ったからです。毎年のことです。」と落ち着いた人。そう言えば結膜下血腫はべたっとした赤。本症例の患者さんの白目は毛細血管拡張で(アレルギー性)結膜炎の赤くなり方です。

目尻は半量後戻りしました。術前、術直後、翌日と眼裂横径を測りました。28㎜→31㎜→29.5㎜と推移しました。目尻切開手術後はほぼ全例半量後戻りします。いや後戻りというよりも創傷治癒に伴う癒着です。よーく見ると目尻部の眼瞼が眼球から浮いています。隙間があります。「スースーしませんか?。」と尋ねると「ああだから赤いね。」ですって!、続いて「じゃあ乾きませんか?。」ときくと「赤いのはそれも関係あるのですね。」と気にしていない風。「この手術の最大のダウンタイムは血腫ですが、眼瞼結膜側の腫張が眼瞼を押し出すので眼球との間に隙間ができるのもこの様に症状を呈します。必ず治ります。だから3㎜切開にするのです。」と説明しますと安心してました。目尻切開の手術法は次回説明します。

眉下切開手術の傷跡は術後1週間では赤い線です。抜糸したらメイクして書くしてください。

さて約1年前の画像をコピペします。目尻切開と眉下の経過をの前に何をしたか見せます。眼列横径25㎜:内眼角間37㎜:角膜中心間距離64㎜と蒙古襞の被さりが明らか。十数年前に眼瞼切開手術を受けた。結果蒙古襞の水かき状の被さりと縦方向の拘縮が目立つ様になった。一辺4㎜のZ−形成術を適応にした。

画像を供覧します。

IMG_0772IMG_0781

上に術前とデザイン画。

IMG_0785IMG_0960

上に術直後と1週間の画像。そしてその後皮膚を切除していない部分が二股になっているので取り足します。

IMG_1843IMG_1130

二本の重瞼線の間の皮膚を目頭“形成”術後の上の辺を底辺に三角形に切除しました。一点止めました。上右図が術後1週間です。実はその前後でベビーコラーゲン注入もしました。

IMG_1534IMG_3291

上に眼瞼の修正術から1ヶ月と3ヶ月の画像。その後特殊リフトを施行しました。

やはり一番気になるのはJowlです。患者さんもこの言葉を知っていました。フェイスリフトでは剥離範囲がいろいろで、S美容外科なんかでは切って縫うだけ、剥離ゼロですし、かといって前方まで剥離するには全身麻酔が必要ですし、SMAS(筋膜等)下の剥離は顔面神経総称の危険があるため、形成外科医しかするべきではありません。私は近年(当院での約10年)はMACS liftという概念でフェイスリフトを施行してきました。Minimal Access Cranial Suspension, 訳すと小さめの切開で骨に吊りあげるリフトです。切開は耳輪の前から耳珠の後ろに隠して、耳垂を回って耳後部の溝までです。通常剥離範囲は切除量+@の2.5〜3㎝としてきました。SMASを何針かPlication, 折り畳んで縫い上げる際に、一番上の糸を頬骨弓の骨膜に掛けるのがCranial Suspensionです。

今回は新しい試みとして、Jowlに向かってマリオネットラインの後ろまで皮下剥離範囲を延長しまいた。もちろんその深部のSMASも吊り上げましょう。患者さんと示し合わせてやってみることにしました。

術前と術直後の画像を見ながら説明していきます。

IMG_4925IMG_4934

上が正面像の前後。左の術前画像の口角の真横の顎のラインと術後の同部の幅を比べて診ましょう。明らかな差が見事に判りもっとます。もっと言えば凹んでいますが、そこのSMASに糸をかけたからです。よく効いています。ただし、その後ろが膨らんでいます。これは腫脹でもありますが、前下の組織を後ろに持って行ったからでもあります。もちろんこの面は、腫脹が引いてからでなければ評価できません。いずれにしてもよく挙がりました。JowlのSMASをあげるとその前の口角まで挙がったかも知れません。すでに私が口角挙上術を施行しましたから、オーバーコレクション,Over correctionにさえ見えます。

今回顔面フル画像を頂きましたから、せっかくですから、4方向を載せていきます。

IMG_4928IMG_4929IMG_4927IMG_4926

IMG_4933IMG_4932

デザインは実線が切開線。耳珠,Tragus部は後ろに回っています。耳後部は見えませんが、後頭部との折れ返りにあり、前の耳珠の高さまでです。

点線が剥離範囲です。耳前は幅2.5㎝で、下顎縁に沿ってマリオネットラインの直ぐ後ろまでマーキングしました。

下に手術直後の4方向の画像を術前と同じ並びで載せます。

IMG_4937IMG_4938IMG_4936IMG_4935

術後3ヶ月が来て、画像を戴きました。

IMG_6844Jowlがないとエラも見えなくなるんですね。何と美しいシャープな中下顔面(下顎縁)の輪郭でしょう。

IMG_6845IMG_6846IMG_6847IMG_6848

こうして次の予定を立てました。上の画像を頂いた翌日に、目尻切開と眉下切除手術の予定を立てていました。その際も、リフトの中期的経過を載せたくて再掲しました。

次いで昨年初めの口周りの手術の経過も再掲します。一目見て長い症例です。初診は一昨年秋で授乳中でしたが、診察だけしました。

症例は39歳女性。人中部白唇長(鼻柱基部~Cupid’s bow赤唇縁の弓型の底)21mm。十数年前に他院で眼瞼切開。目頭の蒙古襞は拘縮し、眼裂横径25mm:内眼角間37mm:角膜中心間64mmと数字的に離れていて、吊り目になっているため治すべきだとサジェストした。白唇は15mmを目標に6mm切除を希望。E-ラインは下口唇が5mm前方。上口唇はE-ライン上だが薄くなった。赤唇はバランスが取れている。外反は軽度希望。人中と弓は明瞭で結節もある。顔面部品横サイズが内眼角間37:鼻翼幅38mm:口唇幅47mmで口角は40度6mm挙上が適切とプランを立てた。 本年に入って断乳出来たため再診。目頭は後日とし34mmを目標にする。口唇幅51mmを求めて口角は黄金分割比を充てて目じり方向に6mmとした。人中と弓は作らない。6mm切除なので細かく真皮縫合を予定。訊くと、これまでの傷跡は肥厚性瘢痕やケロイドは起こしていない。リザベンやケナコルトは断乳したので可能。

画像は術前から。

IMG_5024IMG_5029IMG_5028IMG_5025下口唇がE-ラインより前、上口唇は線上。

IMG_5040やはり人中部は1mmずつ寄せる。

IMG_5047IMG_5052

すっきりします。

IMG_5051IMG_5048上口唇が外反して上下口唇の前後関係が揃いまいた。術後2か月半で来院されました。画像は正面像だけです。形態的に満足を述べられました。創跡は拡がっていません。人中部の白唇長は16㎜です。

今回の症例は術後4ヶ月でも見せてもらいました。

IMG_0265IMG_2952IMG_2956IMG_0266特に形態と機能は良好です。

さすがに読むのが面倒ですから次回版を変えて載せます。今回の手術だけを載せ説明を加えます。