本当のHamra 法を出来る医師は余り居りません。ナンチャってならゴロゴロ居て、広告宣伝にハムラ法を載せているクリニックもよく見掛けます。概ね非形成外科の美容整形屋は後者で、形成外科出身で美容外科経験が長い医師だけが、本物のHamra 法を出来ると言えます。
何故なら、この手術を行うには、専門的な解剖学的知識と、形成外科分野の手術経験に基づく技術を要します。また、Hamra 法はUSAのテキサス大学のSam Hamra が考案した手術法ですから、英語論文を読み尽くしていないと手術法を理解、記憶出来ません。また実は、白人とアジア人では微細構造や皮膚の質が違いますから、学会活動で本邦でHamra 法を試行した美容形成外科の医師と情報交換しなければ、その効果と適応を理解出来ません。
Hamra 法のバリエーションを説明します。今から20年前にSam Hamra がコンポジットフェイスリフト,Composite Face lift を発表しました。通常のSMAS法フェイスリフトに下眼瞼リフトを組み合わせるのですが(合成=composite)、剥離層を同じくして繋げて、前後に引き上げる手術法です。効果は見事です。同時にもう一通の論文で、下眼瞼リフトに際して眼窩脂肪の移動再配置=Repositioning を提唱します。
目袋は眼窩脂肪の逸出ですが、目袋を見えなくする為には目袋の下の溝を無くす事が必要です。英語ではTear trough,涙溝とも呼びます。Trough,トラフは、外来語で相模トラフや南海トラフ(地震の元)と使われる様に海底の谷ですが、原語では雨どいから派生した言葉です。トラフを埋めるのが目袋を見えなくする方法だと気付いたSam Hamra は、発想が素晴らしいと思います。眼窩脂肪を捨てないで、谷に移動する再配置法を産み出しました。彼はPreservation, 保存、保管との言葉も使い、New concept, 新しい概念として論文も書いています。
いやあ〜ここまで書いて来て、やはりこうしたを理解の下にHamra 法を出来る美容外科医は、滅多に居ないだろうと気付きました。だから本当のHamra 法を出来る医師は少ないのです。ところで日本では現在T大学形成外科教授のK医師がHamra 変法を駆使しています。その方法は眼窩脂肪を包む眼窩隔膜ごと移動させる方法で、脂肪だけ移動するよりも固定性が高いと考えられます。実は本症例にも利用させてもらいました。
標題にもある様にHamra 法の際には筋皮弁法で剥離して、外眼角への吊り上げも併用します。私は下眼瞼形成術では単独で常々で多用してきました。目袋は眼窩脂肪のヘルニアですから、眼窩脂肪除去は一時的には効を奏しますが、眼窩脂肪はその名の通り、眼窩内で眼球を包む脂肪ですから、目袋に逸出して来ている眼窩脂肪だけ取っても、徐々に眼窩内からまた出てきて再発します。場合に依ってはその分上眼瞼が窪みます。ですから、目袋の改善には下眼瞼を引き締めて、はみ出さす事を防がなくては意味がありません。皮膚だけで引き締めると外反=アッカンベーになります。ですから、眼輪筋を吊り上げて、骨膜に止めて引き締めて、眼窩脂肪が再逸出しない様にする必要があります。
上段に上段に構えて難しい説明を詳述しました。ここで症例の説明に移りますが、これまた難しい症例です。
症例は52歳女性。一昨年から来院し、口周りの手術をしてきました。大変お喜びでした。その後昨夏の経過観察中に、ブログを視て広範囲剥離リフト手術の希望をいただきましたが、咬筋BTXの必要も告げました。その際他院で受けた頬前の脂肪注入の余剰分に言及していて、溶解を示唆していたました。
その後、他院でボトックスは受けましたが、頬前の脂肪溶解を11月に施行しました。その10日後に経過を診ますと、脂肪溶解では、「頬前の脂肪注入,Malar fat を減らしたかったのに、ゴルゴ線に入っていた注入脂肪も減った。」とお困りでした。そこで患者さんか私か、どちらかともなくHamra 法の検討に到りました。ゴルゴ線をH-Aで埋めると、結果的に瞼頬溝と目袋が目立つでしょうから、本当のHamra法の適応があります。帯状の注入物は可及的に削徐します。画像を診て解るように、右は内側1/2円、左は内中2/3円に目袋の下の溝が見えます。Hamra 法は侵襲が大きいので、腫脹や内出血は必発でダウンタイムは最低2週間かかると念を押して、スケデュールを立てることになった。
術直前の診察時に確認。目袋の下の溝を眼窩脂肪で埋めます。ゴルゴ線はまたの機会に。画像を供覧します。
術前の正面像で、目袋が見えます。下に瞼頬溝が深いです。存在部位は上に書いた部位です。
近接画像でも溝が円弧を描いて黒い影が見えます。帯状の注入物は解り難いのですが、触れれば判りました。
上には術前のデザイン:点で囲まれた範囲が目袋で、筋皮弁で剥離する範囲でもあります。右の切除標本は皮膚だけ切除したもので、最大5㎜幅切除しました。
術直後の正面像です。内出血と腫脹がすでに診られます。
近接画像ではより激しい図ですが、溝は見られません。
術翌日の診察時、出血は少々で、血痂を除去しても再出血はなく、経過が早いとみられます。患者さんは一目見て「張りがある。」と言って下さいました。凹凸は腫脹で不明でした。
年末年始にかかり、抜糸は術後11日目となりました。目袋の下の溝が無いとお悦びです。私「これが本当のHamra 法の効果です!。」と鼻高々。患者さんは「ちょっとの改善を望んでいたがすご〜い効果ですね?!。」と感激されまされました。
術後11日目にしては内出血は軽度残るだけで腫脹の軽快も早いです。追記:先達者の書いた論文を検索し閲覧するために図書館に行かなければならなかったのは、昭和人です。インターネットで原文を読める様になりつつあります。全部ではないのですが、美容形成外科の論文はほとんど載っています。インターネットでの出し方:pubmed-homeと入れて検索します。今回はhamra sで三通出ました。Composite Face Lift またはRythydectomyで数百通出る中で、Sam Hamraを選べば彼の論文を全て視られますし、画像や図が載っていて手術法も理解できます。ですが、一部は全文が視られません。皆さんも英語論文を読めるならば、試してみると面白いでしょう。
という訳で次の画像は術後35日です。
一言「本当のハムラ法はすごいですね!。」と仰っていただきました。そう言われると私も嬉しいです。
瞼頬溝が目立たなくなったら、いや術前の画像と比べれば無くなったと言って良いでしょう。
でもそのクマ=瞼頬溝が消えたら、ゴルゴ線が気になるそうです。私「正解!。」と叫びました。Hamra法は瞼頬溝を埋めますが、ゴルゴ線は埋まりません。ゴルゴ線はMalar fat pad のコンパートメントの境界に出来、そこにはMalar retaining ligamentが引き込んでいます。ですから、皮下を剥離して、靭帯を外して、fat padを抑え込む必要があります。であれば!、広範囲剥離こめかみリフトが一遍に操作できます。患者さんはすでに理解していて、「いつかお願いします。」ですって、私も上記の説明の通りの手術だと思います。その際は喜んでお引き受けしたいと思います。
下にいよいよ術後3ヶ月です。
とにかくお悦びです。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。下眼瞼形成術は術式により30〜40万円+税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。