中華人民共和国には、実は多様な人種が存在します。混血も進んでいます。ですが現代では人種という概念は科学的には解明されていません。DNA、ゲノムを全て調べられないからです。でもご存知の様に概ね3種類の人種に分けられます。白人と黄色人種(アジア人)と黒人です。現代は交通手段が進歩して混血が進んでいますが、昔から中国は大陸国ですから、シルクロードを辿って他の人種と混血がされていました。有史以来欧米にも移住し華僑となり、USAにも進出しています。逆に中国の西側の内陸部では、田舎に閉じ込められている人達もまだ居ます。生活環境も整わず、経済的にも格差が多い地域がまだあります。最近やっと人々が動ける様になったようです。
鼻の平均的な形とサイズは、人種により明確に分けられます。高さと幅は反比例し、ご存じの様に高さは白人>黄色人>黒人で、大きさは黒人>黄色人>白人です。あくまでも平均ですから、混ざっている者はもちろん、他の要素もバリエーションに影響します。主に経済力と、生活史です。日本でもつい最近までは、経済的環境が高くない地方出身者では、平均として鼻が低かった人が居ました。よく言われる様に、遺伝的要素は半分影響して、成長時の環境は半分影響します。科学的に証明されています。臓器により差があり、骨の成長は環境、中でも経済的な差異が、要するに栄養、特に蛋白質の摂取に影響されることが統計的に証明されています。鼻の土台は上方半分は骨で下半分は軟骨です。そして鼻骨の高さは生育環境により強く影響されます。軟骨部は遺伝的要素が強い様です。
中国でも生育環境の格差で、鼻が低い人が存在し得ます。鼻が低い遺伝子がプールされている地域もあるのでしょう。ところで幅は下半分の軟骨が影響します。鼻翼軟骨は鼻尖を形造り、鼻翼の大きさにも影響します。鼻尖が低く大きい人は、鼻翼の幅もある人が多いのですが、比率として1:2が適切とされています。だから両方大きい症例は、両方小さくしなければバランスが崩れます。
鼻根から鼻骨の先端までが低いと、ジャンプ台型(滑り台型?)を呈します。欧米では鞍鼻,saddle noseとも呼びます。この場合高くしないと野暮ったいので、隆鼻術が求められます。ヒアルロン酸や、糸での隆鼻術は永久ではないので、シリコンプロテーシスの適応です。
上に書いた様に白人では鼻が高く、隆鼻術の適応者が数少ないので、シリコンプロテーシスの検討はされていません。かといって黒人に無理をすると、亡くなったマイケルになります。対して黄色人種のアジア人には、隆鼻術が昔からなされてきました。ちなみに戦前からで、当初は象牙が使われました。生体親和性が高いのですが、10年単位で脆くなります。また硬いので危ないです。1960年代にシリコンプロテーシスが開発されました。父は外人顔造りで売れていましたから、本当のアップノーズを造るために台付きL型を使っていました。ところが10年単位で鼻尖に負担がかかり、私が何例も治しました。昨今の風潮としてトラブルケースの話題を広めるので、シリコンプロテーシスは忌避されがちです。でも日本美容外科学会,JSAPSでもJSASでも、I型プロテーシスはコンセンサスを得て最良とされています。現在鼻根から鼻尖より上にはI型シリコンプロテーシスで、鼻尖には耳介軟骨移植が定番となりました。
症例は24歳女性。日本在住の中国人。内眼角間38㎜:角膜中心間58㎜と蒙古襞の拘縮が強い吊り目の眼瞼で目頭Z-形成術の適応は明らかですが、今回は鼻から診ましょう。
鼻根低い。ジャンプ台状態。側面から見て、I型3㎜は必要です。鼻根に糸で牽引するのが適切です。対して鼻尖の幅が23㎜で丸く大きいし、鼻尖の下が平坦です。鼻尖は耳介軟骨移植が適切で、一段目はダイヤモンド型+二段目は剣状で下を伸ばし+三段目は粒でツンっとしましょう。
また、鼻翼は最大幅が43㎜:ベースの幅が38㎜で、つまり張り出しが多いため、外側切除を要します。ですが、鼻尖や鼻背の手術と同時では鼻がバラバラになるので1ヶ月以上後でないと不可能です。その計画を立てましょう。今回まず鼻尖に耳介軟骨移植と鼻背にシリコンプロテーシスを施行して、ブログ提示していきます。引き続き鼻翼縮小術をしますから、その際継続で加えます。
手術直前に確認します。鼻尖の耳介軟骨移植3枚、I型はシャープに、牽引糸は2週間が適切です。
画像は各方向の術前術直後を観ましょう。
術前の鼻背にご覧の様なシリコンプロてーシスを挿入しました。術直後には鼻根から鼻尖の上が高くなっていますが、すでに腫脹で倍加しています。
術前と術直後の鼻尖のクローズアップ像です。術前像で、中央と囲む4点が一段目のダイヤモンド型で,下方の2点が二段目の剣型、中央の点に3段目の粒型を積み重ねるデザインです。術直後にその通り入って、鼻尖が高く小さくなりました。
移植前の耳介軟骨の積み重ね後の画像です。上左図は正面像。上右図は側面像で厚さは合わせて約4㎜です。糸を通してくっ付けています。
下からの画像では鼻尖の形態変化が明らかです。
上列が4方向の術前です。鼻根が低くジャンプ台状態で、向こう側の眼瞼や目が見えます。
下の列は術直後です。鼻根がちゃんとあります。厚さ3.5㎜ですが、腫脹で倍加しています。なお鼻根の黒い物は、正中に固定するためにシリコンを通した糸を皮膚に引き出しています。
術後1週間で鼻柱部は抜糸しました。耳介も抜糸しました。
1週間でも腫脹が軽減して、鼻尖の形が見えてきました。下から見てもツンっとしています。
4方向で診ても、スッと通った鼻筋の延長線上にツンッとした鼻尖が見えます。
術後2週間で鼻孔内の抜糸しました。プロテーシスも移植軟骨も正中にあります。テープ固定は継続します。目的は挿入物の周囲を圧迫して腫脹を軽減させる為と、正中に固定させる為です。
テープで固定していますが、鼻尖は見えます。見えるところが軟骨の入っている部位です。下からの画像で鼻柱の傷跡が色素沈着していますが消えます。鼻尖がツンッと小さくなると鼻翼の大きさが目立ちます。ただしよく観て下さい、鼻翼の一番張り出している部分は43㎜ありますが、顔に付いている折れ返り線の左右の幅は38㎜です。鼻尖が19㎜なら2:1です。まだ鼻尖は測れません。
4方向では綺麗な鼻筋です。鼻尖もツンッと可愛いです。本当のアップノーズです。
というわけで鼻翼縮小術の計画も立てます。その際続けて載せます。
計画通り、鼻翼縮小術へと進みますが、同時に鼻背プロテーシスの経過と鼻尖軟骨移植の経過も診ていきましょう。
まずは鼻背プロテーシス挿入術後および鼻尖に耳介軟骨移植術後1ヶ月の画像を観て下さい。
続けて鼻翼縮小術の画像を提示します。その前に術式の説明です。
何度も書きましたが、鼻翼縮小術は外側の楔状切除と内側で寄せる方法を使い分けなければいけません。私は最近診断法も編み出しました。まず当然正面で両側鼻翼間の最大の幅を測ります。何ミリにしても内眼角間距離と対比します。顔の幅との比率も診てとって、場合によって測ります。単純に小さくしたいなら寄せるのが前提です。次に鼻翼のが頬について折れ返っている線の最大の幅を下方から見て測ります。鼻翼最大幅より2㎜以上小さければその張り出している部分を切る楔状切除が適応です。私の印象では鼻翼縮小術を希望される患者さんのうち、外側楔状切除だけの適応者は3人に一人以下です。対して、多くのいい加減な美容クリニックでは、誰にでも外側切除を進めます。理由は二つ。1、切る方が価格設定が高いから。2、内側で寄せる手術は後戻りが多く、手技的に難しい方法なら後戻りは少ないが、かなりスキル=知識と技術を要し、非形成外科のチェーン店系の医師には不可能である。
私は内側で寄せる鼻翼縮小術の方法として、ダウンタイムと持続性のバランスを相談して埋没法と皮弁法を使い分けてきました。埋没法は糸で両側鼻翼を繋ぎ引き締める方法ですが、必ず後戻りします。糸が皮膚内に喰い込んでいくからです。でもダウンタイムが困らないのでしかも何回かは追加出来て、段々後戻りが減りますから、選ばれる患者さんもいます。皮弁法は形成外科医の独壇上です。そもそも他科の医師は皮弁という用語を知りません。鼻翼の内側に皮膚を弁状に造り両側の鼻孔の間の皮下にトンネルを作って通して両側の皮弁を縫い合わせます。皮弁通しが癒着するので後戻りが少ないのです。ただしトンネルを作る際に剥離するので鼻の下まで腫れます。1週間以上のダウンタイムを要します。
実は先日日本美容外科学会、非形成外科医の集団,JSASに参加しました。そこで新しい方法の講演視て勉強しました。鼻翼縮小術の内側法ですが鼻翼側の縫合時に鼻中隔または骨に通せばずっこけないとの内容でした。皮弁を作らないで剥離もしないので、侵襲が軽いと考えられます。今回の症例では当初、外側切開に埋没法を加える予定でしたが、急遽方針を変えて、内外切開で、真皮縫合を骨に通す方法にしました。患者さんに訊いても後戻りが少ない、内外切開法を選ばれました。
では画像で説明します。
上段でご覧になった様に、鼻尖は高くツンっとさせました。鼻柱が鼻翼よりも上にあるのはまだ治していません。これを下方からの煽り画像で診ると、鼻尖と鼻翼の比率がどう見ても鼻翼が大きいのです。鼻翼:鼻尖=2:1が理想です。
鼻筋も通って、鼻尖も本当のアップノーズですが、鼻翼はあぐら状です。
デザインします。
各方向で観て下さい。外側を三日月型に切除します。鼻翼基部は切除しません。そのまま鼻翼の内側を幅2.5㎜縦に切除します。鼻孔底隆起部も切除します。左右の斜位像で観ると、鼻翼を半周に亘ってデザインしてあります。
下に切除物。
三日月型の外側切除物は断面が楔形です。内側は幅2.5㎜切除しました。
上には術直後の正面像と下面像。下には斜位像。見事に縮小しています。あえて鼻柱の位置は変えていませんが、鼻柱基部が膨らむので、鼻翼との上下位置関係はまともになりました。下面像では鼻尖の幅と鼻翼の幅のバランス=比率が1:2と整っています。
斜位像では流石に腫れが観られます。外側の傷は折れ返り線なので見えなくなります。
鼻背から鼻尖の筋が通って、鼻翼も小さくなってかなりまともな鼻になりました。
そして術後1週間で抜糸します。
残念ながら後戻りは起きました。38㎜です。でもまだ元通りではありません。今後の経過を診ましょう。後戻りが進む様なら、埋没法で支えておいて癒着を待つことも念頭に入れておきます。
もう一つ、鼻尖は綺麗で本当のアップノーズに出来ました。でも本当のアップノーズにする為に鼻尖の上は高くしていません。プロテーシスを下薄にしました。この点を患者さんが指摘されたそうです。私「この方が可愛いです。」何故ならば野暮ったくみっともない鼻だったのが、美人鼻になったら変わりすぎます。その上ブログでは顔面全体を掲示出来ませんが、本症例は顔面の幅があり、中顔面の前面のMalar部がフラットなのに鼻だけが高くては不自然になります。
術後の後戻りに対して埋没法を追加しました。
32㎜まで締めました。
当院では一昨年に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。今回の手術は鼻尖軟骨移植3枚で35万円+消費税で、土台造りのために鼻尖形成をしますが10万円+税です。 I型シリコンプロテーシス挿入による隆鼻術は18万円+消費税です。出演料として20%オフとなります。