2014 . 12 . 12

小顔とは?から派生してⅧ-ボトックスについてⅦー美容医療その3

これまでボトックスの美容医療での使用法について、顔の上のほうから説明してきました。ボトックスは筋に神経がつながる部分をブロックする薬ですから、しわを作りしわを刻む、嫌な表情筋の動きを弱めることができるのです。あくまでも、不要な動きを弱めるので、むしろ不快な表情を弱めることで、美しい表情または明るい若々しい表情になります。いってみれば、外面を治療することで、内面からの表現をも改良できると考えてもいいでしょう。私や父が肝に銘じてきた「美容外科は外面と内面の調和した美しさを醸し出さなければ成功といえない。」とのモットーを体現する格好の武器だといえるのではないでしょうか?。

そのためには、どの動きをどの筋が作り、どこを狙えばいいのか?。適正量には=個体差は?、年齢差は?、性差は?等々。あらゆる面でバリエーションがあり、適用量の決定には苦慮します。これまでの説明でも、幅を持って量を記載してきました。敢えていえば、過量より過小なら、追加投与することで事足りますから、最近はさじ加減として下方にしています。

もう一つ、上記の知識は世界中の美容医療医師が経験で醸成してきたものですが、それを元に最近では文献も発行されています。ただしほとんどが外国製です。白人に対する適用量はアジア人とはかなり差があるため、参考にはなりますが、そのまま使えません。私達は私達なりに試行錯誤しながら、使ってきてやっとこの程度のブログ発信が出来る程度のメニューを提示できるようになったところです。ボトックスを使う美容医療の医師は年々増加してきていますが、適正量を見いだせていないで使ったり、説明不足で過小量で済ましてしまい。転医してくる患者さんが絶えません。たかがボトックスでも、充分な説明なしには、不満を起こすのです。そのためにも、患者さんがこのブログの説明記事を参考にしていただけたら幸いです。

今回の説明には重要な知識が入っています。筋の解剖と神経支配です。細かいことはこれまで非医療者には解らないとは思います。いや美容医療者の中にもよく理解していない者が多いようです。何故なら、大学医学部では、こんなに細かいことは教えないし、国家試験にも、もちろん出題されません。また、医師になってから、勉強して二次元の図柄では覚えられても、実際に、筋や神経の走行を三次元的(立体的)に観察することは滅多に出来ません。唯一形成外科医だけが、目に出来る部分です。何故なら、外傷や顔面の疾患(=癌や先天異常など)で顔面の機能的な手術を行うのは形成外科だけだからです。((あえて細かいことを説明します。頭頚部=首から上をこういいます。頭頚部外科というのもありますが、もっと細かく分けると、耳鼻科=穴の中を診る。眼科=球を診る。脳外科=ミソを診る。歯科=歯を治す。等々があります。お判りでしょうか?、これらの科目は顔面の表情筋やその支配神経、血管を診るかではありません。形成外科が唯一これらを見るチャンスがある科目です。そして形成外科の手術をするためにはこの知識が必要不可欠なだけでなく、その知識を元に手術をするから、顔面の形態を修復し、機能を回復させることが出来るのです。実は美容外科は顔面を手術することの少ない科目です。目立つ傷跡をできるだけ減らしたいからです。したがって、形成外科を経験しないで美容外科医となった医師の中には、顔面の筋、神経の解剖後式が不足している者が多いです。形成外科専門医でない美容外科医がこれに当たります。))もう一度いうと、ボトックスのより効果的な且つ、安全な使用のためには表情筋とその支配神経を理解するべきです。ならば形成外科専門医でもある美容外科医が適正な施行医です。

今回は下顔面を説明します。これまで下顔面は、あまり使用されなかったのですが、私達は徐々に使用してきました。これも筋の形と、筋体量を、目で見て三次元的に知っているから、他の部位からの類推で可能となったのです。下顔面とは、鼻より下、下顎先=頤までです。ちなみに顎とは、上顎と下顎に分かれますが、歯の植わっている部分の骨を歯槽骨といいます。歯槽膿漏とは歯槽骨と歯の間が傷む病気です。脱線しました。

下顔面で私達がよくボトックスを投与する筋は

上口唇:口輪筋は口の周りに輪状にある筋で、収縮すると口がすぼまるのですが、口角には外に引く筋がいくつかあるので閉じる作用にも寄与します。口輪筋単独では「ウ」の発音時や、ストローやタバコを咥える時に収縮します。やってみると判りますが、口に縦じわがよります。加齢とともに皮膚の弾力が落ちると、刻まれてしまうか、戻りが遅くなります。特に上口唇が強いので、ボトックスを少量投与することがあります。過量では閉口力が落ちるのでごく少量を数カ所に分けます。通常トータルで2.5~4IUです。

口を横に広げたり、口角を挙げる筋はいくつかあるのですが、表情のうちで動かなくていい表情は滅多にありません。1回だけ若い男性で、「へらへら笑ってばっかりいるんじゃあない。」と上司に叱られてばかりいる患者さんに頼まれたことがあります。頬骨筋群が強いと判断して片側5IU打ちました。患者さんは喜んでいましたが、なんか表情が乏しくなりました。借金取りなどの強面の職業ならいいかも知れませんが、その後は行っていません。

下口唇を下げる方向の筋は、主に三体あります。頚部の広頚筋も関与します。現在よく行うのは、口角下制筋と頤筋です。

頤筋:頤に梅干し(桃でもいい)の種みたいなしわしわを作ります。滅多に刻まれては来ませんが、頤の短い人は始終力が入っています。それに、頤の軟部組織を後ろに引く方向に力が働くので、顎先がより後退します。適応者は結構います。下口輪筋に散っては困るので、少量の投与にします。両側4カ所にトータルで3IUとしています。ちゃんと頤筋に効かすには深く骨の上にある筋に投与する必要があります。

口角下制筋:口角から斜め下方向に骨につながっている筋で、口をへの字にする動きです。表情としても相手に不快ですから、なくていい表情ですし、口角が下がっているのは暗い容貌です。やはり適応者は結構います。若い人でもしていいとも思います。私はテレビ見てるとすぐ判ります。投与量は通常両側4点にトータル3IUとしていますが、不足ですと口角は挙がりません。口輪筋に散ることはまずありませんから、追加も可能な部位です。ちゃんと深く骨の上にある筋に投与する必要があります。

下顔面に続いてあえて頚部も説明します。広頚筋という筋があり、下顎縁のラインから鎖骨までの面にあります。中央部は二股に分かれています。「イー」の発音時に張りますよね。頚部はカーブを描いているのでここに帆が張ったようになります。日本人では下顎が後退している傾向がありますが、白人や、アジア人でも下顎が後退していない場合(基準はエステティックラインです。こ野天はいつか説明します。)には、頤から下にひも状に皮膚も癖になってきます。欧米ではこれをTurkey:七面鳥といい嫌います。これにボトックスはよく使われます。日本人でも頤が前に発達している人には生じてくるので、使えると思います。さらに、広頚筋は、下顎縁に付いていますが、筋膜(SMAS:これはフェイスリフトの回に説明します)を介して顔面全体を下げる力が伝わりますから、広頚筋全体を弱めれば、顔面全体の引き上げになると考えられます。ただし頚部の深部には喉があり下方には、呼吸器があるので、過量して散ったら大変です。現在適量を検討中で、先日池田院長が受けてみましたが、その際は過小量だったのか、2ヶ月で戻りました。結構な量を投与したのですが、広頚筋は筋体の面積があるので、不足なのでしょう。今後の検討を期します。

今回は半分は筋論に終始してしまいましたが、このブログの読者の皆さんはご理解いただけることと思います。