2025 . 2 . 8

やはりこめかみリフトは効果的。方向と目標を使い分けます。

Face Liftは本来切開手術です。美容医療の中でも形成外科医の登場場面です。既に20世紀初頭には、有名な形成外科医が論文を書いて発表しています。

実は形成外科医療は、第一次世界大戦後にUKで興隆しました。戦傷外科です。第一次世界大戦では、国民が総動員され、また火器が発達し、対して塹壕戦となりました。結果的に塹壕から出ている部分である顔面外傷や顔面骨骨折が多発しました。UKは当時も今も立憲君主国ですから、傷痍軍人の手当ては王室が責任を取り、国家を揚げて顔面外傷を治さなくてはならないので、専門分野である形成外科が発達したのです。先駆者はGilliesですが、その後今でも使われるGilliesの鑷子(いわゆるピンセット、正しくはForseps)に名を残しています。私もたまに使います。

その後USAでは、形成外科医が美容外科医療を先導しました。USAでは同一科目だからです。第二次大戦(日本が敗北した先の戦争)後に、USAは経済的にも世界の中心となり、美容外科,Aesthetic Surgeryが隆盛しました。当然にリフト手術は進化していきます。当初は切って引っ張るだけの手術法でしたが、1974年には、当時最先端のSMAS法(筋と筋膜)が発表されます。その後も次々に様々な手術法と解剖学的知識が発表されます。しかし現在は靭帯法と皮下広範囲剥離法が主に使われています。

ところで日本の美容医療の分野では、戦前から主に、東アジア人の特徴である一重瞼に対する眼瞼形成術と、低い鼻に対する隆鼻術が行われていました。Face Liftは時に行われていましたが、当時はしわ取り術と称されていました。フェイスリフトとは意味が違います。白人とアジア人は皮膚の色だけでなく質が違い、顔面輪郭(骨格)も違います。白人は薄くて弾力が無いのでシワシワになります。また縦長の顔なので弛むとJowlが目立ちます。だから、たるみを引き上げながら細かい皺を伸ばすフェイスリフトが適応なのです。比べてアジア人は皮膚が厚いので、シワが深くなります。また顔が短い為、弛んだ下顔面がエラまで出張って下膨れ状になりブルドッグ顔になります。ですから本来はJowlを上げるフェイスリフトが適応なのに、深くなった皺を取ろうとして、結果が得られませんでした。微妙に目的が違います。

その様に考えると、SMAS法では、JowlにはSMASは無いのですぐ後戻りしますから、意味がありません。靭帯法は効果的ですが、前方には顔面神経が走行していますから、電気的神経感知装置を手術中に使用して、一本ずつ確認して剥離を進めなければならず、最低8時間は掛かりますから最低3百万円要します。また解剖を熟知していなければなりません。もちろんチェーン店医師には不可です。現在日本では数名しか施行していません。比べて広範囲皮下剥離法は、皮下には顔面神経は走行していませんから比較的安全です。それでいて、剥離範囲の先端まで引き上げられますから、効果は充分で、持続性も永いのです。こめかみからでも皮下広範囲剥離でJowl方向や、Malar方向や目元まで使い分けて引き上げられます。最近は剥離腔を増やして2〜3方向(2または3Vector)に引き上げる手術も多用しています。患者さんの状態により、必要に応じて使い分けています。

いつも書いてきましたが、美容外科医療に於いては、形成外科と美容外科は一心同体とか、車の両輪と捉えられてきました。なぜかと言えば、日本では別の診療科目ですが、形成外科医療の知識と技術は医療である美容外科の基礎はほぼ同一だからです。特に縫合の技術と、顔面解剖の知識は欠かせません。またぞろ書きますが、医師は国家試験に受かった直後は必要最小限の知識を持つだけです。専門分野の知識の積み上げと技術の修練は、大中病院での研修とその後の研鑽を要します。これもまた思うことですが、”大手”の美容外科と一般人に呼ばれる、チェーン店のコマーシャリズムに立ったビジネス系クリニックは、幾ら稼いでも少なくとも大中病院の様な教育システムは創れません。教える医師が居ません。ですから広告宣伝で誘引する”大手”のチェーン店では学問として美容医療を研鑽していない医師が”なんちゃってリフト”を試し?、トラブル続出となっています。誰でも同じじゃ無いのです。出自が違いますから私たち形成外科出身の医師と、チェーン店系の”直美”の連中とは一緒にすんなってことです。

症例は45歳女性。昨夏に定期的に診てきた患者さんに聴いて、紹介されて来院されました。早速MACS liftの切開で、Jowl Liftを施行しました。ブログに書きました。詳細はこちら。早くもその治療中に、中顔面を挙げる為のこめかみリフトを希望されていました。私、”Malarを狙う”と記載しています。

前回の手術後3ヶ月を経て、下顔面は問題なく、喜んでいらっしゃいました。前額リフトの話もして、眉下はいつかすることにして、こめかみリフトのプランを話しました。やはりMalarが狙いです。下顔面が弛んでいない分、中顔面との差が見える。目尻も若干上げても良い。「こめかみ生え際を眉尻の後から3㎝切開して、斜め45度方向へゴルゴ線まで剥離したらこうなります。」と用手的にシミュレーションして手術予定を立てました。中顔面は下眼瞼の瞼頬溝部のクマも見えるから、PRPも適応ですが、同時に同部には入らないので、リフト時にPRPを組織糊として1CC使うから、次にもう1CCを追加で使う際は半額にすると約束しておきました。

画像は正面像と4方向と術中の手順を載せる近接画像を日順に載せます。術前の正面像です。Malarが平坦で、頬骨隆起が立っています。この点を改善したいと思います。

上下四葉は術前の4方向です。頬骨隆起部が立っているから、頬もこけています。

術前のデザインの正面像です。正面からは見えません。4方向では切開線と引き上げ方向も見えます。

デザインは4方向で見えます。上の右側面像と斜位像では剥離範囲も描いてあります。

上の左斜位像と側面像では剥離範囲のマーキングが薄くなっています。切開線は眉尻の真後ろからこめかみ生え際に沿って約3㎝です。引き上げ方向は、頬骨隆起に向けて45度です。

下には手術中画像を並べます。

とは言っても手術を進めてから撮りました。両側こめかみ部ですが、切開して、点状のマーキングの範囲を皮下剥離して、創縁の中央をおもいっ切り引いてみると、最大15㎜引き上げられました。牽引方向に皮膚に切開して縫合してみましたが縫えました。

上で牽引+縫合して、皮膚の切除マーキングしています。上左図はその線で切除しました。上右図は、真皮縫合を12針して隙間なく合っています。

術直後の正面像です。剥離範囲が腫脹しています。

上下四葉の側面像と斜位像では、マーキングされていた剥離範囲が腫脹しています。

有髪部の皮膚は厚く、比して薄い皮膚と段差ができない様に、創は皮膚連続縫合して終えました。

本症例では血腫が起きましたが、翌日に穿刺吸引して抜きました。その後は溜まっていません。血腫とは、皮下のポケットに血液が溜まって固まることです。波動が触れる翌日なら抜けます。

術後1週間です。意外と腫脹の軽快が早く、形態的変化が解ります。Malarが丸みを帯び、こけていません。頬コケがなく、頬骨隆起部から下顎への輪郭がなだらかになりました。

血腫は抜けても、それが内出血となりました。黄色くなったら後1週間で吸収されます。

頬コケ部だった部位に内出血が降りてきて、影に見えていますが、患者さんは効果を解っています

抜糸時に引っ掻いたので創痕(抜糸したら創で無く創痕)線が発赤します。糸の跡の電信柱状の線は消えます。幅が広がらず、引き上げ効果が保てる様に細かく真皮縫合しました。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の提示です。こめかみリフトは40万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。