2025 . 3 . 24

人中を含む上口唇短縮術は私の得意分野です。とは言ってもやはり他医が手術した後の修正です。

何度も書きますが、上口唇は赤い部分だけでなく、その上の皮膚の部分も”口唇”です。アジアの一般人だけが知らない用語で、日本では赤唇を”くちびる”と、白唇を”鼻の下”と俗称します。これでは医学用語になりません。さらに言えば、完全口唇裂(みつくち)は、赤白とも割れている病名です。解剖学的にまたは発生学的に、赤白の口唇は一体です。両側から伸びてきて、人中で合体します。神経血管の支配も一体です。違いは赤唇は消化管(口腔)が捲れて、前突した表面に薄い皮膚が張ったので、血管が透けて赤く、白唇は皮膚ですが、深部は口腔内です。

そしてこれも何度も書いてきましたが、人中とは呼んで字の如く人の真ん中です。具体的には白唇の真ん中の縦の窪みを人中溝といい、その両側の畝を人中稜と言います。ですから巷間の非医学的美容整形屋が使い、患者さんも鵜呑みにして使う”人中短縮術”とは、まずいんじゃないでしょうか?。人中だけ短縮したら、富士山型口唇になるに決まってます。”上口唇短縮術”というべきです。そのためには鼻柱基部間だけでなく、両側鼻翼基部間を同幅で切除しなければなりません。私はその様なデザインで手術しています。なお人中稜は平行でなく、下広がりの八の字型が綺麗だと考えられます。また赤唇縁の中央付近はCupid’s bow,天使の弓と呼びますが、頂点が人中稜の延長です。弓の持ち手である部の陥凹は溝の下だからです。

尚、人中稜の皮下には口輪筋が停止していて、口を尖らせると溝は深く、結節(=赤唇の中央の膨らみ)が前に向きます。私が手術時に造ることがあるキスシーンの様な唇は、この構造が表現しているのです。そうです。口唇は性器の擬態と考えられています。少なくともヒトでは使います。ですから、口唇の手術時には、解剖学的構造を強調こそすれ、損傷をできるだけ少なくして動的変形を可及的に避けるほうが適切と考えます。ですから基本的に私は、皮膚と皮下脂肪を切除するだけとし、口輪筋処理は縫縮するだけとして変形を避け、神経は損傷しない様に気をつけています。ただし人中部を寄せることは表情を強調する手技となりますから、よく売り物にしています。

症例は36歳女性。可愛い人で、とてもこの年齢に見えません。元々美人でしょうが、いくつかの美容医療を受けてきた女子です。既往は全て聴いていませんが、口周りについてはカルテに記載してありますので、カルテをコピペします。

2年前にS.系のクリニックで上口唇短縮術と口角挙上術を受けた。昨年当院のグループクリニックで、上口唇小帯切除術を受けたがC-カールは出来なかった。また短縮したかったのに、変わっていない。現在上白唇の縦長は、鼻柱直下(人中溝)で13㎜、鼻翼基部直下で16㎜あり、やはり富士山型を呈しています。

計測しました。その上評価して、プランを立てました。まず顔面縦長。上顔面56:中顔面58㎜:下顔面60㎜とやや下が長い。ただし上口唇(白+赤)20㎜:下口唇(赤〜頤尖)40㎜と黄金比率の5:8と比べて上が短くなってはいます。つまり短縮量は少なくて良いが、差をつけるべきです。鼻柱下は2㎜短縮、鼻翼下は4㎜短縮のデザインが適切で、患者さんの希望である「笑った時には歯が見える様にしたい。」希望が叶うかは、用手的シミュレーションしてサイズを決めました。口唇の形は、赤唇縁の弓が緩く、結節が不明瞭で下向きです。白唇は人中幅は8㎜でも浅いのです。両側鼻柱基部と人中稜を内側に1.5㎜ずつずらして縫合したら、はっきりした赤白口唇になることも、用手的シミュレーションで見せました。

当日もう一度念入りに診察して説明し、患者さんの希望を聴きました。鼻柱基部の直下は1㎝を目標に3㎜切除を希望されました。鼻翼基部の下は4.5㎜切除に留めないと口が閉じなくなります。この様にシミュレーションして確認します。人中についてもう一度評価して、患者さんに聴きます。鼻柱基部間は7㎜に対して、両側の弓の頂点間は12㎜あります。そこで患者さんは「人中は八の字型が欲しい。」と希望されます。私もろ手を打って「そうですね!。その方が口唇全体に表情が豊富になるし、C-カールも更に立体的になりますよね。」私言わなかったのですが心の中では”彼女は美容的によく解っているな!、だから可愛くて、美容的センスに溢れるし、私としても結果を出せる楽しみがある。”とウキウキしていました。「ですから、寄せる縫合法がいくつもの効果を産みます。ブログ視たのですね。」と言うと、患者さん「ですから先生に手術をお願いしたのです。」と、手術直前に集中力を高めてくれる様な、嬉しいお言葉を頂きました。やる気満々でした。逆に言えば患者さんは、なんと理解度が高いのでしょう。また医療者側を上手く使える人なのでしょう。

画像は正面像と4方向の比較からです。後段で近接像での手術中画像も観ましょう。

上左図は術前の正面像。口角挙上術も受けているから、顕著な富士山型ではありませんが、赤唇縁は両側のキューピットの弓の頂点のすぐ外がストンと落ちています。上右図のデザインは上に書いた数字に従って描きました。ポイントは鼻柱直下と鼻翼直下の切除幅の差です。

上左図は術直後です。腫脹が強い時点ですから、形態は評価できませんが、明らかに短縮したので患者さんはお悦びです。上右図は術後1週間で、両側鼻翼間の抜糸後です。白唇と赤唇の比率が変わり、赤唇の形態も良好です。患者さん「今でも良さが判る。」とお悦びでした。創痕の線の赤さが薄く、創経過も早い人です。私「可愛いだけでなく身体も若いのですね。」と褒め返しました。鼻翼の横のドッグイヤーも見えません。

術後2週間で全抜糸しました。赤白口唇の比率が赤優位となりセクシーです。

下からは両側面像と両側斜位像の4方向の比較です。

術前:口角は挙げてあるのに、Cupid’s bow,弓の頂点から外側に向けて一回ストンっと落ちていくのが、赤唇のボリュームロスを感じさせると見えます。これが富士山型の特徴です。

術直後:腫脹でブクッとしたのでボリュームが出てますが、これは腫れです。

術後1週間の4方向では、腫脹が軽快して形態が見えてきました。口吻が前突していないから、口元に品がありながら、セクシーです。赤唇のカーブも丸みが出来て、ボリュームがあります。

術後2週間の4方向では、赤唇がわずかに前に出て、E-ラインが一直線上に乗りました。それだけ赤唇にボリュームが出たと言えます。

下からは近接画像で術中も観ましょう。

弓の頂点から外側が挙がっていません。ご覧の様に口角も挙げてありますが、なんか寂しいのです。デザインは、第一切開線は前回の創痕線の0.5㎜上で、第二切開線(切除線)は鼻柱基部直下で3㎜、鼻翼基部直下で4.5㎜としました。両側共、鼻翼横へテーパーしていきます。

手術開始して、上左図は切除した図。デザイン通りに垂直に、皮膚皮下脂肪層を全層切除しました。その下層には口輪筋が全層温存しています。上右図は切除標本です。デザイン通りに中央が細くなっています。

上左図:止血後に口輪筋を縫縮しました。これこそ効果がある筋肉処理法です。何故なら、ご覧の様に深層が近づくと、表面に向かってすり鉢状になりますから、これを合わせればC-カールが出来るのです。上右図:続けて両側鼻翼基部だけ真皮縫合後。さらに両側鼻翼の横も辻褄を合わせて3針ずつ真皮縫合しました。

上左図:両側鼻柱基部と人中稜の1.5㎜外側を真皮縫合しました。これによって人中上部の幅が狭くなり深くなり、Cupid`s bowも急峻となり、赤唇の結節が前向きになります。上右図:両側鼻翼基部と鼻柱基部間を3針ずつ、鼻柱下を2針真皮縫合しました。

真皮縫合は上図に説明した本数を足すと計18針でした。この時点で隙間はありません。そうでないと術後傷痕の線に幅ができてしまうのです。更に皮膚連続縫合します。もう隙間がないから表縫いは要らないんじゃいか?。って訊かれたこともありますが、必要です。何故なら、この線の上下の皮膚は厚さが違うため、段差が出来る可能性があるので、皮膚を合わせる細かい表縫いが求められます。

上は術後1週間で、両側鼻翼観だけ抜糸した後。右図は口を動かして写ってくれました。八の字型の人中を魅せてくれました。

術後2週間で全抜糸しました。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

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