前回本題からはずれ、話が長くなったので、ページを変えました。
各科目の意味を書いていこうと思ったのですが、何故かと言いますと、医師側にさえ誤解が生じているからです。ポイントは二つ。1:標榜科目は大学卒業後に誰でも何でも名乗れること。2:美容医療はほとんどは自費診療で、一部が保険担保だが、どちらもできる医師は限られていること。
先日、ある美容皮膚科の開業において、皮膚科医にお手伝いいただく為に談話していたら、「今度の院長さんは、美容皮膚科だけしてきたってどういう医師なのですか?。」といいました。いまや、美容皮膚科は標榜科目名として使えるので、開業時に美容皮膚科を標榜できるのです。研修歴などは条件として取り上げられません。上記の1にあるように、標榜科目は厚労省が認めたらどの医師でも認可されるのが現状です。
特に自費診療の医療機関は=つまり美容外科や美容皮膚科ですが、標榜は容易です。前にも言いましたが、大学卒業後すぐでも標榜が可能ですし、昨日まで内科の診療をしていた医師でも、今日から美容外科を標榜して診療できます。これが現状です。
対して上記の2のごとく、保険診療を担当するためには、厚労省からの別の資格(保険医療機関登録)が必要で、意外と簡単ではありません。通常、医師になって、大学等の病院で研修するために就職する際には、地域の保険所の担当者が講習に来て、保険医の資格を与えてくれますが、いきなり美容外科等の非保険医療機関に入ると、保険医の資格は与えられません。つまり保険診療は担当できません。前回のルート1の卒後コース:形成外科医として卒後研修してから、美容外科診療をも学んでいった医師だけが、保険診療と自費診療を使い分けられます。よく患者さんに尋ねられます。「何でこちらは保険もしていて、あちらは自費だけなんですか?。」それはこんな理由です。
さて個別に標榜科目を説明する前に、もう一度標榜科目とは何かを説明します。厚労省が決めた名称で、医療機関が広告することができる科目です。雑誌やホームページの広告に、名刺状の部分がありますよね。ここに載せられる科目名です。医院の看板もですから、○○美容整形クリニックと書いているところはありません。テレビのCMでのアナウンスも同様です。だから、美容整形とは言わないでしょ。でもテレビ番組中でオバカな芸人達が「セーケー!」とほざくことや、新聞雑誌の記事中で、低能な新聞雑誌記者が美容整形と書くのは、勝手にすればいいことで、標榜科目とは、あくまでも医療機関が広告する際に使うことができる科目名ということです。
やっと、各科目の違いを説明する段となりました。今回は、形成外科、美容外科、美容皮膚科等の説明をしますが、その前にもっと大きな括りでの説明もします。
まず医師の資格とは何か?;傷病(外傷も疾病も)を診療するという、患者に侵襲を加える行為を唯一許される資格です。切るとか、薬をのませるのは、医師以外の人がしたら傷害罪になる訳で、医療行為として、医師の資格を持ったものだけができるのです。ですから、患者の求めで、患者のためになる行為しかできません。逆に言えば、患者のためにする診療行為は、医師なら何でもできる訳ですが、何が正しい診療行為かは、その時代の医療水準に則っていなければならない訳で、そのためには専門領域をもって、研修、研鑽そして経験を積まなければ、ならない筈です。美容医療も同様です。
標榜科目には、大きく分けて外科系と内科系がありますよね。形成外科や、美容外科はもちろん外科系です。他にもいろいろありますよね。基本的に体内への侵襲を伴う治療を行う科目です。臓器ごとや、部位別に細かく科目が分かれていますが、形成外科や美容外科は目的別の科目です。内科系は基本的に手術をしませんが、時には手術に準じた体内への侵襲を伴う診療(検査や、注射等)も行います。ちなみに皮膚科は内科系です。体表面に薬を塗るまでが専門領域といえます。他の臓器の内科領域は体内を診療するのですが、原則として体内に侵入する侵襲を加えません。
ところで、それぞれの専門領域の医療水準は、どのように推移していくのかと考えますと、やはり学会単位での議論によると言えます。日本医学会という団体が日本医師会の下部団体としてあり、各科目ごとの学会が加盟しています。厚労省は、日本医学会に属している各学会の認定した専門医の知識に基づいた医療行為をを各領域の医療水準として考えています。
学会とは何をする場なのでしょうか?。研究発表をする会です。参加して講演を見聞きして勉強をする会です。一定の知識を持って症例経験がある者に専門医を認定する機関です。実際に会合には、全国単位や、地域単位がありますが、ほぼ全員が集まり、最新の知見を得ようとします。発表内容は、解剖や生理の知識の理論的裏付けに基づいた実際の症例経験を提示たり、多数症例の統計を取って解析したり、確立した診療方法のレクチャーを行います。こうして、その分野(科目)での科学的(医学的)な水準が得られていくのです。その時代のその分野での必要充分な知識を得られるようになり、その上で経験を積んでいき各々の医師の医療技術が向上していくのです。年に1回や数回の会での議論の上での知見が、その時代の医療水準を示すと言える訳です。積み重ねも重要です。日本全国や全世界の分野ごとのすべての症例が集まれば、時には有害事象が発見されたり、有用性(損益のバランス)の評価が確立していきます。過去の症例にも学ぶことができるということです。学会って為になりますよね。症例の積み重ねと数量が半端じゃない訳です。その時代の全症例を網羅する機会も設けられることがあります。インターネットや広告で提示される症例は少数で、いい結果だけのものや、他院での不良結果の修正症例等が選ばれますから、それぞれの分野のその時代での医療水準を提示でき得ません。学会単位の知見が適正な水準なのだと言えます。
またまた、長くなりました。私達の関係する各科目の説明をしようと思ったのですが、一度閉めて、次回美容医療分野の交錯した各標榜科目や分野を説明します。