2017 . 6 . 1

可哀そうな目元を普通にしてあげた症例の術後1週間

今回の症例は典型的な一重瞼で先天性眼瞼下垂症。蒙古襞の拘縮も強く、Puffy eye で腫れぼったい。眼窩脂肪ヘルニアです。前頭筋が常時収縮して眉毛が挙がっています。

まず下の術前術直後の画像をご覧ください。術前は可哀そうな感じです。術直後はきりっとしました。更に術後1週間の画像も見ますと、パッチリとしました。

症例は24歳、女性。先天性の一重瞼=先天性の皮膚性眼瞼下垂症。挙筋機能=挙筋滑動距離:11mmと低下がみられる軽度の先天性筋性眼瞼下垂症。角膜中心間距離58mm(平均60mm)と離れていないのに、眼裂横径24mmで内眼角間距離36mmと目が離れている。つまり蒙古襞の被さりが多い。その結果蒙古襞が縦に突っ張っている。この組み合わせは東アジア人特有の遺伝子型です。とにかく何とかしたいので私を受診しました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

用手的な下眼瞼圧迫で上眼瞼全体が膨らむので眼窩脂肪ヘルニアが判ります。フェニレフリンテストでは十分に開く。筋力の低下は横径が小さいからです。いつものやつ:眼瞼下垂手術切開法と4mmのZ-形成法での目頭切開の適応です。デザイン:アイプチでしわがいくつかあり、下のライン3.5mm幅で3.5mm幅の切除を予定しました。眼窩脂肪は処理する予定としました。一辺4mmの60度のZ-形成を蒙古襞の下端から稜線に沿ってしました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

さて手術ですが、皮膚そして眼輪筋と切除していくと、いきなり眼窩脂肪が膨らんでむにょむにょっと盛り上がってきました。これはヘルニアです。これが、瞼板の前にも乗っかっていると重瞼が固定できませんから、まずはどけてみます。でもすぐに乗っかってしまいます。次には焼いて収縮させてみました。脂ですからよく揚がります。かなりヘルニアする容量は減りましたが、まだ瞼板前に乗って邪魔します。第三の手として、切除に入ります。まず挟んで切り取り、出血を止めるために断端を焼きます。これでやっと瞼板の前が上縁まで露出できました。こうなればそこを連結して重瞼線を設定できます。この後の手技は定型的です。

眼窩脂肪ヘルニアは実はそう多くは存在しません。診察してみると、眼窩脂肪ヘルニアの状態の人は全体の20%以下です。でも、実は開けてみなければ断言はできません。眼窩脂肪ヘルニアとは、瞼板上縁より下に眼窩脂肪があるというだけで、量の問題ではありません。本症例では、下眼瞼圧迫で眼窩脂肪ヘルニアが診られ、術前にPuffy eye が診断されました。その場合に費用は加わりませんが、手術の時間を用意しておかなければなりません。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA114949 .

さて術後経過=ダウンタイムの差ですが、今回は術後3日目の来院時も撮影させていただきました。上左図が術直後で、上右図が術後3日目です。さすがに一部に内出血が見られます。腫脹はそんなにひどくなってはいません。眼窩脂肪はやわらかい脂肪なので、焼いたり切ったりして侵襲を加えるとすぐ浮腫みます。腫れぼったい瞼を手術したのに、手術後も腫れるのです。必ず引きます。いつも言っていますが、通常は術直後よりも48時間の方が腫脹等は亢進します。術後3日はピークです。そして下図は術後1週間の抜糸直後です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

パッチリ開き、腫れぼったさも解消中です。眼窩脂肪は軟らかい組織ですから、浮腫むと軽快に時間がかかります。ただし、開瞼が良好化し、皮膚も持ち上がり、瞼縁が露出しました。前頭筋が収縮しなくなり、眉を挙げなくなりました。結果眉と瞼の間の面積が減った為に、腫れぼったさが気にならなくなりました。少なくとも、見た目にはよく目が開いていて、とぼけた、眠そうな、怖い表情ではなくなっています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

近接像ではとにかく目が大きく露出し、瞼縁も露出しています。目頭の創跡は赤いくの字の線が見えますが、肥厚はまだ診られません。この点は中期的経過(約6週間)を診ましょう。

本症例は瞼の先天性異常を備えた典型的な患者さんです。少なからずの人が、こんな顔はどこにでも居るじゃあ無いか?ッと思うかも知れません。その人は、異常な形態と機能を見慣れているか、自分が異常なのかのどちらかでしょう。

何度も言いますが、#一重瞼で瞼縁が隠れている。#腫れぼったくて目が開かない。#眼瞼挙筋が弱い。#蒙古襞が被さり突っ張って邪魔している。という形態と機能は異常です。現在ホモサピエンス種は70億人存在する中で、一重瞼は10億人以下です。この割り合いのマイノリティーは標準偏差からすると異常範囲です。先天性異常の中でも医療で治せない事は、差別無くして守って挙げなければなりませんが、治せる異常は治してあげるのが差別排除の方策です。国民国家の為に生体の機能向上を図るのが医療従事者の務めです。

一重瞼を二重瞼にする重瞼術は、アジアでは古来から美容目的の治療として横行してきました。近代特に戦後には、高度成長期に経済的目的としての美容整形が重瞼術を流行らせました。これがいけなかったのです。経済的目的の医療は科学的な知識の裏付けに乏しく、機能的改善が疎かにされ、更に国民から金儲け主義と捉えられました。

ふざけんなです。一重瞼は機能的な異常を伴います。その点を疎かにする重瞼術は金儲け主義ですが、機能と形態の両面を改良(=本来は正常化という意味で修正)する眼瞼形成術は、国民の機能性向上を図るという意味で医療の根幹の一つです。そんじょそこらの美容整形屋と一緒にしないで下さい。昨今の風潮として、失われた20年から脱する為に再びアベノミクスとかいうバブルを膨らましています。乗じて、金儲け主義の美容整形屋が幅を利かし、更に形成外科分野からもゾロゾロ転向する者が居ます。

私は今でこそ、最高の機能と形態を作り出していますが、これは30年間眼瞼形成術を努力研鑽した賜物に違いなく、若い経験の少ない美容整形チェーン店や形成外科から転向したばかりの美容的素養の希薄な医師とは一緒にしないで下さい。

私は機能(開瞼度は視界を得る為)と形態(美容だけでない形態正常化)を司ると言う意味での、美容形成外科医としての務めを果たしていきたいと思います。更なる国民国家の社会的適応性の向上を目的としています。