まずは画像を提示します。
約1か月前に黒目整形から始めた患者さんの第二弾手術を施行しました。黒目整形はその名のとおりに、黒目の露出を増やす手術です。視界が良くなり、眼を開きやすくするという意味で機能的手術です。上の2枚画像はその術前術後ですが、左右の画像は同じ正面視でも眼球の露出サイズに明らかな差が見られます。
しかし、皮膚の余剰は二重を広げて持ち上げただけなので、余分な皮膚が上に行っただけですから、上が膨らんでいます。それにやはり、機能的にも邪魔ですから、眼を開く際に前頭筋が収縮する反射運動はそのまま残りました。この状態に対しては当然、皮膚の余剰を切除するべきでありますが、切除をする部位を2カ所から選べます。眼瞼の二重瞼の線の上で切除する方法は従来のしわたるみ取り手術ですが、皮膚切除だけを目的とするなら、眉下で切除する方法があります。
上2枚の画像がその術前術直後の画像です。術直後には眉が挙がらなくなったのに開瞼大は変わりません。皮膚余剰を除去したら、眉を挙げなくなったのです。でも眉を挙げなくなった分の皮膚は眼瞼に貯まっています。一見すると皮膚が減っていない様に見えるかも知れません。でも眉が挙がらない動的形態の方が若々しいです。そもそも手術直後は腫れています。
実は当初から黒目整形と眉下切除を併施するサジェストをした覚えがあります。余り薦めなかったので、患者さんには伝わらなかったかもしれません。何故かというと、切除すれば時間が掛かります。1回目にまず、黒目整形で機能的改善を主体としておいて、2回目に皮膚切除して形態的にも改善しようというプランを立てたのです。2回目に満を持して手術に臨んだのです。実際はともに機能的と形態的改善に寄与します。いつも言ってきたように、良好な機能は良好な形態に宿る。美しい形態は良好な機能を呈するのです。
症例をもう一度説明します。58歳、女性。先天的には奥二重だった?。一度埋没法で二重を広げている。ハードコンタクトを30年、ソフトコンタクトを10年装用してきた。LF:挙筋筋力(滑動距離)13mmと先天性筋力低下ではなく、後天性腱膜性眼瞼下垂症である。シミュレーションしてみると、重瞼線を1mm挙げれば弛緩した皮膚を持ち上げられるし、形態的にやり過ぎ感も呈さないことが見て取られた。本症例は切らない眼瞼下垂手術が黒目整形として有用な患者さんだと判断しました。そこでまずNILT法が使えました。皮膚の切除は後の課題として、まず機能的改善を図る事にしました。切らない手術は容易に受けられますから、社会人には第一選択になります。
NILT法では腫れぼったさは残りました。切らない眼瞼下垂手術=黒目整形非切開法=NILT法では、落ちてきた皮膚、眼輪筋、眼窩脂肪を上に持ち上げますから、被さりは無くなりますが、ラインの上に貯まります。でも黒目が出て目力が入ります。患者さんも「視界が広がって嬉しい。でもぼてっとしている。」と善し悪し二面を訴えました。それはある程度想定内です。「機能面はLT法で改善を、形態面は皮膚の余剰ですから、眉下で切除しましょう。」と提案したら、早速乗って来ました。日程が立てられるるそうです。こうして眉下切開の予定を立てました。
今回の眉下切開手術の術前術後の画像を、もう一度提示します。眼瞼の重瞼線で切開すると、多くの場合に腫脹が丸見えで、そのために重瞼幅が広がって派手な状態になります。内出血が広がり下眼瞼までになることもあります。対して眉下切除では、創は丸見えで腫脹も起きますが、重瞼に対する影響が少ないので傷さえ隠せば出掛けられます。多くの方が、眼鏡のフレームが太めのを用意して隠せると仰います。手術適応年代の多くの方は眼鏡を使う年代なので違和感を感じさせない様です。上の画像は手術直後です。縫合糸は透明なので見えないのですが、さすがに直後には出血が滲んでいるのが見えます。翌日には必ず止まりますから、周囲からの傷としての認識は薄れます。あとは腫脹や内出血が亢進しない様に祈るだけです。48時間後まではあり得ます。
このように段階を経ての手術では、形態と機能の変遷を確認しながら、受けられるメリットがあります。とはいっても、その適応は多様です。人間種の個人間には結構な個体差があります。毎回言うように、一重瞼と二重まぶたでは大違いです。蒙古襞の程度にも差が大きく、形態と機能の両面に影響します。それに眼瞼の組織は量的に個体差が大きく、機能と形態に大きく影響します。機能的には挙筋の筋力の大小と挙上力が眼瞼縁に伝わるかどうかですが、診察と検査で判ります。形態的な皮膚と眼輪筋の量と下垂度はシミュレーションで判ります。しかしどちらも機能と形態の両面に影響します。
人間は生物で機械ではないので個体差があるため、誰もが同じ治療が適応するのではないのです。チェーン店系美容整形屋はバリエーションを習得していませんから、治療の引き出しが少ないのです。それに宣伝(ホームページも含める。)を見てくる患者さんは、宣伝に載っているのもしかしたがりませんし、チェーン店はオートメーションですから、一人ひとりのデザイン検討に時間をかけられません。私はこうして、ブログで個々に様々な患者さんの診療内容(主に手術)を説明していますから、多様な患者さん多様な希望を汲んで、広い引き出しから選んで治療しています。
ただし前提として機能的には正常に再建するべきです。一重瞼は二重瞼に、先天性でも後天性でも眼瞼下垂症は挙上力を正常にするべきです。更に組織の量が多く機能的に阻害していなら除去を、形態的に邪魔なら除去をする事が求められますが、切除はダウンタイムが必要なので準備を要します。本症例の様に漸次治療していく手もあります。眉下は平均して比較的ダウンタイムが短いので2次手術としても受け易いと思います。
眉下は楽な手術の部類です。本当にそうなのかは経過次第です。次回どの程度の腫れ、内出血で済むかが楽しみです。