今回、切開法の眼瞼症手術と目頭切開を併施した2症例の中期的経過写真が出揃ったので画像提示しつつ、この手術について論じてみたいと思います。
症例1:実は肥満者で、まぶたにも脂肪が多い生来の一重瞼。眼裂縦径が6.5㎜。挙筋滑動距離は12㎜と正常範囲です。眼裂横径が24㎜、内眼角間距離が39㎜。蒙古襞の拘縮が強く、まるで水かきの様な突っ張りを呈しています。ご覧いただける様に鼻根部が低い鞍鼻でもあります。術前の画像から提示します。眉の位置にも注目を。
上記の数字から、先天性の皮膚性眼瞼下垂症(=一重まぶた)と、正常範囲で(標準偏差SD1以内)はありますが、眼裂狭小状態です。鞍鼻はそれに伴う変異です。
切開法で効果を定着させたいとの希望があり、根本的には眼裂狭小状態を治さないと効果が薄れるとの認識から、皮膚性眼瞼下垂に対して、切開法重瞼術でラインは6㎜切除は2㎜とし、挙筋はLT法を加え強化しておき、眼頭切開は5㎜のZ-形成術で蒙古襞の拘縮の解除と、眼裂横径の改善を図ることとなりました。下左図は術直後、下右図は1週間後です。
眼窩脂肪を焼灼して減量したので腫脹が強いですね。1週間では開瞼程度はまだまだです。形態的には予定通りの事が出来ています。
上図は3週間で腫脹は術直後の25%程度まで引きました。傷跡はまだ赤いです。でも、ほぼ形態的には満足されていて、目力が作れて、機能的改善も著しいと感じていらっしゃいました。眉の位置も自然に下りています。
上図は6週間で、まだ、目頭だけ赤い状態です。
症例2:実は中国からの留学生です。中国でも北方出身で、むしろモンゴル系に近いようです。先天的皮膚性眼瞼下垂です。つまり一重瞼だったのが、左側はしわだけできた症例で、皮膚が下垂しています。眼裂縦径は右6.5㎜:左7㎜。挙筋滑動距離は10㎜と軽度低下です。眼裂横径は25.5㎜で内眼角間距離は37㎜で、一重瞼では標準範囲といえますが、蒙古襞の拘縮と被さりは強いため、先天性皮膚性&筋性の眼瞼下垂を増長しています。下左図は術前画像。髪を下しているため眉の位置がよく見えません。下右図は術直前で、髪をよけて写真を撮ると眉がかなり上がっているのが判ると思います。そもそも暗い雰囲気となってしまっています。
日本でならばれてもいいから、ちゃんと治したいとのことで、切開法を希望されました。下図は術前のデザイン直後。皮膚性眼瞼下垂に対しては、切除3㎜とし、重瞼ラインは瞼縁から6㎜としました。術前のフェニレフリンテストで開瞼改善のシミュレーションができたので、挙筋筋力増強のためにはLT法で充分と考えました。蒙古襞の拘縮は、4㎜のZ-形成術での解除を意図しました。下右の写真は術直後ですが、左片側の腫脹が強く、開瞼程度も不明です。但し眉はちゃんと下がっています。眼裂は拡大できているのが判りますが、サングラス等で隠さずに、晒して出歩くことは難しい状態です。時にはこのような経過もあるのが切開法です。
術後2週での再診では、まだ腫脹がピークに比べ40%程度は残っていて、開瞼改善程度は不明でした。ところが、術後1ヶ月ではすっきりして、下図のような状態です。
どうです!。可愛いでしょう。ノーメイクですが、可愛い目元ですね。日本人にはこんな顔の可愛い子がいますよね。中国にいつ戻るのかは不明ですが、普通の可愛い子として過ごしていってくれることでしょう。
実は先日、中国の上海での診療の機会がありました。その内容はまたの機会としますが、中国人の顔を沢山見てきました。印象として、日本と同じく、半分くらいは被さった一重まぶた、半分近くはクリクリした二重まぶたでした。漢民族は古モンゴロイド(南方系アジア人)と新モンゴロイド(北東系アジア人)が交配混合しているのだと思います。今回の症例2は典型的な北東系アジア人のまぶたで、機能障害を伴なっている中国人でした。
今回は、日本人の約半数によくある、被さったまぶたを改良した2症例です。一重瞼=皮膚性眼瞼下垂であるのは学会でも定説です。切開法では、保険診療が認められています。多くの症例では、蒙古襞の拘縮も伴っているので、眼頭切開を併施することをお薦めします。美容的に目頭を広げる目的の場合もありますが、蒙古襞の拘縮(ツッパリ)が眼瞼下垂を増長している場合が多いので、これからは表題にありますように、目頭拘縮解除術とも称していきたいと提唱します。
私どものホームページやブログでは、黒目整形という言葉をよく使っていて、評判の様です。狭い意味では、切らない眼瞼下垂手術=NILT法を意味しているのですが、東アジア人では程度の差が広く、酷いまぶたの状態には対応できないこともあるので、切開法+目頭拘縮解除術も黒目整形のレパートリーの一つに加えました。今後ともご利用いただければ幸いと存じます。