フェイスリフトは読んで字の如く、顔を持ち上げる手術名です。だからこの言葉だけでは手術法を意味しません。部位も顕しませんし、効果や持続性も不明だし、患者さんにとっては手術法は術中に知り得ないのでブラックボックスです。
部位で分ければ、上から前額部から眉上から上眼瞼部を引く。こめかみから頬前や目尻を挙げる。耳前部から口角の横のJowl の膨らみを引き上げる。耳後部からはい際を皮弁状に引いて下顎下から頸部を引き上げる手術があります。全部同時には全身麻酔で８時間以上要しますから、費用も嵩みます。私は分けて行います。上中下に分けると局所麻酔で３時間前後で可能です。
手術法のバラエティーは、剥離層と剥離範囲が、効果と持続性に繋がります。もちろん糸で挙げる場合剥離は滅多に行われませんがトライしている医師も居ます。でもこれでは侵襲が強く意味がありません。さて、層ですが、１９７４年来SMAS法が競われました。でも顔面前方のSMASは薄く脆いので効果はあっても、意外と持続性が少ないことが解ってきました。支持靭帯縫合法は硬い組織を縫い合わせる為効果と持続性が高いとされますが、顔面神経を避けながらの細かい手術で時間がかかる為、本邦では数人しかしていませんし、５００万円単位になります。
実は靭帯法をしているのは、私の先輩のUt.先生ですが、彼は後戻りの量を啓示的に測って学会発表しています。彼に教わったのですが、靭帯法の次に持続するのは広範囲剥離法です。部分的な広範囲剥離法なら局麻で可能なので私はこの数年行っています。ブログ提示症例もありますよね。実際１年半後後戻りがないのは確認されています。
形成外科は英語でPlastic Surgery ですが、USAでの標榜科目名,Bourdは、Plastic and Reconstructive surgery 訳すと形成再建外科です。難しい話ですが、日本では美容外科と形成外科は別の標榜科目名でして、原因の有無で分けて、自費と保険適応になりますが、USAではPlastic surgery とAesthetic Plastic surgery は同義でどっちも標榜できます。通常大学病院ではPlastic and Reconstructive surgery 開業医はAesthetic surgery を標榜します。何が言いたいのかというと、日本ではフェイスリフトは自費診療で、美容外科の分野ですが、USAでは美容形成外科、場合によっては大学病院など大病院の形成再建外科も担当します。もちろんUSAの医療は自費で、民間保険がカバーしますが、保険プランの保険料次第でフェイスリフトをカバーするものがあるのです。考えてみたら、フェイスリフトは若さを取り戻す、つまり若さを再建する手術ですから、形成再建外科の担当分野と考えてもいいのかもしれません。
ところで本邦における形成外科と美容外科はどの様に違うかといえば、形成外科を研修しながら美容外科を研鑽してきた医者と、新人からまたは他科の研修後美容外科に就職する医者の二種類居て、前者は専門的医学を学ぶのに対して後者はビジネスを学ぶだけで、勉強をする暇を与えられません。もちろん私は前者で、大卒後医師になってすぐに、北里大学形成外科・美容外科に入局して１５年在籍し、同時に父が院長をしていた銀座美容外科で６年目から診療を担当してきました。
形成外科医は勉強するから安心なだけでなく、壊れた患者さんを形態的にも機能的にも治す際に、体表面より深部の構造を学び、また実際に見る機会が多いからです。皮膚はもちろん、皮下脂肪層や筋膜は実際に見なければ層を判別できません。さらに深部に神経や血管があり、どの位置のその層にあるかを机上で知っていても実際に見たことがなければ、壊してしまう可能性を否定できません。父は胸部外科出身の美容整形外科医ですから、体表面と深部の解剖の勉強をしていません。実際父が顔面神経を痛めた症例を何人か見続けています。またSをはじめとしたチェーン店でも、時折起こしていますが、その後最近では危ないことをしなくなっています。結果効果や持続性はがた落ちになっても、「そんなもんです。」と言って誤魔化しています。
症例は３９歳女性。遠方から先月銀座院に来院。１０年前Sで切開リフトしたが、１年で後戻りした。他に眉下や下眼瞼を手術した。
頬骨隆起が鋭角で頬前が平坦。対して、広範囲剥離こめかみリフトで丸くなだらかにしたい希望。このブログに載っている症例を視て目的を叶えられると考えたそうです。”こめかみリフト” ”ゴルゴ線”のキーワードで探すと私のブログに辿り着くそうです。自分を探すのは恥ずかしいのですが、試しに私も入れてみたら出ました。
他に目袋や窪み目も相談された。距離的に大阪院も可能で、スケヂュールを立て易いから、予定した。手術直前の再診察で、確認。頬骨隆起が角張っている。ゴルゴ線まで剥離します。
画像は術前から。
正面像で、頬骨隆起と称される。頬前と頬横への曲がり角が所謂立っているのはアジア人の標準です。様は幅がなければよいのです。顔面横径は頬骨隆起の後頬骨弓部です。本症例は１３０㎜以下です。大きくありません。
下に４方向で視ましょう。
両側側面像では頬前がフラット気味なのが判ります。
両側斜位像では頬骨隆起が角張っていると言うか鋭角です。
下に手術デザインです。皮膚１５㎜切除。二層縫合。
両側斜位像で説明します。切開線は約３５㎜です。切開線の位置ですが、実は逆で、先ずゴルゴ線に点線でマーキングして、その最上点から斜め上に目尻の眼窩内より下に点線を引いていき、こめかみの生え際に到り、そこから下に３５㎜の切開線を書きました。点線で囲まれた範囲が剥離範囲です。
皮膚切除は最大１５㎜取れました。真皮縫合と皮膚連続縫合の二層縫合しました。
下には術直後の画像。
腫脹は手術の侵襲＝切開は短くても剥離範囲は広く、反応は多いのです。また術直後は局麻の効果が残っていて腫脹が倍加しています。局所麻酔薬の量も腫脹に繋がりますが、血管拡張作用に依って、血漿が皮内にたまる作用もあります。また、局間が切れていない数時間は眉は挙がらないし、頬も動かないので怖い顔になります。
側面像では創を診ましょう。赤い線は血液が付着しています。糸はらせん状に見えます。
斜位像では頬の張りが見えます。頬骨隆起が角張っていません。
下には手術翌日の画像群を戴きました。
翌日は腫脹が亢進しているはずですが、局麻が切れて、眉は挙がってちゃんと顔面神経の損傷がないことを確認できます。だから写真も自然です。
翌日の斜位像ではゴルゴ線の消失が判ります。創の赤いのは消えて黒い血痂となり、生え際に紛れてきます。
下には術後１週間の抜糸後。
内出血は黄色くなり吸収が早い。前の腫脹は嬉しい。横への腫脹は引きます。
創は抜糸する際に引っ掻いて赤くなってしまいますが、糸が無いと目立たなくなりますね。
斜位像でまだ黄色く内出血の跡が見えます。術後２週間で吸収されるでしょう。術後１ヶ月の画像をお楽しみに！。
と言っていたら、こちらの手違いで術後３週間で来院されました。私は診られて、悦んでもらえて嬉しいです。
腫れが取れて来て頬前が平ら。上眼瞼の弛みも挙がったので目が大きく見える。ゴルゴ線も消えた。後戻りはまだ視られない。
斜位で視ると頬前がスッキリ。ゴルゴ線は見えません。頬骨隆起そのものはあっても上方移動しているから明るい。
側面像で視ると、頬前から下眼瞼に懸けて影が見えなくなります。創跡の線は赤くて見えますが、薄くなっています。最終的には見えなくなる部位を切開しています。
術後５週間で画像を頂きました。
上眼瞼外側のが弛みが取れて目が大きく見えるとお悦び。目尻そのものの位置は挙がっていなくて別に吊り目になってはいないのはgood.中顔面の弛みが取れて正面視で判る。そうしました。頬骨から上顎に架けてたこ焼きが垂れていたのが無くなったからです。輪郭がきれいと悦んでいます。創跡は真皮縫合部の赤い点だけがまだある。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは１～２週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、３ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに２週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2～４週間程度かかります。・手術後２週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、２週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後３日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後１週間（抜糸まで）は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。こめかみリフトは４０万円＋消費税です。こめかみリフト手術後は、上中顔面全体を載せますから、ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として４０％オフとなります。
