眼球が視機能の主体なのですが、本来は眼科医が担当する臓器です。ところが、眼科医は、検査するばかりで説明が下手な様です。私の患者さんと話していても、的を得ない説明しか受けていない場合が多いです。
それはそれとして、眼球は前から、角膜、前房、虹彩、水晶体、硝子体、そして網膜があります。そのどれもが視機能に関与します。つまり、光がちゃんと通るか、通った光が網膜にちゃんと像を投影するかです。よくカメラに凝らせられますので、引用します。写真は私達形成美容外科医に取っては、欠かせない物です。ちなみに私は、中学生時にアサヒペンタックス(今は無い名器です。)を買ってもらい、のめり込みました。カメラを勉強しました。また星空に夢を見て、天体望遠鏡も買ってもらいました。だから、レンズや画像投影には科学的な知識があります。
眼球のいちばん前にある角膜は、ドーム状のコンタクトレンズみたいな透明な膜で、カメラではレンズの表面またはフィルターの役目です。濁ったり(カメラなら曇ったり、汚れたり、傷ついたり。)変形したりすると視力を落とします。光が通らなくなれば当然です。また乱視もその一つで、加齢での変形です。また、濁る原因はいろいろありますが、重症のドライアイも原因となります。実はドライアイでもそこまでのケースは多くないのです。ところで、眼瞼手術後に注意を要する事があります。眼瞼の手術の際には、少ない量でも局所麻酔をします。麻酔は痛みを取るだけでなく眼輪筋に効いてしまいます。すると目を閉じる筋力が落ち、術直後には目が閉じにくいのです。長くても3時間程度で治りますが、もし2㍉以上隙間が空いていたら、その間角膜が露出していますから、乾燥してしまいます。乾燥性(ドライ)角膜炎という状態になりえます。眼球は目を閉じている時は上を向いているので、2㍉以下の隙間では角膜は露出しません。だから、起ききていれば、ぎゅっと瞬きするので乾燥しませんが、2㍉以上隙間があって、寝てしまったり、寝かせてしまったりするとヤバいです。私達の手術は夕方までに終えますから、寝てしまって乾燥してしまった人はいませんが、一人だけ寝むらせてしまった事があります。10年前ですが、眼瞼下垂手術をして2㍉は開いていました。直後に全身麻酔でフェイスリフトをしたら、その間薄目でした。終わったら、目がキリキリしていました。三日間目薬を差したら治りましたが、肝を冷やしました。その後は気をつけています。
角膜は傷も問題になります。埋没法で、糸が切れたりほどけて(テクニカルエラーです。)切れ端が眼瞼結膜から露出して眼球側に刺さっていると、角膜に傷が付きかねません。数日で不可逆的になります。その際の症状は特別です。痛くて目が開けられません。覗くと、白目が真っ赤です。そんな時はすぐ糸を取りましょう。私は今までの26年間で一回だけありました。すぐに2日後に糸を取って治りましたし、直後に糸を掛け直して、予定通りのいい形を作れました。患者さんとのコミュニケーションが重要な経験でした。
次の前房は稀に強い外力で痛みます。長男がサッカーで丁度目にボールがはまって、出血した事があります。視野が赤くなりましたが、1週間程で治りました。稀な病態です。もう一つ、前房を満たす房水は、眼圧を決めます。房水が多くて、網膜をも圧迫してしまうのが、緑内障です。私達は診察時検査でにフェニレフリンテストをする事があるのは、前にも言いました。また、術中に点眼麻酔をします、どちらも緑内障があると悪化させます。緑内障は40歳以上の人に起きますので、既往を聴いておき、疑いのある場合には、使えません。
虹彩とはカメラで言うと絞りです。光をどれだけ入れるかと、ピント(フォーカス)を合わせやすくする為にあります。光の量を調節するのは虹彩ですが、結構瞬時に調節できますよね。ところが、眼瞼下垂患者さんでは、虹彩の調節が狂う事が多いです。前に述べましたが、眼瞼下垂症の患者さんは、自律神経系の交感神経が過敏状態で、散瞳しているからです。明るいところにいくとまぶしくて目を開けていられなくなるそうです。眼瞼下垂手術をすると治ります。大変悦ばれます。ところで、虹彩とは絞りですが、子供の頃、理科の実験でピンホールカメラというのを見た筈です。箱にピンホールを開けて後をすける紙にすると、像が映るというものです。不思議でしたよね。これと同じく、絞りが締まると、像を結び易くなります。目を細めるとよく見える事があるのはその為ですし、明るいところでは虹彩が縮瞳するのでピントが合いやすいのはその為です。手前味噌になりますが、私達が手術等の際に明るいライトを付けるのはその為でもあります。患者さんにはまぶしくて申し訳ありません。
ここまで、前からお話ししてきましたが、水晶体の話が、大事なので一度止めて、次回。