ボトックス=ボツリヌス菌毒を局所での神経筋接合部遮断のために薬剤として用いる場合このように言うことにします。
これまでⅠ:ボトックスの咬筋への使用の症例の提示から、Ⅱ:ボツリヌス菌の生物性に話が飛んで、Ⅲ:人体への薬剤としての応用。と話がやっと進んできました。Ⅳ:実際編を展開していったところ原則論に終始してしまいました。
今回こそ、長年使ってきた私達の使用法=適正量を、部位別=筋肉別に、どのようなしわに対して使うかを、細かく説明していきます。そこで顔の上方から順を追っていきます。
額の横しわ:ボトックスは、これまでの何回か説明しましたが、筋肉の動きでできるしわを筋肉の動きを弱めることでできにくくする薬です。まず額の横じわは前頭筋という筋肉が寄せます。この筋は眉毛の上から、生え際に向かってほぼ長方形に存在します。ではどのような動きかというと、眉毛を挙げる動きです。いつ動くのかについては二つあります。1、まぶたを開く際に動く人が多いのです。これまで何回も説明したように、眼瞼下垂の症状の一つです。まぶた自信の開きが足りない分を反射的に、無意識に眉毛を挙げることで、まぶたを引き上げようとするのです。起きて目を開けている間は前頭筋が収縮していますから、しわは刻まれてきます。眼瞼下垂の程度によりしわの程度に個体差があります。2、表情として、びっくりしたり、喜んだりの際にはこのような表情の動きをします。「えっ!」とか「わーい!」とか言う時の感情に伴う表情として前頭筋は収縮します。ただし、眼瞼下垂状態で常に収縮している人は表情時だけではない訳です。日本を始めとした東アジアには、眼瞼下垂遺伝子がはびこっていますから、1の要素の方が高率です。もちろん加齢性の眼瞼下垂も影響します。逆に白人では、眼瞼下垂者が低率なので、表情じわの方が高率です。白人は「Why?」とかいいながら額にしわを寄せているでしょ!。追加として、骨格も影響します。額は前頭骨という骨で、脳の前頭葉を包んでいます。よく言う思考脳です。脳の発達の結果でしょうか?、骨格の遺伝でしょうか?、額が丸みがある人から眉骨の上がくぼんでいる人まで個体差がある部位です。丸みがある方がしわはできにくいし、くぼみ気味の人は早くから、刻まれます。ゴムまりがパンパンなら凹ませにくいのに対して、空気が抜けたらクシャクシャになるのと同じ仕組みですね。なお、訂正します。骨格に前頭葉の発達が影響しているかは不明です。空気じゃなくて脳が抜けているから、しわが出来易いなどといったら怒られますから?。
という訳で、額のしわは、眼瞼下垂の治療との併用を考慮しなければなりません。ボトックスをしてみたら、眼瞼下垂状態が顕在化したから、手術もしようとか、手術しても癖が治らない人は、ボトックスも併用しようとか、どう見てもボトックスをしたら、目が開きにくくなる症例はまず眼瞼下垂手術をしましょう場合も多いのです。従ってボトックスの投与量も、ケースバイケースです。最近私どもは、全量2.5~5IUを0.2~0.4ccとし、0.02ccずつ何カ所もに分けて打つことが多いです。世界一細35ゲージ針エンゼルニードルを使うからできることです。また、多すぎると無表情になるので、足りなくても少なめにする方が安心です。追加するのは容易ですから。
眉間の縦じわ:眉間には、雛眉筋があります。眉の上に眉に沿って、中央から通常は眉の半分あたりまで筋体が存在します。外側は浅く=皮下にあり、中央は骨に着いています。筋が収縮すると、眉の上が内側に寄せられ、凹みます。さていつ動くのかは「眉を顰めるような時。」が典型的です。言葉通りには、相手の言動に対して不快な感情を表すことです。ほかに困った時や、悩む時や怒る時にも同様の表情をする人が多いですし、視力が低いためや焦点が合わないために眉を寄せる人も多いです。何れにしても、眉を顰める表情は周りからみて美しい表情ではありません。顰めるという字は、顰蹙の顰ですから、周りにも顰蹙を買います。暗い表情です。コワイ人はいつも眉にしわを寄せて凄んでいますよね。もう一つ余計なことですが、恍惚時にも眉を寄せるますね。この仕事人(893さんとAV等)を除いては、この表情を出来なくするために雛眉筋の収縮を出来なくする方が世の中のためだと考えられます。我が国は失われた20年間を過ごしてきましたから、このところ眉を顰めるようなことが多いし、実際に街中で見ても、みんなが眉間に縦じわを寄せている用に見られます。そこで、国民全体の雛眉筋の収縮を止めれば明るい、美しい国日本になるのではないでしょうか?。国家が推奨するべきだと思います。でも、総理からしてアッ眉を顰めている!。治しましょうよ〜。
使い方は雛眉筋に作用させればいいのですが、上に挙げた筋の走行に沿わなければなりません。結構ちゃんと当てるのは難しく、前頭筋の方に流れてしまったケースもあります。私は美容形成外科医なので、この部分の手術を随分しましたから、実際に目で見て筋の走行を知っています。非形成外科医では見たこともない医者がほとんどです。だから、やたらに多く投与しても、効かないか前頭筋に効いてしまう症例が他院では発生しているようで、たまに当院に来院します。
この筋体はそれなりに厚く、収縮力も強いので、投与量は少なめという訳にはいきません。最低3カ所に0.8IU×3=2.4IUを0.1cc 外側まで筋肉が強い人には0.8IU×6=4.8IUを0.2ccまで使うことがあります。ただし、多めの時には、前頭筋にまで流れてしまうことがあります。それも、額の中央半分だけが動きが落ちます。上記の額での常識として、眼瞼下垂が多いため、反射的に無意識に額の前頭筋が収縮している人が大多数なので、前頭筋の中央にボトックスが効き挙がらなくなり、前頭筋の両側外半分だけが収縮することになりますから、眉が外上がりの顔つきになってしまいます。米国ではこうなったときに、映画スターウオーズのスポック船長にそっくりだというそうです。私はこうなったときは、前頭筋の外側に全量2.5IUくらいを料金なしでで追加して差し上げています。最近は、少な目の症例が多いので、めったに起きません。一つ忘れてはいけないのは、過小量だと効かないこともあるし、外側が不足だと、しわは出来にくくなるが外側にへこみだけ残って、変な表情になることがあります。皺眉筋の全長にまんべんなく投与することが大事です。またこの筋は強く密度が高いので、ボトックスの回復期の神経再生も早く、それも少量だと(2.4IU程度)、3か月で動き始めてしまいます。それでも料金は減るし、前頭筋に散る危険はないので、頻回に来院できるなら少量がお勧めです。半年もたしたければ、4.8IUもします。どちらにしても、世界一細い自家製針、エンジェルニードルで痛みをほとんど感じないから、ボトックスは快適です。眉間のボトックスで、「明るい顔つきで明るい世の中。」にしていきましょう。
などといろいろ書き連ねていたら、額、眉間だけで長くなってしまいましたので、1回更新します。
次回目尻から下へ書き連ねていきます。