2015 . 4 . 10

形成外科、美容外科、美容皮膚科、美容整形 などの科目名称って何を意味するのでしょう。Ⅴ =美容医療の各科目1=

前回世界における標榜科目と専門医の話を拙い知識から書き始めたら、意外と長くなってしまいました。でももう一度読み返したら、言い忘れていた事がありました。

それは、日本形成外科学会認定の専門医と、日本美容外科学会のJSAPSとJSASそれぞれの専門医の価値というか意味を、どう考えるか?。将来に標榜科目の資格として値するか?。難しい命題ですが、若干の考察をしてみます。

日本形成外科学会の専門医は、さすがに医学的にハイレベルで専門分野での解剖、生理、創傷治癒機転、先天異常に対する遺伝学的知識、悪性腫瘍を含む疾病の取り扱いに付いての広い、しかも深い知識が求められます。何度も言いますが、大学医学部や医大での医学教育ではこれらは要求されません。認定医試験に必要な知識で、卒前教育で得た知識は一つもありませんでした。形成外科分野は国民から医療の分野と見られていないのでしょうか?。詳しくは科目の考察で考えましょう。敢えていえば、国民に広報しない=政治家やマスコミは知性が高くなく、金にならない仕事はしない。つまり、ヤンキー指向だからですかね?。もっとも医療全般を見ても、医師国家試験に要求される知識は、実際に手術を出来る能力の20~40%位の知識しか求められませんから、新人の医師は手術できません。そして形成外科医療の教育は、ほとんど卒後にしか行われません。学会が認定した施設=主に大学病院での研修を最低6年経ないと最低限の知識の得られません。学会の11項目のカテゴリー分類があり、形成外科の担当する分野を網羅するようになっています。これらの経験症例を審査して、専門医を授与された者は形成外科の診療の水準を超えているといえます。逆に言うと形成外科専門医でなければ、形成外科の医療水準を持たないどころか、なにもできない筈です。

さて、問題は美容外科です。美容外科の専門医と言っても、これまで何度も説明して来た様に、日本美容外科学会は2つあります。JSAPSとJSASと言い分けますが、どちらも日本美容外科学会と称しています。JSAPSの専門医は形成外科を研修した後の最低3年間後に症例経験を審査されます。10項目のカテゴリー分けして美容外科診療を網羅していなければなりません。したがってJSAPSの専門医はあくまでも最低水準の美容外科診療をできる証明です。JSASは開業医の集まりで、形成外科研修を経ないで美容外科診療を始めた医師が集まっています。専門医の審査基準はちょくちょく変遷するので、不明確です。昔は学会発表や論文だけが条件でした。現在は、症例数の自己申告だけで取れる様です。いわゆる粗製濫造していますが、なぜかというと厚労省の所管する専門医機構が、学会の外形基準として専門医人数を求めているからです。何れにしても、上記の審査では現時点では、専門医といっても医学的知識を証明することではなく、症例数の審査となっています。ここが、形成外科や他の専門医との違いです。まだ、専門医機構の基準に達していない訳です。やはり専門医は症例経験の多寡だけでなく、専門的医学知識の水準に達しているかどうかを証明するものだと思います。その辺りは各科の特徴の欄にも述べたいと思います。

またまた基調的な説明を書き連ねてしまいましたが、今回やっと各科目の内容を述べます。やはり長くなったので、一部から入ります。

美容整形:美容整形は標榜科目ではないと述べてきましたが、昭和53年までは、容認されていました。整形外科は標榜科目ですから、銀座整形と看板に載せ、美容整形をしていますと副えていました。私はまだその看板を持っています。昭和53年に美容外科が標榜科目となった際に、美容整形の標榜が取り締まられることになりました。父がビルの下の立て看板を美容整形のままにしていたら、中央区保健所の役人が来て、変えるように命じられました。はいと言い、銀座美容外科と書いた紙を貼り、翌日にははがす。毎月保健所員が来る日が判るようになって、その日だけ貼る。といういたちごっこを1年間続けました。そのうち、抜き打ちで来るようになり標榜届け出を取消すといわれて諦めました。父は「美容整形を愛しているんだ!。」と泣いていました。その後は、丁度私が形成外科医、美容外科医になっていく過程で、美容外科を推進する立場に変わっていきました。

美容整形は、一般用語としてまだ蔓延っていますが、整形外科医からは糾弾されますので一般人もご留意をしましょう。マスコミや新聞が未だに使うので、許されているように思われているのでしょう。法律的には、美容整形を標榜すると、認可停止となります。

現在の美容外科と昭和53年までの美容整形は、同じですが、時代が違います。形成外科の経験、知識を応用した美容外科は、かなり高度になっていますし、患者さんにも受け入れ易いものとなっていってます。「整形?」といわれるものと美容外科医療は違うものです。

今回は美容整形までとしました。

と言ったところで、ブログですから、トピックを二つ。

4月8日を、語呂合わせでしわの日としたのは、米国の製薬会社のアラガン社の日本代理店です。もちろん、語呂合わせは日本だけでしょう。アラガン社からポスターを配られました。一部の電車内広告にも見られます。しかし、この広告に意義あり!。アラガン社はボトックスを売りたいのに、しわならなんでも効くように誤解されかねない。これが、広告の弊害です。

ボトックスは、顔面表情筋が作用(収縮)した際にできるしわ、といっても表情を止める治療です。静止時にはないか浅くて、表情時だけ目立つしわを取るのです。確かに長年作用していると刻まれていきます。さらに個体差はありますが、癖で表情筋を無意識に収縮させている人もいます。寝ている時に眉間を寄せていたり、いつも苦悩していて眉間を寄せている人もいます。そういう意味で、ボトックスは嫌な表情を止める治療です。眉間の縦じわは、英語でもFrown line と言って、訳すと怒り、当惑、悩み、苦々しい、しかめっ面、不機嫌、威圧的、険しいという、恐ろしく、嫌な感情の際に動く表情の際にできるしわです。そんな顔しないでよ!っていう時ですよね。刻まれてしまうと、いつも不機嫌そうに見えて嫌われます。他にも嫌な表情筋の作用はありますが、その辺はまたとして、今回ポスターの前で(銀座院に貼ったのです。)私が実演して写真を撮られたので、画像提示します。下左図が、眉間に`わざと`しわを寄せた写真。下右図は、`わざとらしく`笑った写真です。わざとは難しいのですが、これが表情筋の動きです。額のしわは刻まれていますので、ボトックスでは治せません。

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もう一つ、4月8日〜10日に年に一回の日本形成外科学会が京都でありました。私は大阪院から、ちょっと行ってきました。詳しいことはまたの機会として、ブログ内でも学会での知識はちょくちょく使いますし、専門医の話をしてきましたので、参加出席が必要だったのです。参加することに意義があるのです。本当は最新の形成外科医療の知見を学ぶためです。証拠として参加証を写真に撮り提示します。

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