約1年前にJowl に対する中顔面の広範囲剥離リフトを施行した患者さんが、こめかみリフトを希望されました。この数年来に利用している手順です。これまでの症例でもそうでしたが、現在私はフルフェイスリフトは出来ません。手術時間を要するからです。他の一部の美容クリニックでは、一日中手術するところもありますが、当院は手術時間を3時間半しか用意していませんからです。もっともこの数年来はスレッドリフトだけしかしない、または出来ない低級美容外科クリニックが横行していますから、美容外科クリニックは増加しても、切開リフトが出来るクリニックの割り合いは少なくなる一方です。何故なら二つの理由があります。広告宣伝やSNSで誘引しているクリニックは、安いかダウンタイムが短い治療を勧めて、数と売り上げを増やすビジネスモデルに特化します。もう一つは美容外科に参入する医師は圧倒的に非形成外科医が多く、切開リフトの知識と技術を身に着けていないからです。逆に言えば形成外科出身でない美容クリニックや美容皮膚科では切開リフト手術を受けない方が良いのです。
欧米では形成外科,Plastic and Reconstructive surgeryの研修無しに美容外科,Aesthetic surgery or Cosmetic surgeryを診療する医師はあり得ません。国民保険の無いUSA等の国に於いては、形成外科と美容外科の区別は無いし、形成外科の専門医,Bourd(板とは掲げる証書の額)を取らないと美容外科の開業が出来ない国もあります。形成外科と美容外科が別科目なのに、開業時の標榜科目は自由に選択出来る国は日本だけです。だから本邦では、医学的な研鑽を積まずに、医師になって直ぐに美容外科クリニックに就職したり、他科の診療していた医師が、いきなり美容外科に転科する輩が多く、特にチェーン店ではその様な医師が横行しています。
切開リフトは創が命です。いや創跡は見えるから、当初の出来上がりは創跡が左右します。剥離層は骨膜上や筋膜,SMASや皮下がありますが、縫合する切開線は変わりません。創跡の質=目立たなさは、数週間後から幅が拡がるかどうかです。防ぐ為には、形成外科的手技の基本である、真皮縫合の技術の巧緻性が必要です。最近患者さんと話していて判って来たのですが、中縫いをしているのを知らない人が多く、時には糸が身体の中に残っているのは良くない事だという様な、間違った情報を信じている人も居ます。ちなみに当院で真皮縫合に使う糸は、3か月で溶けて吸収されます。3か月で真皮層は強固に癒合して、幅が拡がらなくなるからです。
本題ですが、私は切開リフトを上中下で分けてきました。真皮縫合を密にする為には3時間前後の手術時間を要するからです。Jowl に対する広範囲剥離リフトが第一段階です。次にこめかみリフトを受けたくなります。10年前には同時にしていました。でも、最近は広範囲剥離をお奨めしますから、時間的に難しいのです。リフトの持続性と効果は剥離範囲が担保します。よく登場する先輩のUt.先生は、本邦で唯一のリガメント法の大家ですが、彼も教えてくれた様に、広範囲皮下剥離リフトは次なる効果を得られます。時間も数時間ですから費用も抑えられます。これまでブログに数例提示してきましたが、視て「私も受けたい!。」と仰る患者さんが増えました。本症例の患者さんも視ていました。となれば、手ぐすね引いて、気合いを入れて、頑張って広範囲剥離リフトを手術致します。短期結果はもちろん、3か月の中期的結果も魅せたいと思います。
症例は46歳女性。約1年前にJowl に対する中顔面の広範囲剥離リフトを施行しました。この数年来に行なっている手術です。何度も書きましたが、Jowlに対しては広範囲皮下剥離リフトはリガメント法に継ぐ持続効果を魅せます。そして下顔面が挙がったら、次は中顔面を挙げたくなるのは当然です。側頭部生え際を切開して、頬骨隆起部を越えてゴルゴ線の直ぐ外まで剥離しますと、頬前に張りが出来ます。
患者さんと引き上げ方向を検討します。こめかみリフトは上方向に引くと、目尻が吊り上がります。それを好む人も居ますが、生来の眼裂の角度次第です。本症例の患者さんはキリッとした目元ですから目尻を挙げるとキツい印象になり過ぎますから、どちらかと言えば後方へ引きたいと希望されました。術者の手で、引いてみて方向を決めます。水平線から斜め30度上方向に引いたら、嬉しそうな表情になりました。用手的シミュレーションでは、約1.5㎝は引けそうでした。
画像を提示していきます。各方向を術前から経時的に比較しましょう。
上には正面像の術前と術直後像。術前像では、ゴルゴ線が明瞭に見えます。黒い点線の範囲が剥離範囲です。下線はゴルゴ線の上外側まで、上線は下眼瞼縁の直下までです。術直後は局所麻酔量も影響し、かなり腫れています。
上には術翌日と術後1週間の抜糸後。上顎部に張りが視られてお悦びです。術後1週間で術直後と比べて腫れは減っています。内出血も軽度でした。
上左図は術後2週間の正面像。張りのある中顔面をお悦びでした。上右図は術後1か月。術前と比べて目の横当たりの顔が小さくなっています。
下には斜位像。
上の術前像では切開線が隠れています。剥離範囲の点線を後に延長した部にあります。
術直後では横方向に腫れています。縫合線は赤く見えます。視ると剥離範囲は白くなっていますが、局所麻酔には血管収縮剤であるエピネフリンを添加しているからです。
翌日は腫脹がピークです。
術後1週間で抜糸しても創跡はまだ赤い線です。左ゴルゴ線は剥離ポケットのお尻で、内出血が溜まっていて線が見えます。
術後2週間では、腫脹が軽快して張りだけが見えます。
術後1か月。創跡がどんどん目立たなくなってきました。
下からは側面像。
何故かデザインが薄く見えます。
術直後は縫合線に血液が付着して目立ちます。
翌日は目元も腫れぼったくなります。縫合線の血液は塊って黒くなります。
抜糸してもまだ縫合線は赤いです。
術後2週間では「創跡がどんどん見えなくなっていった。」と患者さんが感激していました。本題として中顔面に張りが見えます。切開線から前へ頬骨部に締まりがあります。鼻唇溝(法令線)に伸し掛かる上顎の組織が無くなりました。そして、下顔面(下顎ライン)から中顔面、目元までキリッとしています。
術後1か月までの各方向の画像群を載せました。まだまだ中顔面の張りは保たれています。今後順次各方向別に載せ足します。なんと言っても中長期的経過としての持続性が売りですから!。
術後3か月で完成ではありませんが、画像提示は終了します。そこで今回は術前と並べます、
広範囲剥離Jowl liftから約2年半、こめかみリフトから約1年半ですが、画像をいただきました。
ゴルゴ線は再発していますが、中顔面の張りは保たれています。Jowlもなくはないですが、下顎のラインは卵形です。
側面像でも斜位像でも若々しい。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。こめかみリフトは40万円+消費税です。こめかみリフト手術後は、上中顔面全体を載せますから、ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。