2016 . 3 . 11

眼頭切開が評判です。当院独自のZ-形成法による蒙古襞解除術はこのような症例にも使えます。

これは難しい。形態をどれだけ作り上げるかは、デザインが60%以上の割合で左右するのですが、他院の修正手術では限定されるからです。しかも前医が医局の先輩で知り合いなだけに、逆に聴きにくいから詳細が不明です。手術当日中に解ってくる事がありました。

症例は35歳、女性。3年前に他院で目頭切開を受けたが、効果不足との訴え。

内眼角間距離39㎜ 眼裂横径26㎜ 挙筋筋力は13㎜だが、腱膜性眼瞼下垂症に対して切らない眼瞼下垂手術を受けている。顔が横に広がっている感じなのでもう少し目の窓を寄せたい希望に対して、一辺4㎜のZ−形成法による目頭切開を予定しました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA 

上左図が術前、上右図が術直後です。充分に効果が得られています。計算通り目頭が1.5㎜ずつ開いて内眼角間距離は36㎜になっています。今回は近接画像も提示します。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA術前の近接像です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA術直後の近接像です。アートメイクの先端も動いていますが、却って蒙古襞が途絶している様に見えていい効果です。

このブログの読者でしたら、形態が変化したのはすぐお判りでしょう。術前の画像をよく見ると、目頭の内側にもやもやした白い瘢痕(創跡)があります。実は私も術前に何か瘢痕があるのは知っていましたが(手術受けたと申告されたのですから当然です。)、術中に明視下で近接して観察して、やっとデザインが判明しました。近接画像は肉眼より細かいので見えると思いますが、目頭の角の内側にW字を90度倒した白い線が見えます。

そ〜だ!前の手術はW−形成術だ。やっと認識出来ました。W−形成法の目頭切開術は、15年前までは私もしていた古い手術法です。別名内田変法といいます。戦後流行っていた内田準一先生の考案で、1996年にZ−形成術が韓国で開発されるまでは、形成外科出身の美容外科医がする目頭切開手術の定番でした。とはいっても、形成外科出身でない美容整形屋には、出来ない手術でした。ちなみに父は施行した事がありませんでした。ド派手で創跡が目立つ手術しかしたことありませんでした。私が20年前に父に披露した際に喝采されたのを覚えています。

まあそれはいいとして、デザインの位置が違う!、「何だこれ?」って術中に叫んでしまいました。W字を90度傾けた際の、上下の腕が二重に沿ってなければならないのに、約1.5㎜内側に外れている。「アッ、だからちゃんと開いていないんだ。」と納得しました。それに一辺2㎜と小さい為に1㎜も動いていない。しかもよく見れば判りますが、アートメイクしていますよね。眼瞼縁にアイラインが引いてあります。ラインが蒙古襞を示します。蒙古襞の拘縮が解除されていません。そうです。何度も念を押すのですが、蒙古襞は拘縮(突っ張っていること)しているがために開瞼を阻害し、眼瞼下垂状態の一要素になるのです。解除する事が求められるのに、これまではその点が考慮されてきませんでした。古い美容外科医は向上しないのですね。ああそうか!、彼等は先輩だから古いのか、残念に思いました。

今から、10年程前の日本美容外科学会の眼瞼のセッションで目頭切開の発表に対して私は蒙古襞の解除を考慮しているか問うてみました。その発表者は意味を判っている様に思ったからです。そこに池田先生も居て、3人で議論した際に、池田先生と同感しました。それからコンビになりました。実は当時既に私はZ−形成法を駆使して蒙古襞解除を行っていたのですが、池田先生も密かに類似したデザインのZ−形成法を行っていたのです。そりゃあお互いに理解出来るはな!ってなわけで、意気投合して最近はこればっかりしています。それどころか毎週何例もこればっかりしています。みなさんに悦んでもらえます。

何故か?。先ず印象として自然状態であるのにきれい。数字の計算が合致する。開瞼が良好化して、明るくなる。吊り目が解消して優しい目もとになる。いい事づくしですが、ダウンタイムはなくはないです。経過的には変遷し、完成に日数がかかる。数週間の形態変化を待つ必要がある。目頭切開の定石として、肥厚性瘢痕は発生します。肥厚性瘢痕とは、いわゆるケロイドもどきで、目頭部の創跡は一定の率で(体質により)発生します。印象としては、JST; Japan Skin Type が関与する傾向にあります。色素が多いJSTⅢでは約60%の高率に生じ、日焼けで赤くなってから色素が出来る様なJSTⅡでは約40%、日焼けしても色素が増えないJSTⅠでは20%以下のようです。トータルでは術後3週間までに30%、術後6週間までに50%が生じます。緊張と動きが影響して生じるので当院のZ−形成縫による目頭切開では蒙古襞の拘縮が解除されているので,発生する肥厚性瘢痕は軽症です。内服で軽快する症例がほとんどですが,20例に1回くらいはステロイド注射を要する程の症例があります。どちらにしても半年後には軽快しています。本症例は再手術例であり、JSTⅡなのでもしかしたらです。経過を提示していきます。

今回は難しいけれど面白い症例ですが、うまくいきそうな感じ。余計な事言えば,症例患者さんのキャラクターが優しいので、良好なコースで経過するでしょう。との期待をしています。あえて念のため言っておくと、キャラクターは影響します。怖がったり、いらついたり、痛がったりすると、交感神経が亢進し、血行が低下する為、手術した部位は特に影響を受け、創傷治癒過程を遷延し得ます。すると肥厚性瘢痕を生じる原因となります。本症例はその意味では治りやすい人と見られますので、乞うご期待を。