2015 . 3 . 27

形成外科、美容外科、美容皮膚科、美容整形 などの科目名称って何を意味するのでしょう。Ⅲ =学会専門医と標榜科目の関係=

各科目の説明を始めようと考えていたら、忘れていたことを思い出しました。学会の説明で専門医について触れましたが、どうやってクオリファイしているかを、書かなかったら意味がないではありませんか?。簡単に私の経験から、説明します。あくまでも、私の取得した日本形成外科学会認定専門医と、日本美容外科学会(JSAPS)専門医についてです。さらに今後の計画として各標榜科目に対して、各学会認定の専門医取得が義務づけられる予定なので、簡単に説明します。

私は医師になったのが、昭和62年ですが、平成5年に日本形成外科学会の認定する専門医(当時は認定医といいました。)を取得しました。日本形成外科学会の認定する施設で6年間の研修を受けた後に、申請しました。まず認定施設は相当する症例数を診療している、主に大学病院です。試験項目は1、申請者が手術した症例数の申請と写真:50症例の診療内容と手術記録の書類申請と10症例のサマリーと手術記録と術前、術直後、3ヶ月後の結果の写真を添えた書類申請。2、当時で4000問の問題集からのペーパー試験。3、申請10症例に対する学会試験官による口頭試問。でした。当時では9割程度の合格率だったようですが、近年では6割程度だそうです。日本形成外科学会認定の専門医は、体系付けられた解剖や生理、創傷治癒のメカニズム等の医学的基礎知識と領域の診療全般に対する医学知識を求められる上に、大学病院等で10項目にカテゴリー分けされた症例をまんべんなく経験していなければ取得できない閾の高いものです。現在は厚労省が認めています。学会員約3000人のうち約2000人が専門医です。

日本美容外科学会(JSAPS)は、現在日本形成外科学会の下部組織として厚労省に申請中ですが、昭和53年の標榜認可と学会発足直後から専門医を認定してきました。私の父も持っていました。私は医師になって、13年目に申請しました。当時の申請条件は、形成外科専門医取得後3年以上のの美容外科診療経験でした。ペーパー試験はなく、20症例のサマリーと、術前、術後3ヶ月の写真が条件でした。美容外科診療で長期的経過写真を得るのは困難でしたが、なんとかお願いして揃えられました。現在日本美容外科学会(JSAPS)の専門医は75人しかいません。

このように、学会が認定する専門医はクオリティーが高く、現在では厚労省が諮問する日本専門医機構という法人がガイドラインを決めながら、各標榜科目ごとの学会を指導し、必要な医療経験を持つものだけが認定されるのです。形成外科や美容外科においても同様です。

これまでも、何度も述べてきましたが、美容医療はビジネスに徹してばかりではいけないと思います。チェーン店はどう見てもビジネスですよね。前にも述べましたが、大学医学部での学生教育では美容医療分野の知識は得られませんから、形成外科研修をしていない者は、美容医療に必要な解剖や生理機能の知識を身に着けられません。人の見よう見まねで`やりかた`を覚えただけの美容整形屋になってしまっています。これも繰り返して述べたことですが、日本の法律では、医師となったら何科を研修したかに関係なく、診療科目を標榜することができます。美容整形屋のチェーン店では、医療をビジネスとして遂行しているので(TVコマーシャルをしているのがその証拠です。)流れ作業的に数をこなすのにいっぱいいっぱいで時間を取れませんから、体系的に美容医学を研修する機会は設けられません。

そこで、国民の「医療の高度化と専門化に伴う安全性の確保は?。」との要請に応えるべく、各標榜科目に対して、各領域の専門医の取得の義務化に向けて制度化が進められています。現在各科各領域の学会に対して、専門医の基準の制度化がやっと始まったばかりですが、各学会が厚労省の管轄する専門医機構という団体に、現在登録されつつあります。その後各科の学会認定の専門医取得が、標榜認可の条件となる方向になりそうです。まだ年限ははっきりしませんが・・。

現代の医療は日々進化していますが、専門化が進歩に寄与しているのは間違いないと考えられます。そうであれば、専門家の知識と医療技術のレベル(水準)にラインを設定するべきなのは厚労省に云われるまでもないことで、私達は以前から強調してきました。欧米が何でも進化しているとまでは言いませんが、USAでは開業時に、各学会の専門医がなくては科目を標榜できません。何でも屋の内科医でさえ、家庭医の専門医が必要だそうです。美容外科Aesthetic surgeryも専門医がなくては開業できないのです。本邦もやっとその方向に舵を切りました。TPPが影響しているのかも知れません。USAではもっと専門化していて、眼科専門医が眼形成外科、耳鼻科専門医が鼻形成外科、皮膚科専門医が美容皮膚科を開業することもできるそうです。本邦でも美容皮膚科が標榜科目になりそうです。私達は日本形成外科学会専門医と日本美容外科学会専門医を取得していますから、安全です。

美容医療の分野の中には、形成外科、美容外科、美容皮膚科が標榜科目として認可されています。美容整形は標榜科目ではありませんが、整形外科が容認すれば、あり得ないとは思いますが下部領域として美容整形が認可されるかも知れません。

日本形成外科学会は上に述べた、厚労省の管轄する専門医機構に基本領域として(標榜科目が網羅されている。)平成14年に加盟しました。したがって、専門医は厚労省のお墨付きです。将来は標榜の条件となるでしょう。美容皮膚科はまだ、標榜科目とはなっていませんが、皮膚科を標榜する医療機関の中で、美容皮膚科を主に診療しているところは多くあります。今後美容皮膚科が皮膚科の下部領域として、標榜科目に入る可能性が高いと考えられています。

問題は、美容外科です。これまでこのブログで、歴史のシリーズとして述べてきました。昭和53年に美容外科が標榜科目となる際に、二つの学会が発足しました。開業医達が主体でそれまで日本美容整形外科学会と名乗っていた団体と、大学の形成外科医達のうちで美容も診療していた医師が作っていた整容外科学会が、ともに日本美容外科学会と改名したのです。しかも二つの学会が別々に専門医を輩出してきました。これでは、オーソライズできません。専門医を標榜広告することは、他科では、平成14年には可能になったのですが、二つ学会がある日本美容外科学会の専門医は、原則的に広告が認められていませんでした。本年に入って、形成外科出身の美容外科医の団体である日本美容外科学会JSAPSは、専門医機構に申請し、日本形成外科学会の下部領域として認められる予定となりました。もう一つの日本美容外科学会JSASがどうなるかは判りません。T先生の専制的行動の結果、U先生をはじめとした、形成外科研修歴の無い美容整形屋の医療機関の先生方は、JSAPSとJSASの合併による認可を諦めた様ですから、JSASは美容整形を標榜できる様に運動するかも知れませんし、標榜なんてくだらないと、クリニック名だけの広告で行くかも知れません。いずれにしても、美容外科SMBCとか、S美容外科などという名称は違法広告になってしまうのでしょう。

皆さんは、私達が何を言いたいかが、お判りになったと思います。美容外科を診療するのに、形成外科の経験は必須と言える理由はをこれまで何度も述べましたが、その理念から、制度化に向かいつつあると考えていいのではないでしょうか?。厚労省も国民に後押しされて、良質な美容医療の人材の養成に乗り出したということではないでしょうか?。さらに言えば、アジアの一角に留まるのでなく、欧米に倣って、良質な美容医療を提供すべくの方向性が見えてきたとも考えられます。今後の展開が期されるところであります。

さあて、またまた、長い記載となりましたので、一度止めてから、次回美容医療の各科の説明を致しますので、そこのところをお許しいただきたく存じます。