2017 . 7 . 14

鼻尖の形と位置は中顔面長を変えて魅せますが、まだ結果は見えません。

症例は37歳、女性。細面(ほそおもて)で美人の患者さん。顔面輪郭は卵型で理想的ですが、上中下の比率は上顔面(生え際~眉の下)70㎜:中顔面(眉下~鼻下)60㎜:下顔面(鼻下~頤尖)65㎜おでこが広いのは髪で隠せるが、中下のバランスが不満。中が短いのは鼻尖が上方にあるためで、下が長いのは上口唇(白唇部)が長いためです。

診察すると、鼻唇角が(側面で鼻柱と口唇の角度)110度を超えるので鼻尖が上方に向いている。鼻尖が上方で、しかも定規を当てると、鼻陵の延長線よりも低い。鼻柱基部〜Cupid‘s bowは20㎜です。15㎜以下が望ましいし、鼻柱基部が前方にあるために外反が無い。いわゆる鼻の下が長くて、ストンとしているタイプです。

鼻尖部隆鼻&下制術は耳介軟骨の2~3枚重ね:onlay がきれいです。但し軟骨移植はオープン法が好ましいです。鼻翼幅は34㎜と大きくないが、細面なので比べると大きいし、よく笑うので拡がらない様にしたいとの希望でした。でも縮めすぎると、逆に鼻尖との比率が崩れるので33㎜を予定しました。

下顔面が長いのに対しては、上口唇(白唇)短縮と口角挙上術の併施が求められます。

治したいのは顔面の縦比率です。患者さんは既に理解していて希望されました。どちらも何回もブログで提示している手術ですから、症例を見て理解していらっしゃる。そうなると優先順位と日程の決定が難しいのでした。本症例では鼻の手術を優先します。理由は後段で説明します。

下に術前、術直後、テープ固定後と術後1週間の抜糸後の正面像を提示します。

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13×10㎜の耳甲介軟骨を三つに分けて重ねてOnlay graft しました。鼻尖の形はダイアモンド型に作れました。これがきれいな鼻尖の条件です。しかも正面像でもハイライトが点状に見えます。では位置は?。正直に言うと、鼻尖下制術では腫脹によって鼻柱から鼻尖が持ち上げられてしまいます。正面像ではむしろ鼻尖が上に向いています。術後1週間ではまだ術前より上に向いています。鼻翼は31㎜に縮小し、あぐら鼻から丸い鼻翼に変化しています。

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それでは側面像はいかがでしょう。上図に左から術前左側面、術直後側面、術後1週間の側面像を並べます。鼻尖の上下の位置については術直後はかなり挙がっていましたが、1週間で半分下がりました。もっともまだ術前より上に向いています。でも鼻尖のツンッとした感じは見事に作れました。術前は鼻稜(鼻スジ)の延長線上より、鼻尖が後ろ(画像では右)にあります。術後1週間の画像では鼻尖が、鼻稜線よりわずかに前にあります。その結果鼻尖が認識されます。アップノーズとはこの形を言います。

軟骨の成形の説明に前に書いた図を転載します。これがダイヤモンド型の鼻尖を作る為の耳介軟骨のデザインです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA正面像です。患者さんの正面像に投影すると形が見えて来ますよね。OLYMPUS DIGITAL CAMERA側面像です。患者さんの側面像に投影すると違いが判りますよね。

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下面像では 術前と術直後で鼻翼の差と鼻孔の大きさが変わりました。鼻尖の両サイドのくびれも見られます。ただし下面像で創をご覧いただくと目立つでしょう。術後1週間の抜糸直後にはまだ創跡が見えますが、見えなくなります。先日他の術後3ヶ月目の患者さんが来院しましたが、見えないくらいでした。痕,Notch も出来ません。これは経過中にご覧に入れます。

今回の症例患者さんは、口周り+鼻という、私の好きな分野を治したいと考え、来院されました。ありがとうございます。口周りや鼻では判りにくいので、症例提示に協力いただけました。

口周りは個体の特性を反映している様に感じます。社会的な個性もです。例えばエステティックラインはゼロであるのが品が良く見えるのは当たり前です。人間だけが口で啄まないから、口が出ていない方が進化して見えます。対して、鼻が短く鼻の下が長いと品性が無く見えます。要するに”鼻の下を伸ばして”いる様に見えるからです。男性ならスケベに見えます。

面長の美人輪郭の本症例では、これらの問題が解消すれば、かなりの美人度アップが望めます。

ただし逆に、上に書いたように手術の順番とスケデュールは迷いました。今回第一段階として鼻の手術をしたばかりです。鼻尖の手術は腫脹が鼻尖に集中するため上に持ち上げられますから、経過を待たないと出来上がりが見えません。つまり画像上でも長期的経過を診ていかないと美しさが解かりません。いい機会なので鼻の美しさのポイントを説明します。

鼻のバランスは縦横の比が黄金分割比=5:8が基準です。顔面の幅も同様で、本症例患者さんは理想的でした。鼻稜も長く鼻根の高さがあるから比率は5:8に近いのですが、鼻尖が上方にありながら高さが低いため、中顔面が野暮ったいのです。

側面像での鼻は、鼻スジ(鼻稜)より鼻尖だけが前にあるとアップノーズ、後ろにあると鷲鼻と称します。白人は鼻稜が高いので鷲鼻が多発しますが、白人女性でもアジア人でも、女性ではやはりアップノーズが美しいとされます。

鼻稜の屋根は低いよりはシャープな方がいいのは当たり前ですが、まったく鋭角なのは自然界ではあり得ない不自然形です。尾根の稜線には両側の鼻骨が癒合する平面があります。画像に見られる様にハイライトも2本できます。本症例では鼻稜はストレートなので、鼻尖の形造りと下制術だけが適応になりました。

鼻尖への自家組織移植は、中心の適切な位置に確実に置かなければならないので、オープン法が好ましいのです。ガルウイング;Gullwing=カモメの翼とも称します。スーパーカー(ランボルギーニカウンタック)のドアーが開いたみたいに鼻翼軟骨上で皮膚を持ち上げるのです。したがって鼻柱の中ほどを切開します。その上で口唇短縮手術は両側の鼻翼基部から鼻柱基部を切開切除します。つまり、鼻柱を下図の様に横に2か所切開しなければなりません。フリーハンドでデザインを書いてみました。

DSC00932-e1498722578282-2赤の太い切開線が問題です。

同時に2本の切開をすると、少なくともその間の皮膚の血行が低下して、創傷治癒が遷延します。通常なら1週間で抜糸しますと、傷跡は拡がらず平坦なままで、凹みも膨らみもしませんから見えなくなります。でも創傷治癒が遷延すると、目立つ跡になります。

そこで二つの手術の段取りを検討すると、鼻柱の傷跡はまず3か月で安定します。コラーゲンが充分に析出して真皮層がしっかり硬くなり、毛細血管が再生して血行も正常化します。そうなれば次の口唇の手術が可能となります。早ければ瘢痕が成熟化するのは3か月、遅くとも6か月はかからないでしょう。

とにかく、鼻尖の手術は腫脹が集中して形態が出来上がるのは数週間先です。これまでの症例でも数週間後には必ず見事な鼻尖が見えてきました。今後は鼻の形態の経過画像をご覧いただいて結果を楽しみにしましょう。