まずは題名の説明です。患者さんは、一流の社会人です。毎年1ヶ月ほど休みを取って、この時期に手術を受けにいらっしゃいます。題名にある様に、いくつかの美容形成外科手術を施行してきました。今回は2回に分けて手術をしますが、一つの版に載せます。
昨今”直美”がキーワードです。医師が国家試験合格後にほとんど研修研鑽を受けないで、美容医療の分野に就職する、または開業する輩を、”直”接!”美”容医療を始めるからこう呼びます。また卒後他科で研修した後に、美容医療に転向するフラフラした医者も似た様な輩です。形成外科・美容外科が開設されている大学病院を含む大病院で、カリキュラムに沿って上級医に指導を受け、一歩ずつ学び取る様な施設で、最低6年間は研修を受けなければ、質の高い研修とは言えません。
当院の多くの医師は、大学病院で形成外科の研修を最低6年受けて、学会から専門医に認定されています。私は北里(千円札)大学形成外科に15年在籍していました。更に私だけは、二つある日本美容外科学会から、専門医に認定されています。ただし当院にも、”直美”や”転向医”や”皮膚科医”が紛れ込んでいます。美容皮膚科診療なら出来るからです。
そうです。昨今の美容医療は簡単な=いわゆるプチ整形や器械治療が増えています。その結果患者さんの裾野が広がったのは事実です。プチ整形とは、今から40年以上前にT.医師が広告に使って提唱しました。簡単だからというだけでなく、ダウンタイムが軽くて短いから、患者さんが受け易いからビジネス的に有用なのです。ただし当然、効果が足りなかったり、持続性はなかったりします。効果が薄れたら回数重ねれば良いと言う考えです。それじゃあ結局、毎回の料金を足したら高価になるので、医療者側は損でないのでしょう。器械治療は昔から進歩しています。しかし、あくまでも表層からの施術ですから、形態的改善は望めないのが実情です。もちろん持続性はありませんが、医師は手間暇が掛からないので、定期的に繰り返せます。
とか言う治療が、患者さん(父はクライアントと呼んだ)を増やしたから、美容医療診療所が増えました。医師も参入します。簡単な治療なら、”直美”連中でも始められます。手術を多く施行してきた既存の医療機関も、食い扶持としてプチ整形で繋ぎ、ある程度稼げる様になったら、新しい器械を買って(リース)流行らせて、ある期間使い回して稼げば追加の利益が出る訳です。昔学会である医師が発言しました。「うちなんか、器械購入に追いまくられて全然儲からないよ!。」現代はそれでもやっていける、高額に設定しているクリニックが増えました。裾野が広がったのと、景気の浮揚が相まっているからでしょう。
しかし当院には、美容形成外科医が多く在籍しています。思い起こせば、17年前に当院に移籍する際に私は、形成外科出身の医師が主宰するクリニックを探しました。美容形成外科医として蓄積した知識と技術を活かしたかったのです。その前くらいからS.等のチェーン店が隆盛しました。T.は50年以上ビジネスに徹しています。でもその状況でも私は、お陰様で美容形成外科の手術を続けられました。更に患者さんが増えたので、手術法もアップデートしていけました。一方から見て、手術的治療に特化する私は、古いのかもしれませんが、ニーズがあるからやり続けられます。今回も切開リフトを繰り返します。中は済んだので、上と下を挙げます。こんな治療法は、他では受けられません。だから皆さんが受けに来られます。私自身は結果が得られて、嬉しくも楽しい気持ちで満たされます。患者さんは喜んでくださいます。では皆さん、その内容をご覧く下さい。
症例は48歳女性。4年前に初来され当初は美容皮膚科医に罹りました。元麻酔科医の”直美”医での非観血的治療に物足りなくて、美容形成外科の手術的治療を希望されて、私に紹介されました。
その後これまで、幾つかの手術をさせてもらいました。患者さんは優しくて綺麗で、毎回お喜び頂けます。顔は売り物の一部ですから「若々しくて、お客さんにも綺麗だねって褒められるのです。」と楚々と言いながら、「先生のお陰ですよ!。」と持ち上げてくれる素敵な女(ヒト)です。
今までリフト手術を何回か施行しました。4年前にはスレッドリフト。後戻りして、2年前の年始にはMACS Lift切開でJowl Lift。昨年の年始にはこめかみリフトをしました。他の部位も手術してきまた。定期的に美容皮膚科治療も受けていて、昨年末には今年の計画を立てるための診療を始めました。カルテを読むと”ネックリフトでエラ(下顎角が張っている)の下をスッキリ、はっきりさせたい” ”前額リフトで上顔面65㎜でももっと額を狭くして小顔を強調したい” そこは小柄なので更に小顔が欲しいと理解できる。どちらもブログを覧て解っているそうです。私も中顔面は2回の手術で効果を得たから、あとは下と上を挙げることが求められるのは予想しました。診察所見として”額には横ジワが浅く刻まれているが、前頭筋収縮癖が起きていないので、皮下剥離が適応” ”生え際をジグザグ切開で皮膚側を切除すれば額は狭くなります” と説明しています。
二つのリフト手術を同時に施行するのは難しいとお願いしました。部位が遠いのと、時間の関係です。一週間置きにすることでお願いしました。
画像は術前の各方向から術中、術直後までを順に観ましょう。
術前の上顔面正面像です。こうして見ると、生え際から眉下まで65㎜ですが、後退傾向が長く見せます。
上の斜位像と下の側面像も観ましょう。額が上方に向かって後退傾向なのが判ります。
手術はデザインが重要項目です。下に正面像から。
まず上左図の如くジグザグ切開線を描きます。中央が下向き角で、上右図でメジャーを当てると判る様に、各辺1.5㎝で約120度でジグザグ線を描きます。下に斜位像で見られる様に眉尻の真上までが前頭部です。左図は剥離範囲のマーキングです。短縮と引き上げには、眉の直上までの剥離の必要はありません。
斜位像で上が切開線、下が剥離範囲。切開線の両サイドの下を剥離します。
下からは手術中の画像です。まず切開ですが皮膚皮下脂肪全層で、前頭筋は切りません。したがって縦に走る眼窩上および滑車上神経血管は傷めません。
切開後皮下剥離します。上左図は剥離中。上右図は予定範囲まで剥離して、皮膚を持ち上げている画。深部に前頭筋は全て残しました。でも下方(画面では上)で皮膚と繋がっています。
一度皮膚を戻して撮りました。引き挙げ量を探ります。とにかく皮膚を上に引き挙げてみて、可能な幅を測ります。中央で1.5㎝でした。そこで上右図の如く、メジャーを当てて縦線を描きます。中央の両脇の長さも1.5㎝可能で、さらに両サイドは1.0㎝でした。
マーキングはジグザグの下向き角各点です。上右図はいよいよカットを始めます。
両側斜位像でも、5本の縦のカットがされています。そして👇
上左図の如く、カットした各点を5−0黒ナイロンで仮縫い(キースチャー,Key Suture=鍵縫い)します。そして上👉図の如く、この位置で各辺のマーキングを描きました。
両側斜位像でも覧ましょう。いよいよ皮膚切除します。👇
上右図は切除皮膚です。皮下脂肪全層を含みます。上👉図は切除後です。キースーチャーはそのままです。
両側斜位像でも、キースーチャーの点以外はまだ隙間だらけです。
各辺を3〜4針ずつ、6−0PDS糸で真皮縫合します。この時点で隙間は無くなっています。キースチャーは一度切り抜きます。上右図は眉がかなり挙がって眼瞼が開大したのを示しました。まだ終えません。👇
真皮縫合でピッタリ寄せても、額の皮膚&皮下脂肪に比べて、髪の有る側の皮膚&皮下脂肪は厚いので、微妙な段差が出来てしまいます。ですから表面から細かく皮膚縫合します。キースーチャーの各点に今度は、6−0白ナイロンでステイスーチャー,Stay Suture(停留所の糸)してから、端から端まで6−0白ナイロンで連続縫合しました。ステイスーチャーにだけ結紮します。これで終了です。👇
明るい診察室で撮り直しました。術直後は腫れていて引っ張られていて、患者さんは「こんなに挙がったんですね?!、凄すぎますね!。」とびっくりされました。私「ちょうどよく落ちます。」と宥めます。上右図は縫合創を正面から写しました。細かく縫いました。
両側斜位像でも縫合創には血液が着いた赤いジグザグ線が覧られます。
両側斜位像では額の皮膚に張りが見られ、テカテカしています。
両側側面像でも額はツルツルです。👇
しかしここで、圧迫しようとなりました。皮下剥離腔に血液が溜まって血腫になると、癒着が遷延してしまい、場合によってはブヨブヨしてしまうからです。弾性絆創膏を両側のこめかみから半周の鉢巻の様に貼りました。
翌日診ました。圧迫が効いて血腫は生じませんでした。ところが!👇
術後1週間で抜糸の日!、診ると、上下眼瞼部に内出血が垂れました。
額を圧迫したので血腫は起きなかったのですが、微量の血液は逃げ場を探して重力の働いて、眼瞼の薄い皮膚へ回ったのです。しかも、眼瞼周囲や額の皮膚にも、黄色く表面化しました。
縫合創は全抜糸しました。抜糸時に触ったので創痕線が赤くなりました。
両側側面像で術前と比べると、額の張りは若々しさを造り上げられました。
そこで予定通り、前額リフト後1週間で、ネックリフトを施行しました。中下顔面を載せます。
とは言っても中顔面にもまだ内出血の黄色が写っています。ですが、腫脹は及んでいません。
上列の両側斜位像と下列の両側側面像で見ます。目的は下顎縁下の頸部の影を見せることです。
側面像ではエラ(人間には鰓はなく下顎角)の下が頸部に繋がってタルんとしています。
デザインは前回のMACS Liftの続きです。耳垂前部から耳垂を回って、耳後溝から後方へ曲げて、生え際に曲げます。点線で囲んだ離範囲は、前方はエラと頤の中間までです。
手術開始し、切開後皮下剥離しました。上右図は剥離腔に筋鉤を懸けて確認しています。右の鉤がかかっている皮膚は台形であたかも皮弁状です。
上左図は上後方から剥離腔を写しました。かなり深いでしょ?。この前には一生懸命止血しました。👉さて引き上げます。皮弁の先端を引いて、耳後溝の上端を25㎜引き上げられます。👇
上左図の如く、耳垂部で15㎜引き上げられます。上右図の如く、生え際で20㎜引き上げられます。夫々にマーキングして👇
耳垂は下顎縁に向けて割を入れてキースーチャー。耳後溝上端は真っ直ぐ引き上げてキースーチャー。生え際上端は斜めに勝つを入れてキースーチャー。どちらも6−0黒ナイロンです。上左図ではさらに皮膚をトリミングするマーキングも描きました。上右図はトリミングした皮膚です。👇
上右図の皮膚をトリミングしました。耳垂前は耳垂の引き上げた分だけです。
真皮縫合を約3㎜間隔で細かく懸けて、もう隙間がありません。👇
皮膚は6−0白ナイロンで、各角にステイスーチャーと連続縫合です。
術直後の正面像です。腫れてきましたが、エラ付近のもたつきは改善しています。
上列の両側斜位像と、下列の両側側面像ではエラの下に影が見られます。エラもスッキリしました
エラの位置が上方移動して見えます。日本人をはじめとしたアジア人は、エラが低いと五角形の顔になりますから、この部分の改善は効果的です。
下からは、前額リフトから2週間、ネックリフトから1週間の画像を、全顔面で載せます。
下眼瞼の内出血はやっと吸収されて来ました。眉の位置が適度に挙がって、ハッキリした目元になりました。前額面はツルっとして綺麗です。下顎縁のラインは正面像ではまだ腫れています。上右図は前額生え際の傷跡ですが、赤くても幅がなく、生え際の線もジグザグですから、むしろぼやけて自然になります。
上下四葉の4方向では下顎縁のラインが綺麗に弧を描いていて美しい。前額部面もテカテカです。眉が挙がって、上眼瞼に被さっていません。
何とも若々しい横顔です。
前額部生え際の傷跡は斜位像で見ても目立たなくなって来ました。
耳介周囲の傷跡は抜糸直後は赤い線になりました。白くなります。
耳介後部の傷跡は糸の跡が残っていますが消えます。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明です。前額(おでこ)リフトは80万円+消費税です。ネックリフトは35万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。