黒目整形は大多数の人間が適応します。特にアジア人では一重まぶたを二重瞼にする重瞼術が適応どころか機能的に必須ですし、一重まぶたの人は眼瞼下垂症を伴うことが多いので、黒目整形を併用するべき症例がほとんどです。そのほうが美しい形態を呈しますし、美しい形態は良好な機能に宿するとは私がいつも提唱していることなのでご存知でしょう。誰が受けても良好な経過と結果を得られます。ですから、黒目整形は提示症例になることが多いのです。
今回何故か、他の医師が診察して手術予定を立てていたのに、患者さんの都合で私の担当日に回ってきました。私は手術予定で一杯なので、本年から勉強を兼ねてアルバイトに来ている新進の形成外科医に手術を教えながらしてもらいました。
症例の患者さんは25歳の女性。一重まぶたです。挙筋筋力は正常下限でしょう。眼裂横径が大きくないので、縦径が得られない典型例です。一重まぶた症例には多発することです。
NILT法=切らない眼瞼下垂症手術は、眼裂縦径を拡大する手術です。眼瞼挙筋が収縮して瞼を開く際には、脳が筋力をコントロールしますが、筋力には限界があります。そこで、眉毛を挙げて助けようとします。これを代償といいます。上掲した術前術直後の画像を比べてみれば判りますよね。そして、一重まぶたを二重瞼にして皮膚を挙げたら瞼縁が露出しました。その瞼縁が挙がったのもよく判りますよね。重瞼術によって皮膚を引き上げても瞼縁が挙がっていなかったら余計に眠そうになってしまします。ですから、重瞼術を施行する際には眼瞼下垂手術を併用する方が良い結果をもたらすのです。こうして黒目を露出し、眼をキラキラさせるのを黒目整形というのは大当たりです。
紹介します。術者の吉澤先生はJ大学の形成外科医局員ですが、本年から月曜日に当院にアルバイトにに来ています。形成外科医10年生で、学会認定医はもちろん取得していて、現在医学博士も申請中と脂がのっています。当院に美容医療を学びに来ています。月曜は私の診療担当日ですから、毎週私の助手をしてきて美容外科を基礎から研鑽中です。形成外科医ですから、私との知識との交換ができます。言葉(専門用語)を知っているからです。手術法は覚えて行っていますが、一つの手術を概ね3回程助手をしてもらってからその手術の術者をさせています。今回で黒目整形は3例です。
ただし上に述べたように、本症例の初診は他の医師ですから、手術を決定したのは吉沢先生ではありません。デザインは術直前に吉沢先生が決めました。無難なラインです。やはり、診察し説明して手術にいたり、経過もダウンタイムも診療していくようになるまで、一人前とはいえません。
そうです。形成外科・美容外科の定型的な手術だと、術前の診察の結果としてのデザインが出来栄えの60%を左右します。術後の経過的変遷を推測し予想して、さらに経過中も患者さんを支えていくことが大事です。そこは私達ベテランには叶いませんよね。本症例でも少しは腫れています。開きもオーバーでしょう。この点をフォローしていくのが私の務めで、今後この面からも、経過を提示していくことが本ブログの務めです。
そして術後2週間で来院されました。腫脹は目につきません。でも何か左右差が見えます。いやよく見ると上眼瞼はシンメ;Symmetricだ。下眼瞼がアシメ;Asymmetricなんだ。
そこで下に術前術後の左右の近接画像を提示します。
ムムッ!なんか左右差がある。右下眼瞼の下がりがあります。何でしょう?。よく見ると、術前は左下眼瞼が下がっています。術直後には僅かに右下眼瞼が低い様です。そうです。下眼瞼も動くのです。目を開く際に上眼瞼は12㎜以上動かせるのが正常範囲ですが、下眼瞼は1〜3㎜しか動きません。ですが、下眼瞼では縁の上に白目がそれだけ見えるか見えないかで印象を左右してしまいます。第一眼位で下眼瞼は角膜の下円弧に接しているのが正常です。
ところが眼瞼の窓を小さくする(=閉じる)眼輪筋は表情筋でもありますから、動作で変化します。表情筋は感情でも動くし、意識しても動きます。ニコッとした際には、下眼瞼は挙がりますし、意識して目を開く、例えば写真を取る時に下眼瞼は下がることもあります。そして表情筋の作用は左右非対称なことも多いのです。
表情筋は生まれつきでは左右対称性に動きます。だから赤ちゃんの表情は屈託が無いと捉えられるのです。ところが、人間は感情の動物であると共に知性を持つホモサピエンスですから、考えて意識的に表情を作る様に成長していきます。嘲笑うとか、嘘泣きとか、意地悪な表情等は、脳の前頭葉が司るので表情に左右差があります。成人では、私の調べたところ右利きの人の70%が、顔面表情筋も右利きです。過去に父が森川の法則として学会で発表しました。
脱線しました。今度は写真を取る際に気を付けます。リラックスして安楽な表情で撮ってみます。また、上眼瞼を開く上眼瞼挙筋は表情筋ではありません。自律神経にコントロールされています。私達の手術は挙筋を短縮して開瞼を強化しているだけです。自律神経とは、交感神経(興奮)と副交感神経(休息)のバランすですから、気分で強弱が変わります。興奮すると目がカッと開く、疲れて気が抜けると目がとろんとする。仕舞いには眠くなる。こんな行動は動物的な脳である間脳の視床下部の作用です。
さあ、私もブログを書き終えたら一休み、休憩タイムとします。まぶたが重くなって来ました。っと思ったら、次の患者さんの手術の準備が整いましたと。カッと目を見開いて手術に臨みます。
次の治療はPRP療法と、スレッドリフトの組み合わせです。またまた、私と吉沢先生二人で共同手術。一部は指導ながら彼にさせたいと思います。