いきなりこれだ!って書いてみましたが、要するに鼻の下を短くする為の最高のデザインがこれなんです。まだ手術直後ですが、いきなり画像からお見せします。でも正直言って、当日の画像だけでは皆さんの評価の対称にならないと思います。これだ!も何もあったものでは無いかもしれません。ですから、術後経過の参考になるのはまだまだ先になります。本日は術前の診察時の内容が主体のなります。
上の2画像は術前と術直後の正面像です。
上の2画像は術前と術直後の右斜位像です。これが印象をよく示していますから、今回は提示しました。術前はぺたっとしているのが、術後にしまった感じになっています。
それでは説明します。症例はアラウンド40歳の女性。顔のバランスとして下顔面(*注1)の割合が長いタイプである事を治したいと来院されました。このブログシリーズの中で症例の画像をご覧いただいて、いきなり「見た中で一番形がいいし、創跡の位置が適切で、それでいて創跡がほとんど見えなくなっているのはこちらだけです。」とお褒めに預かりました。
そこでいきなりサイズ計測に入ります。鼻柱基部〜Cupid’s bowの底を計りますが、15㎜でした。これまで書いて来た様に15㎜が基準です。いやな予感がしたのです。実は私、一目見てあんまり長くないかも、でもなんかモッタリしている口元だなあ、と思ったのでいきなり計ってみたんです。聴くと元々上口唇の幅が無かったので、赤Tattoをして唇を幅広にしていたのです。だから距離も不明なのですが、もう一つ口角だけが薄く寂しいからでもあり、下がっていないのに暗い感じがもします。
なのでえ〜、私は診察時の当初は、短縮術の適応かどうか迷いました。でもなんかモソっとした口元が治せないか考えました。唇は口腔の前にあり口腔の前壁は歯槽と歯です。歯槽や歯が貧弱ですから、ぺたっとしていて唇も貧弱感があり、その為に長くないのに長く見える。例えれば日本人(アジア人)の平板な中顔面がノッペリしている為にやつれて見えるのと似ている形態です。
だとしたらやはり、長く見えるのは短くしてしまいたい希望は汲めます。少なくとも短くして悪い事は無い。でも数字的には?、と腕を組んで考えていたら、患者さんが画像を出して来ました。「こんな感じのかなり短い人も居ますよね?」と問われるも、その画像は今売れているタレントの画像でした。「ほおほお、これなら目標にしてもいいと思いますね。」私は納得しました。そして、これまで15㎜を標準目標と決めつけて来た事を恥じ、撤回します。そうです。前にブログにちょっとかきました。口唇(白唇部を含む)の表現は、下品から酷薄(冷たい感じ)まで多様性があるだけでなく、前突はアジア人の出っ歯として嫌われるのはよくありますが、逆に歯槽が後退して非アジア系なのに、口唇そのものが薄いと冷たい感じになるのです。結局数字だけでなく、周囲とのバランスが雰囲気を醸し出す部位であるのを再認識しました。
と言う事でまず口唇(鼻の下は白唇部です。)短縮術を適応しました。第一には患者さんの希望です。第二には、私は下顔面を見つめたら、結果が見えて来ました。さてデザインの検討に入ります。患者さんが初診時に評価して下さいました2点があります。
まず鼻孔底の堤を切らない事。他院で鼻の孔の中に切り込んだ症例が画像提示されています。するとどうなるか?、鼻の孔の下の縁には膨らみがあります。これがあるから、鼻の中が隠れています。確かに創跡が隠れるのですが、堤を切除すると鼻の孔の中が見えてしまいます。私は知っています。人体の構造には目的があるのです。創跡は形成外科医が縫合すれば目立たなく出来ますから、見える場所にあってもいいのです。これは形成外科・美容外科の専門医の優位性です。
もう一つの鼻翼までの切開とし鼻唇溝まで延長しない事。白唇部短縮術の手術は切除幅だけ引き上がります。両側の鼻翼基部(*注2)間だけ切除すれば赤唇はその下方の部分だけ挙がります。つまり口角部は挙がりません。原法はこのデザインですが、当初私は鼻唇溝まで延長して切除し口角を挙げる様にデザインしていました。しかしやはり、さすがに症例によっては、創跡が見えてしまう事がありました。ご紹介して来た様に3年前に口角挙上術を導入してからは、鼻孔底の堤の麓での鼻翼基部間の切除と赤唇縁での口角挙上術を併用する事で口唇全幅を短縮=挙上するデザインを常用する様になりました。ブログで提示した症例もございます。本症例の患者さんもこれを見て望んでこられました。
そこで口角挙上術のデザインを検討します。患者さんは「口角が薄く後退しているのは当然としても、それより内側まで薄いのです。」「先生のブログでは5〜7㎜上、内側に5〜7㎜三角形に切除とありますよね。」私「これまでその範囲で調整して来ました。」患者さんは「でも私、口角はそんなに下がっていないので、するのなら内側までしっかり切除して下さい。台形でもいいから。」と提案されました。よーく診ますと、確かに口角から1㎝内側まで薄く貧弱です。私は「台形切除は、調べたところチリの医者が発表しています。それは賛成です。それに鼻翼幅が34㎜と小さいので、ここだけ切除すると、口角が下がる。だから赤唇縁での挙上術が必要なのです。だったら鼻翼基部の直下まで赤唇縁を切除するデザインが求められますね。」と廻りくどく説明して同意しました。その瞬間患者さんは微笑み、私をカウンセリングする様に画像を取り出し、「じゃあ書いてみま下さい。」と促します。当人の写真の上にペンで書いてみてデザインを提示してみたら、患者さんは目をキラキラして乗り出しました。「お願いします。」
実は上のConsultation; 診察または協議(counseling; 指導や助言ではない。)は初診時ですから、手術へ到ったのは有り難いのですが、こんな細かいデザインは当日まで覚えていられません。カルテには記載しておきましたが、細かいので手術当日確認していたらもう面倒なので診察室で「書いてしまいます。」となりました。更に患者さんは「左はアートメイクで幅を作っています。右は縁です。」とか難しい事言い出します。「では左だけ書いておきましょう。右は同じデザインを縁にします。」という事になりました。術前の写真は術前の確認の為の診察の直後に撮りましたから、インクで書いたままです。手術直前にはその上をなぞって書き足しましたが、写真を撮り忘れました。今考えると惜しい事しました。
白唇部短縮術はこれまでブログで何例か提示しました症例と同じく、型の如くの手術です。 深さは選べますが、本症例はやや裏返られせたいので、皮下脂肪層まで切除し、口輪筋をPlication; 折り畳む事にしました。勿論3層縫合です。2層めの真皮縫合の終わった時点で創はピッタリ寄っていました。赤唇に若干の厚みが出来てゴージャス感が作り上げられます。口角挙上術は下口唇縁まで切開を延長してたわみを無くすデザインです。口角を口輪筋ごと移動させて引き上げます。あたかも微笑んでいる様な口元が作り上げられます。
画像上、術直後の腫脹と傷の為に形態の評価は難しいと思います。1週間で抜糸の頃にはどうでしょう?。唇周囲は血行が豊富なので腫脹が強く、表情筋である口輪筋が効かないため、力の無い写真になっています。でも血行が良いため腫脹の軽快も筋の回復も遷延しない傾向にあります。次週には評価出来るでしょうか?。お楽しみに!。
今回のブログでは、術前のconsultation のない様に終始しました。大事なことです。でも内容からしてまるで対談本の様になってしまいました。いや私の体験談または日記みたいにも読めますよね。そうかっ!、ブログとは日記の様なものです。ならば次回次週に繋げましょう。
注1;顔面の縦長は3等分出来る。生え際から眉下までが上顔面、眉下から鼻下までが中顔面、鼻下から頤先端までが下顔面です。もちろん体格に比例しますし、何頭身かにより変動しますが、上中下とも6㎝が平均です。
注2;鼻と唇の折れ返りには基準点を設定します。鼻の下から、鼻翼へと立ち上がる点を鼻翼基部と呼びます。鼻柱の付け根の両側の点を鼻柱基部と呼びます。口唇裂の手術に置いては左右のずれを引き戻す必要があります。基準点を計測して切除と縫合をする際に、両側のこの基準2点を対称にすることで形態的に対称性を作り上げる為にデザイン上重要だからです。形成外科医だからこそ知っている事です。口唇短縮術には必要な知識であるにも関わらず、チェーン店系の非形成外科系美容整形屋は知る由もありません。