リフト目的の症例が続きます。フェイス リフト,Face Liftとは、読んで字の如く、顔を持ち上げることですが、顔を持って持ち上げても意味がないので、顔の組織のどこかの一部を、どこかに向かって持ち上げます。具体的に皮下リフトでは、どこかを切開して、持ち上げたい部分の皮膚、軟部組織を剥離(ポケット状に剥がすこと)して、切開線の皮膚をほぼ上に引っ張り上げてみて、ポケット状にした皮膚、軟部組織に張りを造ると共に、ポケットの先端まで引き上げる作業です。引っ張り挙げて余った皮膚、軟部組織は切除して、上の頭側の皮膚と縫合して支えます。
ここで手術のポイントを三つ述べます。
まずどこを持ち上げたいのか?:これはポケットの先端です。現在私は、ブログにもある様にJowl(マリオネットラインの外のたるみ)か、Malar(目の下=鼻の横)を主に狙います。Malarまで剥離するとゴルゴ線を消せます。今回はJowl目的です。下顎縁のカーブを綺麗に再現したいと求められました。でも下に書く切開線は使い分けます。
次にどこへ縫い付けるか?:基本的に、有髪部の生え際が目立たない線です。耳介の前後もです。どちらも割と硬い部位です。頭の皮膚は数ミリしか動きませんよね、耳介には、中に軟骨があるので動きにくいのです。つまり顔に一体化しているので、引き上げた皮膚を支えられます。ここで重要なのは折角硬い部位に縫い付けるのですから、強固に支えて、しかも持続性を保ちたいです。それには!→真皮縫合の質に尽きます。美容”形成”外科医の出番です。この手技は!、全くもって”形成外科”医療の研鑽が左右します。間違いなく、大手の(ついに私もこの言葉を吐いてしまいました)チェーン店に居るビジネス的美容整形医師には出来ません。だから彼らはこの様な手術は出来ませんし、したら引き上げがすぐ戻ってトラブります。
もう一つはどの層でポケットを造るか?です:かつては、筋膜層,SMAS法が席巻していました。1974年から開発された方法です。でもこの10年程前から、SMASは顔の前方の一番持ち上げたい部分にはないことが判り、顔面神経損傷の懸念があるのに効果が足りないので、あまり意味がないと提唱されてきました。この結果現代は皮下剥離が見直されてきています。また靭帯法と言って、骨と皮膚との繋がりを付け替える方法は、あまりに手間と時間(10時間単位)が掛かるため、本邦ではUt.先生しか行いません。さらに、剥離層と共に剥離範囲が重要です。狙った部位=持ち上げたい部分までポケットを造れば、その先端まで引き上げられ、ポケットの中の裏打ちの皮膚とベースの脂肪層がその位置で癒着するため、持続性に繋がります。
との様な訳で、今回はJowlを挙げたいというか下顎縁の骨のカーブが綺麗な面長で細面の症例を、こめかみからの下方向への剥離で引き上げます。標的からして耳介前後の切開からが常識でしたが、この1年間ほど前から、私はこめかみから下方を挙げる広(長)範囲剥離リフトが定番化しています。侵襲が少なく、手術時間も2/3程度で済みます。症例に依りますが、予め用手的シミュレーションで効果が予想できます。剥離範囲は症例によって使い分けます。
症例は48歳女性。かれこれ10年前から、私が眼瞼の診療を繰り返してきた患者さんです。数回の手術で現在は良好な状態を保っています。毎年経過診ていましたが、一昨年(2023年10月)にはJowlのたるみを気にされて、器械での治療を訊かれました。私がJowl liftをお薦めしたら、その際は見合わせて、何もしませんでした。
昨年(2024年10月)に再来されました。今度はリフトの相談です。ブログも覧てくれていたそうです。患者さんがこめかみリフトを希望されました。まず画像で見て取れる様に、面長です。なのに、Jowlが側方に張り出しています。この場合従来私は、定型的にはJowl liftをお薦めしてきました。ですが、皆さんブログでご覧になってご存じの様に、こめかみLiftで下方に剥離して下から上へ引き上げると効果が得られると経験上判ってきました。しかも中顔面にも効果が得られるので、一石二鳥と言えます。早速用手的シミュレーションしてみて、頬骨弓よりも下方の頬コケ部分まで、いつも書いているLateral Buttressまで剥離して、そこに手を当てて引き上げてみたら、患者さん「これこれ。」と言って直ぐに予定を立てたくなったのです。
術直前に確認しました。目尻は挙げない。Jowlを目標に下へ顔面側方,Buttressを剥離する。用手的シミュレーションでは2㎝挙げられるでしょう。切開はこめかみ生え際を眉尻の真後ろから下に約3㎝です。ずらしていって最上部は前に切開して余った皮膚を切除します。患者さんにご納得いただき、楽しみにしてもらいます。この手術はJowl liftに比べて侵襲が半分程度なので、術後腫脹や内出血が少なく、結果が早く見えます。ダウンタイムも短いでしょう。
画像は各方向を経時的に比較して覧ましょう。まずは正面像から。
上左図が術前、上右図が術直後です。
翌々日診ました。腫脹はピークなのですが軽度でした。たるみが挙がったのは明らかで患者さんも認識できました。内出血は診られません。
術後1週間で抜糸に来院されました。腫脹はごく軽度です。内出血は黄色くうっすら診られます。この程度なら外出して社会復帰が可能です。Jowlは側方に張り出していません。下顎縁のカーブが面長の美しい骨格のまま綺麗に再現されました。ところが・・。下段の4方向をご覧下さい。
上二葉は術前の斜位像。下顎縁の上にJowlが溜まっていて、しかもその上がコケています。
上二葉は術直後の斜位像。下顎縁の上、下顎骨部が平坦化して、骨のカーブが綺麗に投影されています。既に内出血は紫色に透見できます。
上二葉は術前の側面像。下顎縁の上に凸、その上に凹となっています。
上二葉は術直後の側面像。下顎縁の上に凹凸が診られません。
切開創はご覧の通り、最上部で前に曲げます。そこで吊り上げています。
切開創の最上部で吊り上げた分の皮膚を切除しました。幅2㎝です。中顔面からJowlに対して2㎝挙がったと言うことです。
下には術後1週間の4方向画像。
術後1週間の斜位像。挙上は見事です。ご覧の様に右側の創にテープが貼ってあります。
術後1週間の側面像。左下顎部に内出血が黄色く残っていますが、次週には消えるでしょう。
なぜか右側の創の曲がった角の癒合が不良でした。真皮縫合が外れたのか、皮膚が壊死したのか解りません。ただし抜糸はして、瘢痕治癒を図ります。問題は開いた分引き上げ効果が戻らないかです。診たところ3㎜程皮膚が落ちています。まあ2㎝挙げたので、それに比べればあまり落ちていないはずです。
さらに1週間後に他医が診た際には解放創は縮小していました。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
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