どうも私は、お直し屋としての仕事が増えています。お直しは面倒ですが、それはそれで良いことなのかも知れません。私の啓蒙活動が功を奏しているからです。昨今美容医療がポピュラーになりました。念の為書いておきますが、ポピュラーになったのはIT上の話で、美容整形は戦後から、”美容外科”になってからでも45年の歴史です。昨今美容医療のクリニックも増えましたし、患者さんも積極的です。母集団が増えれば好ましくない結果も増えるのですが、経験値の低い医師が増えたからでもあります。その結果、経験の長い、私の様な医師に助けを求めに来院される患者さんが増えました。私は受け皿として、困っているみなさんの為に頑張ります。
私は産まれながらの美容外科です。私が産まれた直後に父が美容整形医院を開業して、生育時に何気なく仕込まれました。今でも覚えていますが、小学生時に父の車に乗っていて信号で止まったら、突然「おいおい、あそこの横断歩道を歩いている子、美人だぜ!。あーいうのを作りたいな?!。」”僕”は訳が解らず「ふーん??。」と頷きました。今思うと幼少時から美容医学を教育されてきたのです。そして私は大学時代から美容外科学会にも父に同道して参加し、美容医療に”肯定的”に、36年間美容形成外科医として邁進してきました。実は未だに一部の国民は美容医療に”否定”的見解を持っています。要するに、金儲け主義の美容整形屋が闊歩しているのが、最大の原因です。私は美容医療を、結論としては、患者さんに結果を見てもらって、喜んでもらうことを最大の務めと考えて、美容医療を肯定的に、かつ真摯に取り組んでいます。そして一生涯を美容外科医としてまっとうしたいと想っています。
ところが何回か書きましたが、美容医療の斯界には二つの団体があります。姿勢も違います。80年前に戦争に敗けて、おもにUSAのGIにモテて食わせてもらう為に、美容医療が使われました。知識と技術は体系的でなく、材料も非科学的でした。高度成長期に入ると、欧米の大学の美容形成外科Aesthetic Plastic Cosmetic Surgeryに留学して勉強できる様になり、日本でも昭和51年に形成外科、昭和53年に美容外科が標榜科目(法律上広告できる科目名)となりました。ところがその際に、美容形成外科を研修していない団体と、大学病院等で形成外科PRS,Plastic and Reconstructive Surgeryを学んだ医師の団体に分かれて、二つとも日本美容外科学会と称しました。解りやすく言えば、ビジネス系と学術系です。未だに二つ存在していますが、最近では両方の学会に参加して多くの症例に接して勉強する医師が増えてきました。
ただし未だに、多くのチェーン店はビジネスに特化しています。コマーシャリズムに毒されています。3個のS.と2個のT.が代表で、彼らは自ら、「ビジネスに徹している。」と言っています。医師に悖る,もとる態度です。逆に最近、形成外科医が働き場を求めてチェーン店に混じったり、美容外科の経験が浅いのに開業すると、技術はあっても美容的素養に欠ける為に、治療の適応を間違うことが増え始めました。
今回はその二つの問題点を含んでいます。1、今から約15年前に、私が眼瞼下垂症の知識と技術を非形成外科医に講義したのは、不覚でした。同時にボトックスを本邦に導入したのも私です。ビジネス系非形成外科医がボトックスを使う際には、料金体系的に”ぼったくる”から、医原性前葉性眼瞼下垂症を引き起こします。頻発しています。2、患者さんは幸運でした。目頭切開術は蒙古襞の切除をしてはいけません。それなのに非形成外科医は、知性が低いので間違えます。蒙古襞の切除は、外人顔になりたい人以外には禁忌です。蒙古襞は拘縮していますが、個体差があります。二重瞼の人の標準的な蒙古襞に変えるのが、目頭[Z-]形成術です。Z-形成術は皮弁形成法ですから、その知識と技術は形成外科の専門分野です。皮弁を入れ替えるのには経験を要するからです。かと言って目頭形成術は、美容医学の素養を備えなければ出来ません。
症例は43歳女性。患者さんいきなり、自分の顔を指差して、「これどうにかなりません?。」〇〇院でボトックス打ったら眉が全く動かなくなって、重瞼が狭くなって開きにくいと訴えます。私「確かに!。」「困りましたね。でも切れるのを待つのが一般的です。」と説明すると、患者さん「二重を変えてなんとか出来ませんか・。」と。私心の中で”それは出来ますよ。拡げてもおかしくない程度に”と考え、診察を進めます。
そこでここからは、カルテを転記して病歴を説明します。先天性には一重瞼だったのですが、20年前から重瞼術埋没法を複数回受けています。外れやすい模様です。でも二重瞼を保って来ました。糸は8本ずつだそうです。1点出てゴロゴロするのですが、施行医は抜いてくれないそうです。まずその場で翻転すると、糸の断端が1箇所見えました。すぐ抜けました。珍しく切れていました。2週間前に糸リフトを受けましたが、1箇所エクボ状に引っ掛かっているのも気になります。その際額にボトックス注射も受けましたが、量が多かった模様で、前頭筋が全く動きません。前医に訴えましたが、眼瞼下垂の勢にされて済まされたそうです。LF,levator function挙筋滑動距離は13㎜と、眼瞼挙筋は先天的に強くはないが、正常範囲です。後天的な挙筋の進展も生じていません。医原性でもありません。前葉性(*脚注1)です。MT法(*脚注2)で広げておきましょう。と言いながらブジーでシミュレーションします。患者さんの希望に沿ったラインが見出せました。
さらに診ると、蒙古襞の拘縮=突っ張り吊り目=きつい目です。「目近いけれど、蒙古襞目立ちますね?。」と指摘すると、患者さん「そうなんです。吊り目で、きつい目で、インタネット視て、なんとかなるか聴いてみたくて、先生のブログも観ました。」と嬉しいことをおっしゃいます。私は我が意を得たりと身を乗り出し、測り始めます。眼裂横径25㎜:内眼角間(二重瞼の平均値=32㎜)32㎜:角膜中心間(女性の平均値=58㎜)56㎜でも蒙古襞は拘縮しています。眼球が近いので、蒙古襞が被さっていても目の間が離れていないタイプです。頬骨最大幅138㎜:下顎角間105㎜と顔面がやや大きく、目尻の外に余白があるので、目尻切開も適応ですが、「蒙古襞の拘縮解除が優先です。何故なら今回同時に出来ます。一辺3㎜のZ-形成術なら2㎜近づくだけなのでこの数字でも可能です。」と診断しました。
3日後に確認のため再来しました。前医で聴いて来たそうです。ボトックスは10IU,International Unitも注射したそうで、どうみても多いです。私は多くても3IU,通常2.25IUです。確かにこの量では、おでこが動くはずはありません。そして更に患者さんから、ミューラー筋は損傷しないか訊かれました。この方法では細い糸(8-0糸は一般的に一番細い)を通すだけなので傷めません。ミューラー筋を支配する三叉神経も傷めません。少なくとも私は医原性眼瞼下垂を引き起こした経験はないと説明しました。そしてついでに、私が用手的に無理やり眉を挙げてシミュレーションしてみると、ラインは変えないでも眉が動くようになったら丁度良い二重まぶたなのですが、0.5㎜上でブジーでシミュレーションしても、患者さん本人は鏡を見ながら「綺麗!。」と感嘆していました。ところで糸リフトの引っ掛かりは、手術当日に口腔内と挟んで外してみることを提案しました。
当日もう一度シミュレーションして、ラインは0.5㎜上げることを確認しました。目頭は一辺3㎜のZ-形成術ですが、ブログで見て理解されていました。「使い回しの図も視ましたか?。」と訊くと「視ました。理解しています。」とのことで、私も良い結果が見えます。
画像は術前から観ましょう。
ご覧の様に額はツルッツルです。眉は閉瞼時と開瞼時が同じ位置です。吊り目の原因は蒙古襞です
近接画像では蒙古襞の拘縮が目立ちます。生来一重瞼だからです。
上左図はデザインです。重瞼(二重瞼を重瞼と呼びます。人間【ホモサピエンス】は二重瞼がデフォルト)のデザインは開瞼時は見えません。既存のラインの0.5㎜上としました。
上右図はいつもの使い回しの机上の図です。下の左眼瞼の図の、目頭に描いてあるZ型のデザインが、机上の図の左側の線です。術直後の図の傷の線は机上の図の右の形です。
蒙古襞の最下点から稜線にそってab線を書きます。後は机上の図の通りデザインします。
今回二つの手術時間中に術直後は腫脹します。
Z-形成術は、デザイン通りに皮膚眼輪筋を切開して、内眼角靭帯(本来は腱)を露出して、二つの三角形の皮弁を入れ替えて、目頭の角を動かして、縫合します。縫合線は下の如くZ字がひっくり返って、蒙古襞が消失します。
術後1週間で抜糸しました。
診察室に入るなり、「きれいに治して下さいましたね。さすがです。」とお褒めに預かりました。続いて「重瞼は?、ちょっとまだ差が?、腫れているんですよね?。」と訊かれ私、座った位置から引いて遠目に診ると、若干の差。今度は近づいて「閉じて診せて下さい。」と診ると、「確かに腫れに差がありますね。」と迷います。線の高さは同行でした。さてこの場で画像を診ると、その様子です。
さらにご覧の様に内出血は黄色くなって拡がってきたそうです。「そういうものです。」「黄色くなったら1週間で吸収されますよ。でもまだ一部は紫ですから時間がかかるかも知れません。」と通常のコースであることを説明しました。
上左図の前額部を見ると、まだピカピカで前頭筋は動いていません。でも重瞼幅を広げてきれいです。くっきりして、キリッとして、目の窓とのバランスも適切です。
近接画像で目頭を診ると、確かに蒙古襞の拘縮(縦の突っ張り)は解消しています。私しつこく「ブログ視たんですよね?。図も!。」「机上の図をまた使い回しします。」と、こちらの都合の話にも「ええ〜。」と患者さんは聴いて下さる。立て続けに私「その通りになっていますよね?。」「ええ〜、きれいです。」とお答え。私「寄っていませんよね?。」「ええ〜。」と患者さんは答えられ、私「似合っています。」と返します。でもまだ内出血が残り、傷痕の経過は不確定です。肥厚性瘢痕が起きるかは、術後3週間がカギです。ですから次回術後3週間に診せてくださることをお願いしています。
こうして術後3週間で魅せて下さいました。
ご覧の様にまだ前頭筋は収縮不能です。やはり半年罹りそうです。BTXのメカニズム(*脚注3)を説明して差し上げました。腫脹が軽快して、重瞼が予定の幅になったのですが、画像の通り瞼縁に掛かっていません。よく開いています。
でもそして、予期しない副?作用が起きました。頭痛、肩こりです。私考え込みます。前頭筋を使わないで前葉を埋没法で引き上げたので、目が開易くはなったそうです。術前には前方から上方が見られる様になったそうで、それはそれでよかったのですが、今まで見ないでいた前から上を見る際には眼瞼挙筋も使う必要があるため、強く収縮する際には頭痛を生じます。私今これを書きながら、上方視時に挙筋を使ってみました。なんとなく筋の収縮を痛みとも感じられます。
近接画像で見つめてもらうと吸い込まれそうな目力です。魅力的ではあります。目頭の位置と蒙古襞の拘縮がないので、キリッとしています。目頭の下の傷跡はどんどん平坦下してきました。肥厚性瘢痕は術後3〜6週間で発生します。このまま解消しそうです。念の為術後6週間で診せてもらいます。予防的にリザベンという内服も処方しました。
下の段の術後6週間の画像は、私が夏休みで診ることは出来ませんでしたが、翌週魅せてくださいました。コメントも頂きました。
まだボトックスは効いています。ほとんど動きません。でもこの二重幅なら被さって鬱陶しくないです。まだ2ヶ月です。私「動かなくてもこの二重なら綺麗ですね。多分動く様になってもそんなに挙げないんじゃないでしょうかね?。」と軽口を吐くも「それじゃあ無表情で魅力が半減しますね。」と矛盾した言に呆れられました。
また蒙古襞の拘縮を解除したお陰で、吊り目でも無くなった(こちらが本題)とお悦びです。きつくて野暮ったい感じから、キリッとした美人に変わって魅力的です。
近接画像で目頭Z-形成術後の傷跡を診ると、肥厚性瘢痕は軽快が進んでます。上は先週の画像ですが、この1週間でもさらに目立たなくなっているそうです。「6週間がヤマです。」と念を押して、「リザベンのお陰でしょうかね?。」と言ったらあまり飲んでいないそうです。”な〜んだ!。この患者さんは治癒力が高いんだ”とホッとして、「リザベン内服もケナコルト局注も不要ですね。」と告げて次回診ることになりました。多分他部位の相談も受けるでしょう。本症例の患者さんはなんか魅力的で、引き続き美容医療に携わるのは楽しみです。
術後3ヶ月で診察します。完成と言いたいところですが・・。まず近接画像を診ます。
傷跡は目立たなくなりました。肥厚性瘢痕は軽快しました。よく見ると点状の陥凹はあります。これは下の辺のドッグイヤーの最下点です。クローズアップでしか見えません。下の両側眼瞼部像を観ても見えないでしょう?!。
いやー!?、点状陥凹は黒く見えますかね?。患者さんは認識しています。そりゃあそうです。だって肥厚性瘢痕の間は見え見えだったのを覚えていますから。いつかは見えなくなります。
開瞼の程度と重瞼の幅はお気に入り頂けました。まだ前頭筋はは弱くしか動きません。そりゃそうです。本年月に他院で多量にボトックス打たれたので、神経金接合部が再生して動く様になるのに最低6ヶ月は要するでしょう。でも重瞼を拡げたから目は開き易くなっていてお喜びです。いや、その点は術前に患者さんが知っていて求めてきた方向になったということです。
ところが!、実は今回診た瞬間に別の問題点を指摘されました。下眼瞼です。「術後目袋が厚くなったのですよ。」私慌てて術前の画像を見ます。「確かに増えたかも。」「でしょう?。」と訴えられても「私そう言われた経験はないんで・・。」では済まないわけで、考えてみます。「目頭で下眼瞼も引き上げられていたのが、外したら落ちたのかな?。」「多量のボトックスの勢で、眼瞼を開くのに強く力を入れていたのが力が抜けたのですかね?、上眼瞼を挙げると下眼瞼も挙がるのです。」説明に窮します。多分松尾理論で説明できるのですが、面倒な話なので説明出来ません。「いずれにしても目袋とその下の溝が診えます。」と言うと患者さん「治せます?。」と訊かれるので、「色々ありますが、PRPが綺麗です。」というなり患者さんは「Hamraとか脂肪除去とかはどうですか?。」と訊かれます。私「綺麗なのはPRPでしょう。永久でないといっても、脂肪除去も再発します。Hamraは適応でないでしょう。Malarがフラット傾向だから。」と説明が始まり、キリがなくなったので「原因はもう少し考えさせてください。」「またいらっしゃってくださいよ、下眼瞼はその時検討しましょう。」と、お願い口調になりました。もしかして患者さんは他にも聞きにいくかも知れませんが、「私〇〇さんを診ていきたいです。」と告げてまたの来院を期待することにしました。「近々お待ちしています。」
その後何回か、他の先生とディスカッションしました。誰も経験が無い様ですが、報告はあるそうです。学会オタクの私としては手抜かりでした。やはり松尾理論が説明になっている様です。さすがに目頭形成の影響ではないとされました。本症例はボトックスの過多が原因の一つなら、切れるのを待って後診断を経てから、検討してもいいのかも知れません。いずれにしてもまた診たい症例です。
脚注の説明は更新時に書き足しています。
脚注1:前葉性と後葉性、先天性と後天性:美容”医療”ですから、診断が必要です。治療法の選択は診断に基づきます。眼瞼下垂症を私は主に上記の様に鑑別します。前葉性とは、眼瞼の皮膚と眼輪筋が原因であることです。眼瞼の皮膚は薄く、毎日瞬き(開閉)して動き続けているので、加齢による進展が早いのです。生来一重瞼で被さっている場合でも前葉性眼瞼下垂です。後葉性とは、眼瞼の後方の組織である眼瞼挙筋の働きを言います。筋の収縮力の大小や、瞼板(眼瞼の縁)への筋力の伝達の良否が影響します。先天性と後天性は病歴の聴取と検査で鑑別します。
二つの要素を組み合わせて分けると、4つの病態に分かれます。
1、先天性前葉性眼瞼下垂症とは一重瞼のことです。上に書いた様に人間は本来二重瞼でしたが、約2万年前に東アジアで遺伝子が変異して一重瞼を発現して、蔓延しました。東アジア人とは主に中国、朝鮮、日本です。私は異常と捉えていますから、眼瞼下垂症の手術適応と考えています。2、後天性前葉生眼瞼下垂症とは、加齢に拠り皮膚と眼輪筋が伸展した状態です。二重瞼の人はラインは変えないで上の伸びた皮膚を切除して元に戻します。一重瞼の人は生来被さっているので進行が早いです。通常は狭くても二重瞼(上に書いた様に自然状態は二重瞼)を設定して、上の皮膚を切除します。概ね、年齢÷10㎜幅の切除が標準です。ちなみに進展に対しては眉下切除でも対処できます。3、先天性後葉性眼瞼下垂症は生来眼瞼挙筋の筋力が弱いミオパチーです。生下時に見つけられて視力の発達のためには幼少時に治されるべきですが、現代でも地方で医療レベルが低い地域では放置され、当院にもたまに来院されます。目を閉じた位置から上方視まで動く距離が12㎜以下なら先天性後葉性眼瞼下垂症と診断します。手術法の適応が難しいので形成外科のベテランに任せるべきです。4、後天性後葉性眼瞼下垂症は挙筋の筋力は正常範囲でも眼瞼挙筋腱膜が伸びてしまった状態です。加齢でも起きますし、瞼を擦る癖でも起きますが、コンタクトレンズ装用者は進行が早く、特にハードでは5年以内に自覚されます。伸びた腱膜を縫い縮めて瞼板に縫い付けて、力が伝わる様にすれば、元の開きに戻せます。目薬でフェニレフリンテストすると筋力が強化されぱっちりしますからシミュレーションになります。
脚注2:MT法とLT法:上記で眼瞼下垂を疾患と捉えていますが、手術時には切開法でなければ保険診療は不可と厚労省から指示されています。そして私達は前葉性でも後葉性でも、非切開法も駆使しています。そこはダウンタイムの差が大きいからです。MT法とLT法はともに非切開法で糸を埋没します。
MT法は、いわゆる重瞼術埋没法の一種ですが、眼瞼結膜側は瞼板でなく挙筋を通すからMuscleと皮膚を繋げる=タッキング,tackingするので頭文字でMT法と称しています。自然な二重は瞼板の上縁の高さの挙筋から枝分かれしたコラーゲン繊維が皮膚の重瞼線に繋がっているので”遊び”がありますから、挙筋法が自然です。
LT法は眼瞼結膜側から、挙筋腱膜まで通して縦に縫縮して、瞼板にも掛けることで後天性後葉性眼瞼下垂を修復する方法です。その糸を結んでからMT法の様に皮膚側に出します。挙筋,Levatorを繋げるTackingする頭文字でLT法と称しています。切開法の際にも、あくまでも後天性後葉性に対してですが、多くの症例に対して、LT法で挙筋を強化してから、重瞼を作成または再建します。
脚注3:ボトックスは単なるフィラーではありません。フィラーとはFillerで充填材です。ヒアルロン酸やコラーゲン等シワや窪みを埋める注入療法です。ボトックスは作用が全く違います。ボトックスはボツリヌス毒を薬用に使う際の薬剤名です。ボツリヌス菌は土壌内など無酸素環境に存在するありふれた菌ですが、毒を産生します。動物の運動神経が筋に挿入される神経筋接合部に挟まって電気が伝わらなくする作用で、その筋は脳が命令しても動かなくなります。私はいつも、「コンセントを抜いた状態みたい。」と説明します。体重1kg当たり1μgを摂食すると呼吸筋も麻痺して死亡します。各国で細菌兵器として開発しようとしましたが、上記の様に熱と酸素に弱いので、巧く抽出できませんでした。
局所注射では、致死量の3000分の一を一単位とします。痙攣に対する体幹や四肢でも最大200単位までしか使いませんから、全身副作用の報告はありません。私は顔面には最多で20単位、脇や咬筋で40単位使います。コツは、要らない表情筋の動きを弱めるためにちゃんと狙った筋に入れることです。表情として、眉を上げる前頭筋はびっくり顔に見せて、皺を作るので微量打てばシワはできにくくなります。眉を顰める表情の皺眉筋や嫌な顔をするときの鼻根筋、口角を下げて口を「へ」の字にする表情も嫌らしいので、口角下制筋や、口を尖らせる際におとがいに梅干しを作るおとがい筋も、嫌な表情なので止めることがあります。あとは量の問題で、今私が書いた2倍以上の量だと無表情になり困ります。
さてボトックスは神経筋接合部をブロックしたら挟まったままで、電気が通じなくなった末梢の神経は数週間で退化します。でも、元気に生きている動物は神経を枝分かれさせて、別の部位に神経筋接合部を造ります。こうしてボトックスは効果が切れます。再生に約6ヶ月かかります。微量だと筋の一部にしか効きませんが、筋は一部でも動きが落ちるとシワは寄せにくくなるから適度な効果で喜ばれますが、再生も早い傾向になります。私が使う量では、例えば眉間で3〜4ヶ月となります。でもその分安く出来ますから、多くの患者さんが定期的にリピートされます。
ちなみに日本でもボツリヌス筋毒を開発していました。第二次大戦下には成功しませんでした。悪い宗教団体も失敗しました。やはりこれら兵器なら、USAかUSAです。私は21世紀に入ってUKで発売された製剤を本邦初に個人輸入した一人でした。その後USAのアラガン社が発売した製剤は本邦でも認可されましたから、美容医療機関のほとんど全てが使っています。でも多量を使う奴が居て、困ったことが頻発しています。私は困ったことはないのですが、表情筋が強い人には効果が少ないケースもあります。ただしこれは、言ってみれば、「過ぎたるは及ばざるごとし!。」です。その際は足しますから・・。
当院では、厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。 医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。
症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
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