2024 . 7 . 5

今回は2vectorこめかみリフト。Malar,ゴルゴ線方向とJowl,Buttress方向へ。時間を用意して長くなくても超広範囲剥離で、ドッグイヤー修正も必要。

こめかみリフトの3部作が載っています。そして遂に、今回は複数方向への剥離操作が加わりました。リフト手術は切開線の長さでフルフェイスリフトとかミニリフトとか呼びます。当院で定番のMACS lift (私はJowl liftと呼んでいます)は切開線の長さが中ぐらいです。主に下顔面を目的にします。結果的にこめかみ部からの中顔面へのリフト効果を追加したくなります。ただし剥離方向で中顔面と下顔面を使い分けることが出来ます。

でも患者さんは、「何故バラバラにリフト手術を執り行うのか?。」と訝るでしょう。

二つのポイントがあります。一つは、長い切開のリフト手術では、全身麻酔が必要だからです。全身麻酔や静脈麻酔は設備と道具を要します。当院にも備えていますが、専門に麻酔に携わる人が必要です。しかし当院では、通常は3時間45分の手術時間しか用意出来ないので、手術時間の特別枠が必要になります。だから局麻でJowl lift を先行して、まずは一段階目を済ましたいのです。もう一つは、私の体力の問題ですかね?。私の先輩で、有名なリフト医であるDr.Ut.は、未だに靭帯法を施行しているそうです。最低5時間、通常8時間は要するとの事です。先日学会で会って訊いたら、「もうこの年齢だと、月に二例は無理で、一例しかやっていない。」と落ち込んでいました。私影で”だって500万円単位でしょう?、いいじゃん!”と揶揄していました。

また彼と十何年か前に話した際には「広範囲皮下剥離リフトは、SMAS法よりずっと後戻りが少なくて、靭帯法の次に長持ちするぜ!。」と教えてくれました。その後私にとって広範囲剥離リフトは定番化となった次第です。確かに効果的です。ちなみに64歳の私でも、毎週2例は出来ます。医師は研鑽し経験を積むと、難しい手術も出来る様になるのですが、齢を重ねると体力が落ちるので、通常は沢山の手術症例はこなせなくなり残念です。でも私!、頑張ります。

こめかみリフトはその点で、局所麻酔手術が定式です。切開と剥離範囲が少ないからです。ただしむしろ、切開線が3〜4㎝で剥離範囲を長く幅広くすると、トンネル掘りというか、視野が狭くて、剥離操作はブラインドですからアシスタントが重要となります。その点で当院のAssistantのNs.は練度が高いので、私もサクサク進められます。さらに止血操作は、私が蹲踞(スクワット)してトンネル内を覗き込んでしなければならず、かなり体力を要します。でも縫合が短いので、手術時間は3時間前後ですから、いつでも手術枠が取れます。

だからこめかみリフトは皆さん、二次的に承諾して下さるのでした。また、Jowl Liftを目的としたMACS Liftの切開と、こめかみリフトの切開は繋げないので、もみあげ部の損傷と移動が起きません。もみあげの移動は意外と目立ち、バレバレのリフト顔貌の原因になります。まあ別の方法として、耳介上部の有髪部内に切り上げれば、もみあげは損傷しないのですが移動はしますし、髪の中で引き上げると、こめかみの生え際が後方に移動して、顔が大きくなります。ですから私は今は、生え際部で前方の皮膚を切除して、むしろ顔を小さく見せます。顔の大きさは端から前から見て、生え際から目尻の距離で判断されるのです。

この様にこめかみリフトを何回に分けて施行して来たら、一遍にいろいろな方向に剥離して、二つ以上の方向への効果を求める希望を持つ患者さんが登場しました。大阪院では手術時間が多めに設定出来ますから、頑張ってやってみます。題名にある様に2Vecorこめかみリフトとします。では画像を提示しながら説明します。

症例は48歳女性。海を越えて遠方から来院。診察室に入るといきなり「フルフェイスリフトはまだ早いと思います。他院でもそう云われました。」と仰り、「そこで森川先生のブログを視て、こめかみリフトをして下さるなら、先生に相談してみようと思いました。」との要請を訴えます。もちろん私”そこまで言ってくれて嬉しい”と想いながら、”なんで他ではやってくれない?。でもこの顔ならJowl liftも効くのに?!”との疑問が頭に浮かびます。

思いながら早速、まず遠目に診て、「Jowlまで挙げるなら、Jowl Liftが適していますよ。」「だってここ多いもん。」と近寄り、Jowlを指差します。「耳前部から耳後部までだけの切開で、ここまで剥離すれば、フルフェイスリフトではなくてもJowlが取れるのですよ。」とJowlを引き上げてみる。すると患者さん「フルフェイスリフトは10年単位くらい後でいいです。」と間違う。

次いで「こめかみリフトで、下から上に挙げた症例がブログに載っていましたよね?。」としっかりブログを視ていました。私「でもそれ、こめかみリフトの複数回症例です。いきなり下方だけ剥離した症例はありません。」と誤解を指摘します。患者さん「でもフルフェイスリフトではなくって、こめかみリフトで出来ませんか?。」と段々堂々巡りの診察になりました。

その話を一瞬考えて私、”解った。フルフェイスリフトの意味を理解していない。テキトーな奴らのテキトーな宣伝に踊らされているな”と膝を打ちながら、”こめかみから一遍にやってみるか?!”と奮起してもまだ考え込みます。少し間を置いてから「では、こめかみの切開から、Malar方向へ頬骨隆起部まで剥離して、浅いゴルゴ線も挙げるのと、下方はButtress方向へ剥離して、Jowlへの引き上げ力を与えるのを組み合わせて、同時にやりますか?。」と訊き、両手でシミュレーションしながら、念を押す様に「こうやってみますか?。」と、逆に心許なく尋ねました。患者さんは本当に理解したのでしょうか?。でも即座に「お願いします。」と、期待されました。

手術当日の朝思いついて、初診時には口から出なかった術式名を命名しました。名付けて【2Vector こめかみ Lift】としました。患者さんにも伝えました。

この手術では変化が大きいので、画像は日時を追って観ましょう。

上左図は術前像。中下顔面がなんとなく弛んでいます。Malarが平板でゴルゴ線が浅くても見えます。上右図はデザイン後ですが、正面像では剥離範囲がわからないかと思います。

上二葉は両側斜位像。下二葉は両側面像。説明のために、先走って左顔面に剥離範囲を描いてしまいました。MalarからJowlを挙げたい顔貌です。

下には術中画像。

上下にデザイン後の画像。上二葉は剥離範囲だけ描いています。前方はMalar部はゴルゴ線まで、下方はJowlの上までと広く幅も長さも多く、瓢箪型とも言える。

上二葉では切開線も描きました。こめかみ生え際に、眉尻の後部より1㎝上から3㎝の切開ですが、最上部からドッグイヤー予防のために前に曲げて1㎝の切開を加えます。何故かは下に。

上左図は切開後剥離した皮下を見せています。これまでの症例に比べて広いから筋鉤が二本入り、中がよく見えます。でも深いから操作は難しいのですよ。

上右図では皮膚を戻して、切開線上に牽引方向を描きました。これが2Vectorです。下方からは上向に、曲がった角を横向きに引きます。ドッグイヤーを減らしながらも、しっかり挙げられます。

今回は手間と時間が掛かったので、術中画像はこれだけですが、切除皮膚を載せます。切除皮膚も曲がっています。上右図は術直後の正面像ですが、挙がっていても腫れています。さすがにゴルゴ線は見えなくなり、Jowlも見られません。

術直後の、上二葉は両側斜位像、下二葉は両側面像。腫れていてもピーンと張り引き上がっています。白くなったのは剥離範囲です。局所麻酔薬には血管収縮剤を添加しているからです。

側面像では、術前と比べて、弛み感が消失しているのが明らかです。

縫合創の線は切開の通り上で曲げて有髪部を越えていますが、丁寧に縫合しますから見えなくなります。

もう一度左右の切除皮膚を提示します。上右図は翌日の正面像ですが、切除皮膚分こめかみが痩せています。でもその下は腫れて顔の幅が増大しています。

翌日の、上が両側斜位像、下が両側面像。実は術直後は腫れて目尻が横に引っ張られて目が閉じにくくなって、どうなるかと不安でしたが、翌日には治っています。早く治ってよかったですね。

下には術後1週間の画像群です。

もちろんまだ腫れていますが、左右は同等です。この際の診察時には患者さん「2Vectorリフトというのですね。」と理解されて、私に伝えてくれて、ニコニコされていました。患者さん自分の顔を観て、「Jowlまで引き上がっています。」「目の傾きも垂れ目から水平になってちょうど良いです。」と言ってくださいました。

さて、両側斜位像と両側面像ですが、実は左側の方が膨らんでいました。触れるとFluctation,波動があり、血腫を疑いました。直ちに皮膚を穿刺して、生理食塩水を注入して溶かして、押し出してみたら、血液が微量排出されて、平坦化したのです。上下の画像はその後ですから、左右対称的です。血腫の跡は内出血が露見されますが吸収されます。

術後48時間までは内出血しえるのですが、血腫を生じるかは運です。こうして早く排出すれば再貯留はまれで、早く治ります。

術直後には切開線に血痂がついて目立つのですが、術後1週間で抜糸したら赤い線だけになります。数週間後には白い線になります。私が密に真皮縫合したので幅がません。そうすれば目立たなくなります。

左側の穿刺部ですが、創の直前に針で刺した跡にテープを貼りました。なお剥離腔の皮膚は、しばらく無知覚なので、穿刺や切開しても無痛です。

術後2週間でも魅せて下さいました。まだ腫脹は残りますが、雰囲気的に中下顔面が引き上がってお喜びです。患者さん「こちらに伺ってよかったです。」と言って下さいます。有難いお言葉です。

両側斜位像と両側面像です。血腫は再貯留していませんが、反応で硬結が軽度触れます。傷跡の肥厚性瘢痕やケロイドと同様に、3〜6週間がピークでしょうが、術後1ヶ月で軟化してこないなら、ステロイド注入で早く治せます。

傷跡そのものは、術後2週間にしては目立たなくなっています。その部分は個体差があり、本症例の患者さんは早い方です。

下列は術後1ヶ月です。

ご覧の通り、両側頬骨隆起部に硬結を生じました。血腫は吸引しましたが、瘢痕化する時期です。剥離腔の最前部から瘢痕性に癒着してきます。その瘢痕が多く析出する人がいらっしゃいます。3〜6週間でコラーゲンは増えます。タイプⅢという硬い密なコラーゲンが癒着を造るのですが、量は個体差があります。多い人はこの様に膨隆します。

斜位像では判りにくいのですが・・↓、あります。

側面像では膨隆が見られます。瘢痕のコラーゲンタイプⅢは、約3ヶ月でコラーゲンタイプⅠに置き換わります。タイプⅠは柔らかく量も減ります。その機序をリモデリング,Remodellingと言います。モデルは作る、Reは直すです。ですから3ヶ月待てば置き換わり始めますが、量が多いと余計に時間がかかるかも知れないので、「減らしておきましょう。」となりました。ステロイドの局注で量が減ります。実は左側面像は注入後です。白くなったのが注入部です。マッサージでさらに減らして下さいとお願いしました。

傷跡はまだ赤いのですが。幅は出ていません。白くなれば見えなくなります。

次回術後2ヶ月で減り具合を見せてもらう様にお願いしました。その際も画像をお願いします。🙇こうして、術後2ヶ月で他の治療も進めていきますが・・。

前回の注射の効果で瘢痕が消失しました。

完成と言えます。患者さんも満足されています。

創跡も発赤が消えて来ました。幅はありません。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の提示です。こめかみリフトは40万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。