今回の症例は27歳、女性。18歳時にS美容外科でI型プロテーシスによる隆鼻術を受けている。
自覚的に次第に短縮してきた。太い思うとの訴えで来院されました。
他覚的には棒状でその割に鼻根が低く、またプロテーシスが短い。鼻稜が太い。鼻尖が上向いて、その下が平らで、鼻尖が角張っていて、横四角形。触診すると骨膜上に入っている。
そこでプロテーシスを作り替えて、軟骨2枚でダイアモンド型の鼻尖を形造る事を提案しました。
上記画像は上の列が正面像、下の列が左側面像です。どちらも左が術前(側面像の画像データが壊れたので斜位)、中が術直後、右が1週間後です。
上に記載した問題点を改善出来ました。過剰書きします。1、棒状でその割に鼻根が低く、またプロテーシスが短い。鼻稜が太い。これらの修正は、正面像を見てもらえればよく解ると思います。術前斜位像で鼻根部がガクンと落ち込んでいるのが、術後側面像では流れる様に眉間に繫がる鼻筋に出来ました。術後1週間の画像では斜めになって見えますが、プロテーシスが曲がっているのではなく、撮影時に顔が傾いていたのです。とにかく鼻筋が自然状態であり得る形に出来ました。2、鼻尖が上向いて、その下が平らで、鼻尖が角張っていて、横四角形。斜位像と側面像の比較は難しいかと思いますが、術前の鼻尖を見ると確かに四角い形で、鼻尖の下が平面になっています。鼻尖の位置は画像では比較が難しいのですが、術前に比べ術後は2㎜下になりました。術後正面像で見ると、鼻尖の輪郭がダイアモンド型に近づきました。鼻尖は3、触診すると骨膜上に入っている。画像では解りにくいと思いますが、正面像での鼻筋が眉間に向かって流れる様に繫がる形は鼻根部が骨膜下に入っているからです。術後側面像での、鼻筋のカーブも自然状態にあり得る綺麗な流れだと見えます。もちろん触診すると、術前は浮いていて動かせて表情によっても動くプロテーシスが、術後は浮いていませんし動きません。
今回の症例の画像は、一部壊れていたので撮り直します。次回にご期待ください。本当にいい形なんですから!。しかも自然状態にあり得る形に出来ました。鼻スジはI型プロテーシスで、鼻尖は耳介軟骨2枚での組み合わせ手術は安全に良い形が作れます。
敢えて下に、二つの問題点を示します。
私は軟骨移植の際には、オープンアプローチを使わせてもらっています。鼻尖形成術には、軟骨縫合法=小さくするが高くならない。軟骨移植=高くなるが余り長くならない。延長術=長くなるが余り高く出来ない。の3種類の手術法があります。どのような鼻尖で、鼻スジとのバランスで、どのような形態を求めるかで手術法を選ぶべきです。私は縫合だけで済む症例は30%程度だと思います。縫合だけなら、オープンの必要はありません。日本人は経済的成長の結果鼻骨の成長が進み、鼻陵は高くなりました。ところが鼻尖の軟骨の成長は進みませんでした。したがって多くの症例で鼻尖形成術としては高くしたいものです。軟骨移植は1枚1㎜と計算がしやすく、3枚までは可能で、適応が広いです。延長術は手術が煩雑で犠牲も大きいので、余り好んで行われません。私は、延長を「求められた」際だけ説明しつつ検討します。軟骨移植である程度の延長効果を得られると思います(その分高く出来ないですが)。軟骨移植と延長術は万が一曲がって入ると話にならないし、自家組織を使う際には材料に限界があるので、オープンライのプラスティーを頻用します。目で見て中央に入れて、形を上手に作りたいからです。オープンライノプラスティー;Open Rhinoplasty とは、両側鼻孔縁切開を鼻柱横切開で連続して、鼻尖までの皮膚皮下組織を剥離挙上する方法です。鼻翼軟骨(鼻尖の軟骨だがこういう)の形態を直視下で確認出来ます。プロテーシスが入っていたり、何らかの操作が成されていたりすると、大抵左右差があります。もちろんその場合修正します。そして軟骨移植をする際には、乗せてみて形態を見ながら固定出来る為、結果が予測出来ます。ですから、軟骨移植の際はオープン法を用います。
ただし下の画像にある様に、当初は創跡が見えます。とはいっても下から見なければ判りませんが、赤い線があります。平均的には、1ヶ月で幅の細い白い線になります。問題は段差です。鼻尖側の皮膚は腫れて膨らみます。鼻柱の段差は治りますが、両サイドの角に卍型に段差が出来ると目立ちます。最近私は、角を斜めに逃がして切ることで段差が見えない様に出来ています。ただいずれにしても数週間は見えるので、メイクで隠してもらうしかないのが実情です。
もう一つ、耳介軟骨の採取部位には、あくまでも犠牲を伴います。下の画像は、抜糸後の耳後ろの創跡です。耳の皮膚は身体中で一番薄いので、糸が喰い込んだ跡が見えます。これも、最終的には白くなりますし、耳後ろの折れ返りにある為目立たないのですが、術後1週間の間は耳の前面にもガーゼと綿が必要です。軟骨を抜いた隙間に血が貯まらない様に、耳の前後を挟んで綿を糸で止めます。これが、ちょっと動かすと痛いのです。就寝時に横向きで当たるとキーンと痛いそうです。それに濡らせないので困るようです。1週間は気を付けてもらうしかないのが実情です。圧迫を外して血が貯まると、その跡がカリフラワー状になり、まず治せません。お相撲さんや柔道選手やレスラーやラガー等耳を擦るコンタクトスポーツ選手がなっているやつですよ。女性がなったら恥ずかしいでしょ。私は1回経験があるため、念には念を入れる様にしています。
もちろんこれらの合併症は、中期的には治ります。長期的に良好な形態を保つには今回の手術が最適です。私の28年の経験上到達した、最良の方法の一つだと考えられます。形成外科学の研鑽で培った高度な知識と、美容外科学JSAPSで作り上げたコンセンサスがこの手術法です。美容整形チェーン店には出来ない技です。事実S美容外科で受けた症例患者さんに対して、私は初診時に見た瞬間苦笑いしてしまいました。
これを美学といいます。美容外科学の中でも、外鼻は人格を推測させる最たる部位なのです。バリエーションが広いのですが、一言で言って低いと、「ダサい!。イモい!。野暮ったい!」「貧乏くさい!」ので、先ず高くしたいのですが、かといって自然状態にある様な形でないと「バレバレだしー、ヘーンな顔!」ってことになります。鼻には患者さんと美容外科医の美学が表出します。
まだ出来上がりではありません。ちゃんとした画像を提示しますから、次回をお楽しみに!