鼻の手術は、現今のマスク装用義務化時には、ダウンタイムの間もカムフラージュ出来ますから、取り組み易いのは確かです。ただし鼻は眉間から鼻尖、鼻唇角または白唇までの縦長の臓器で、隠せるのは鼻稜(鼻スジ)の下半分までで、鼻根や眉間は露出します。
患者さんの生来の鼻の形態、また来院時の鼻の形態は様々ですから、理想的または希望の形態を手に入れるためには、多様な手術法を駆使しなければなりません。鼻尖を小さく高くするだけで良いなら、軟骨移植だけで造り出せることが多く隠し易いし、鼻唇角プロテーシスだけなら隠す時期も短期間で済みます。ところが外鼻プロテーシス挿入術のを要する際には、剥離が必要だと腫脹が眼瞼まで広がることが多く、また近年では、学会でも提唱されているように、I型プロテーシスが適切だと考えられていますから、落っこちてこない様に、眉間に糸を引き出して止めることを定式としています。この糸は隠せません。
本症例は上から下まで改善を図るべき症例ですから、隠せません。標準的には1週間で目立たなくなりますが、長い人は3週間腫脹が見えます。本症例はどの様な経過を経るでしょう。患者さんは明るく楽しい女性なので、経過は早そうです。いつも言う様に精神的状態落ち着いている人はダウンタイムが短いのです。ただし油断は禁物です。経過を追うためにも画像をいただくためにも定期的に診ていく必要があります。そのためにはブログ掲載契約をして戴いた症例はむしろ安心です。信頼関係も醸成されていますから精神的にも安定していて経過が良いでしょう。
症例は47歳女性。4年前に初診し、眼瞼手術。1年後粉瘤摘出術。昨年爪を傷めて久し振りに私に罹り、処置する際にリフトや口角の話題を上げた。
本年突然鼻の診察を希望して来院。実はこの間ブログを視ていて、私に手術を受けたくなったとの事。25年前にL型プロテーシスを入れている。鼻尖を下にツンっとしたい。鼻翼45㎜で3㎜の皮弁法の適応である。プロテーシスを作り変えたい。鼻柱も喰い込んでいる。L型プロテーシスは危ないのでI型に変えて、鼻根部が短いので、上方へ延長したい。鼻尖に耳介軟骨移植2枚重ね。なお前に入れたL型プロテーシスが両側の鼻翼軟骨間に喰い込んでいるから解剖学的位置に戻して縫合する。鼻柱基部が喰い込んでいる=鼻唇角が70度と鋭角なのは鼻唇角プロテーシス8㎜以上要。
白唇長24㎜で鼻翼縮小術皮弁法と同時にするとして、まず鼻プロテーシス改良と、鼻尖形成+耳介軟骨移植、鼻唇角プロテーシスも同時に可能と説明した。ただし手術時間を要するため、局所麻酔単独では不可能と考えられ、静脈麻酔での手術予定を立てた。
ところが当日聴きそびれていた既往歴が判明した。静脈瘤があり、PGI2剤を服用している。血管拡張作用と抗血小板作用があり手術後出血が止まらないため激しい血腫を起こす可能性が大で、前後2日止めることが求められる。食事も3時間前以内にしてしまった。ついでに計測して、I型は現在長さが4㎝あり、眉間には無いから、5㎜延長する予定。鼻を長く、鼻孔を見え難く、鼻が高くなれば外人顔になり得るプランを確認した。
静脈瘤に対して診療を受けている内科医に確認してもらい、前後4日休薬して良い返事をもらったので、改めて手術予定を立て直した。なお静脈麻酔で、特に静脈瘤を持つ場合、深部静脈血栓からエコノミークラス症候群を起こしかねないので、術中は下肢圧迫のための弾性ストッキングを装用するべき旨を説明したら、持参してくれる事となった。
当日もう一度確認。PGI2剤とスピロノラクトンは4日前から休薬してくれた。L型プロテーシスをI型に改良したら、それを上に移動できることを説明。鼻翼軟骨は位置を戻して縫合。耳介軟骨は左から10×13㎜採取して、ダイヤモンド型と三角形に分けて2枚重ね。鼻唇角プロテーシスは8㎜長として鼻柱基部を3㎜下げる手術プラン。
画像は術前から、挿入物、術直後の順に。
上から説明します。鼻根が低い。鼻尖が大きく低い。鼻柱が喰い込んでいる。
ここまでは視て判ることですが、触診でL型プロテーシスは判りました。鼻尖部では両側鼻翼軟骨の間に潜り込んでいるのが判りました。
下には挿入物。
1:上左図は抜いたプロテーシス既にL型の鼻柱部は切りました。上右図はプロテーシスをI型にした物を前から見ています。これを前より5㎜上に移動して、鼻尖にはプロテーシスを無くします。
2:鼻尖に入れる耳介軟骨を採取しました。上左図は10×13㎜です。上中図は採取した耳介軟骨を二つに割って、一段目は10×8㎜のダイヤモンド型、2段目は8×4㎜の楕円形にし、積み重ねて縫合した図。上右図はそれを横から見た図。
2’:鼻尖の皮膚の前に置いてみました。既にI型プロテーシスは入っていて糸で眉間に引き出しています。移植軟骨は図の様な入れ方です。上左図は正面像、上右図は側面像です。移植軟骨の分鼻尖が高くなります。
3:鼻唇角プロテーシスの図。上左図は側面像。図上方が鼻尖側、下方が白唇側。左が前で、後より出ています。上中図は正面像。下から見て鼻柱に入ります。上右図はプロテーシスを俯瞰した図。ベースは鼻柱基部の皮下組織内に骨の上に埋め込まれます。
術後には三つが挿入されています。
正面像はテープの有無で二枚。テープ無しで見ると、鼻根から眉間にかけて三角形に膨らんでいるのが見えます。剥離した範囲が腫脹(腫れ)しています。挿入前にプロテーシスの上端に糸を掛けて、予め糸を眉間に引き出してからプロテーシスを挿入し、引き出した糸はガーゼを挟んで結びました。その後テープで、白いガーゼと青い糸を隠しました。
また鼻尖部は近接画像でも診ましょう。見て判りますかね?、テープで囲まれた鼻尖の中央部が移植軟骨です。こうして周りを抑え込むといい位置に留まり、約1ヶ月で癒着して固定されます。
術前に見えなかった鼻唇角部(鼻柱基部)が見えるのはプロテーシスです。喰い込んでいない鼻柱は自然で綺麗です。適合性大でした。
実は前には入っていたL型プロテーシスは曲がっていて鼻尖の両側鼻翼軟骨(鼻翼でなく鼻尖にあるのにこの様に称します)の間でなく、右の鼻翼軟骨を押しつぶす様に入っていました。私は前回のぷろてーシスを抜いた後に、右鼻翼軟骨を引き出して、左鼻翼軟骨と縫合して正位に固定しました。⬇️
下面像で診ると鼻尖が中心化しています。上にある様に鼻翼軟骨を固定して直しました。それよりツンっとした鼻尖が綺麗でしょう?!。斜位像でも側面像でも鼻尖付近は腫れて上に持ち上がり、鼻根付近はぼてっと腫れてしまいます。この程度だと3週間罹るかも・・?。
なお経過ですが、鼻尖のテープは1週間は常時固定が必要です。その後は夜間だけでもいいので患者さんに貼ってもらいます。患者さんは適時触れてみれば移植軟骨が判る様になりますし、腫れが取れてくると見えてきます。眉間の糸は2週間は固定したいと思います。
術後1週間で一部抜糸します。最近はI型プロテーシスの場合は鼻尖に異物がないから、感染の危険性がないので鼻孔縁の抜糸は遅らせています。
外鼻全体の形態が改善されました。眉骨から繋がる様に眉間から鼻根に架けて彫りができて、鼻稜から一度細くなって鼻尖に行こうします。近接画像で見られる鼻尖は小さくツンっとしています。
これからが大事な後治療です。テープで移植軟骨の周りを圧迫して位置を決めて癒着させると共に、周囲の皮膚が浮いたままにならない様にするしましょう。浮いた皮膚の下に瘢痕ができると厚ぼったくなってしまい、大きな鼻尖になりかねません。テープは重要なのです。
眉間の引き出し糸は2週間置きましょう。
斜位像でも側面像でも、眉間から鼻根部の腫脹がかなり軽減しました。ピーク時の40%程度残っていますが、患者さんはメイクして暮らせています。
下面像で見られる様に、鼻柱は抜糸しました。傷跡はわずかに谷線ですが、W−形成術で三角弁を入れていますから、拘縮しないで平坦化します。直線で切ったら拘縮して谷が深くなるのを防ぐ工夫です。鼻唇書くプロテーシスの位置も中央にあります。
左耳介後面の軟骨採取部の傷跡ですが、抜糸しましたし、圧迫固定も除去しました。時間と共に何も見えなくなります。
次週鼻孔縁の抜糸予定です。その際も画像を頂けると期待しています。もっとどんどん良く形が見えてきますよ!。お楽しみに!
とか言っていたら、3日後にも魅せてくださいました。テープの貼り方が正しいかの確認のために来院され、折角だから正面像だけ頂きました。
そんなに変わらないと見えるかもしれませんが、眉間から鼻根、鼻綾(鼻スジ)にかけての腫脹はさらに軽快しています。本題は鼻尖のテープの貼り方ですが、移植軟骨を囲む様に貼っています。患者さん本人が貼ってきましたが、私が貼り替えてから撮影しましたが、上の画像と同じ様に出来ていました。上手い!。なぜなら今の固定が移植軟骨の位置を決めます。本症例はL型が危なくなるのを避けるためにI型に改良して上に移動し、鼻尖は耳介軟骨移植にしました。ということは、術前の鼻尖よりも格好よくしたい訳で、比べると見事に出来てきています。
まだまだ、後療法中です。次回術後2週間で鼻根部の引き出し糸を取りに来院されます。画像も頂きます。お楽しみに!
と思っていたのに、撮り忘れました。下に術後1ヶ月の経過画像です。
鼻唇角プロテーシスは左。夜間レティナー。軟骨は中央。I型の位置は中央で、固定性も良好化。牽引糸の痕は浅くなって目立たなくなってきた。
当院では一昨年に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。今回の手術は鼻尖軟骨移植3枚で35万円+消費税です。 I型シリコンプロテーシス挿入による隆鼻術は18万円+消費税です。鼻唇角プロテーシス挿入術は15万円+消費税です。出演料として20%オフとなります。