2014 . 11 . 10

小顔とは?から派生してⅤ-ボトックスについてⅣー

ボトックス=ボツリヌス菌毒を局所での神経筋接合部遮断のために薬剤として用いる場合このように言うことにします。(ところで他に使うとすると兵器ですが、実用化しませんでした。それにこれも全身的ですが、神経筋接合部遮断作用を求めての開発でした。)

Ⅰ:ボトックスの咬筋への使用の症例の提示から、Ⅱ:ボツリヌス菌の生物性に話が飛んで、Ⅲ:人体への薬剤としての応用。と話がやっと進んできました。

今回は、症例提示ではないのですが、長年使ってきた私達の使用法=適正量を部位別に細かく説明していきます。

量=濃度=作用分子数ですが、分子数がいくつかは直接測れないので、作用量として国際単位が世界的基準として設定されています。International Unit といい、IUと略され、医療者間では通じます。IUは具体的には、10gmのマウスを50%死亡させることが出来る量です。残酷ですが、これは実験ですから、実用化された現在は、このための殺生は行われていません。要は目的に応じて何IUを何ccの溶液に溶くかですが、薄いと作用面積が広がり、濃いと作用面積が限局するのです。この点も使用法として考慮されます。

その前に、美容医療分野以外での使用にもちょっと触れておきます。眼瞼痙攣、顔面痙攣、斜頸、攣縮、脳性麻痺における痙縮に伴う尖足。以上が厚労省が認可したボトックスの適応です。保険診療適応です。適用量は、45~300IUとなっています。このように神経科分野での有用性は広く認められてきています。患者さんにとって唯一の手段となっているものも多いようです。なお厚労省の認可とは、薬剤をテストして、データ上統計的に副作用の%を公開することに過ぎません。日常的によく使われる薬剤では、重大副作用が多発しない様にデータを公開しているだけです。ですから、通常の薬剤被害では、認可した厚労省は政治責任を取りません。日本の官僚制度はそうなっています。これまでに、重大な副作用が多発して責任を取った例は報道されましたから、数例はありますよね。例えば、エイズ、ワクチン・・。数えるほどしかありません。

その意味で、美容分野での使用では、部位と量の加減が大事です。絶対効かなくては困る病態ではないわけですから、不足は失敗ではありません。多すぎないことが重要です。美容分野では、「過ぎたるは及ばざるがごとし。」が大事です。

もうひとつ大事な点として、ボトックスの顔面のしわへの適応は、あくまでも表情しわに対する治療だということを忘れないでください。もう一度言いますが、ボトックスは神経筋接合部遮断薬です。顔面表情筋が収縮した際にできるしわを、筋力を弱めることでできにくくする治療です。何度も言いますが、自分の顔は鏡でしか見ることが出来ないので、評価が難しいのです。トーヌスというのがあるといいましたよね。生きて起きているだけで、筋は収縮しているし、表情を作ってみれば収縮します。ですから、しわを客観的に評価する必要があり、そのために美容医療者の目を使ってください。さらに、加齢で皮膚の弾力が落ちてくると、表情じわは刻まれてしまいます。紙を折り続けると、折り目が消えなくなるのと同じです。一種の形状記憶です。こうなったら、埋めなければ消せません。注入物も必要となるということです。念を押すようですが、ボトックスは、神経筋接合部を遮断して、筋の収縮を弱める治療法です。日常顔面で収縮している筋の中で、不要な動きを減らす治療です。不要な動きとは、個体の脳が異常に強い動きをさせてしまうということですから、精神的性格的な差異がさせるのです。つまり内面を反映しているのです。ずっと前に記載したことですが、「美容医療は外面と内面の調和を取りつつ、診療していかなければならない。」との原則を、ボトックス治療は踏襲しているとも考えられます。

さて、実用編として、美容医療上よく使われる部位別に説明していきましょう。と思ったのですが、長くなったので、またまた、一度投稿し、次回すぐに再開します。