口周りの手術は私の得意分野で定番です。何が得意かと言えば、診察で計測して、適切な手術ができる美容的素養を身に着けていること。そして時間を掛けて丁寧に手術する。真皮縫合は18針以上かけて、後戻りはゼロに出来ていますから。先日、他院で上口唇短縮術を受けたら、傷跡に糸の跡がついた患者さんが、私に罹って治せるかと訴えてきました。僅かに切り足せば可能ですが、「私尻拭い屋ではないです!。」と言いたかったのを飲み込んで、「やります。」と言い、さらに「集中して18針以上真皮縫合します!。」と強調しました。まあ私昔から、他院のお直しが多いのは、患者さんが私の美容的素養と技術を知って来院されるからで、多くはブログのお陰です。
美容的素養とは、知識と真摯な診療態度に基づきます。知識は経験も関与しますが、それも一人ひとりに診察時間を掛けられるから使えるのです。当院では毎日、複数名の医師が勤務しています。簡単な治療は他の医師に任せて、私は手術希望の患者さんに診察時間をかけます。また私が多く携わる手術は切開、剥離、縫合が必要ですから、予定時間を充分に用意します。でもその割に意外と高額では無いので、タイパ、コスパが低いのですが、他の医師が稼いでいるので、私は泰然自若と診察及び手術を出来るのです。
何度も言いますが、真皮縫合が重要です。形成外科の基本ですが、他科の医師はその意味を知りません。美容外科の患者さんは、口コミを使いません。SNSは選ぶから口コミではありません。やらせも横行しています。とにかく患者さんは美容治療の既往を明かしたがりません。ですから、手術後も定期的な経過観察を避ける人が多いのです。結果的に、後で傷跡が拡がっても診ていない医師が多いのです。傷跡は後日に幅が拡がります。通常術後2〜3週間後です。縫合創は抜糸する1週間以内には、表皮は癒合していますが、深部のコラーゲンはまだ脆く、緊張のある部位で引っ張られると切れて拡がります。表皮はその浅層で引き伸ばされて、ツルッとしたきめのない表皮の帯ができます。真皮縫合とは真皮を最低3ヶ月は寄せ続けます。その間に真皮層のコラーゲンは強固になります。ですから真皮縫合が全長に渡って為された時点で、用手的に引っ張って緊張をかけてみても隙間ができないくらいに寄せて置かなくてはなりません。この様なことは、形成外科に入局して最初に口を酸っぱく教え込まれます。美容外科に新人から入るか他科から転向してきた医師はこの様な形成外科の基本も教え込まれません。彼等の多くは”真皮縫合”の言葉さえ知らず、”中縫い”と呼びます。中じゃどの層かわかんないだろうが!。
症例は49歳女性。来院されるなり「長いでしょ?。」と言われ即座に測ります。人中部の白唇の縦長は19㎜。鼻翼基部下の白唇縦長22㎜でした。要するに交連(上下赤唇が合わさる線)も下がっています。上顔面62㎜:中顔面64㎜:下顔面65㎜で面長ですが、下が若干長い。上口唇白+赤が26㎜に対して下口唇赤〜頤が39㎜で黄金分割比の5:8よりも上が3㎜長い。下も上がるのを計算して4〜5㎜短縮しましょうとなりました。さらに両側人中溝間が最大13㎜で、弓は両側の頂点だけがあり、口唇結節(上赤唇中央の膨らみ)が下向きですから、両側鼻柱基部を縫合する際に、人中を1.5㎜ずつ寄せたい形です。
口角は挙上を要します。内眼角間34㎜:鼻翼幅36㎜:口唇横径44㎜で、黄金分割比の5:8にするべく、三角関数で計算して45度方向に5㎜挙げるプランです。予定を立てました。
1週間後再診し、6㎜を希望する。私「そうするとdog earを防ぐ為に鼻翼横の創が長くなるので、時間を十五分程度増やさなければならないけれど、その時間取れるかな?。」実際には2時間45分用意します。さらに「ドッグイヤーが生じても許してくれますか?。」と念を押し、「目立つならCO2 LASERで焼きます。」と告げると、ブログで視ていて「知っています。焼き潰すんですよね?。」と容認されました。そうすると同時に、口角も6㎜上げるなら、計算を変えて垂直から35度斜め方向のプランとしました。
手術日にもう一度測りましたら、人中は裾広がりで(画像で判ります)中間部は10㎜です。「いずれにしても幅を狭くしましょう。」となりました。
画像は各方向を経時的に提示します。
正面像の術前とデザイン。術前像で口角が既に下がっています。デザインは上に書いたプラン。
上左図で上白唇短縮術が済み、上右図で口角挙上術が済みました。
手術翌日からLEDを照射しました。でも内出血は起きました。でも腫れは比較的軽く済みました。確かに効きます。上左図は術後1週間です。上右図は術後1ヶ月です。
遂に術後3ヶ月で完成を観たいところです。
肥厚性瘢痕が悪化しました。やはり術後6週間までは起きえるのです。ステロイド局注をしていきます。数回繰り返す間も診察します。
下からは近接画像で術中写真も観ていきましょう。
術前像では人中部が19㎜。鼻翼下が22㎜。交連(上下口唇の当たる線)がへの字で、中央より口角が下です。口角挙上術のデザインは、何故か赤唇縁だけ描かれて写しました。上口唇短縮術のデザインは、プラン通り両側鼻翼間を全て6㎜切除幅とします。
術中と言っても第一段階は、口角のデザインが消えないように、浅くトレースするように切開します。次に上白唇をデザイン通り切開し、皮下脂肪全層まで切除します。上右図は切除物です。
続いて筋肉縫合して、鼻翼基部だけ真皮縫合後、鼻翼の横の層縁を剥離&トリミング後真皮縫合3針します。上左図はその後で、これから上右図の如く両側鼻柱基部を寄せて真皮縫合しました。上の左右の図で違うのは→1、人中の幅と深さが狭く。2、弓が急峻に。3、口唇結節が前向きに。変わっています。
上左図は真皮縫合を全部で18針掛けました。どこにも隙間がありません。引っ張ってみても開きません。上右図は表皮連続縫合後です。この創の線は折れ返り線なので、表皮がずれ易く、隙間はなくても皮膚縫合で合わせる必要があります。
口角はもう一度浅い切開を口輪筋まで切開して、上白唇の三角系は皮下脂肪全層まで切除します。画像が足りないのですが、この後口角が動ける様に、白と赤の内部の口輪筋層を分けます。動かして切除した三角形の頂点に縫合し、筋肉を縫合して、皮膚を縫合します。口角の位置は三角形の頂点にあります。
上左図は術後1週間で抜糸後です。上右図は術後1ヶ月です。口角のステロイド局注後です。左鼻翼の横のドッグイヤーは縮小傾向です。
4方向も診ましょう。
術前画像では、なんとも下顔面が冗長な印象です。初診時に私が一目見て、「長いですね!。」と言ったのはこの印象からです。
上口唇短縮術後に斜位像で鼻翼の横から見ると、やはりドッグイヤーがあります。
術直後は短くなっても、腫脹でボッコリします。
1週間で抜糸しました。本症例はLEDの作用で腫れは60%以上引いていますが、内出血は起きましたから、後1週間は目立ちます。動きがまだ回復していません
上は術後1ヶ月です。
下には遂に術後3ヶ月で完成を観たいと思いました。
肥厚性瘢痕が悪化しましたが、口元の感じはスッキリしてお悦びです。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円+税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。なお術後のLEDは、一回1000円+消費税の特別料金です。