美人を更に美人にする診療は、美容外科医冥利に尽きます。皆さんお間違えなく!美容外科は外面的にはそれぞれでも、内面的な美人が外面をより向上することで好結果をもたらすのです。
敢えて点数で表現します。美人度を100点満点で表現すれば、100点の人は理想ですが、その意味であくまでも想像の産物です。例えば40点の人が80点になるには大変な労力と時間と経済力を要する訳で、滅多に出来る事ではありません。テレビ番組での症例は経済的に優遇されるから出来るのです。40点の人を60点にすれば合格点ですが、美人の域には達しません。満足度はそこまでです。60点の人が80点にするのは、術者がそれなりの技を持ってすれば可能です。眼瞼下垂手術と目頭切開の併施はこのくらいでしょう。ですから私には自信があります。ましてや75点の人を80点にする為には私の平時の技術で可能な範囲です。眼瞼の手術などはおおむねこの範疇です。
さて本症例の様に内面的&外面的に70点くらいの人を90点にしようとする場合には、やはり複数の治療を丁寧に取り組んで行かなければなりません。でもそれはやりがいがあります。標準偏差からしてかなりの診療レベルを要するのですが、だから面白いのです。診療とは治療=手術だけでなく、診断=適切な選択も含みますから、経験を要します。そしてそのため、このレベルの診療は患者さんの満足度が高いから、結果も良好になります。何故なら、美人をより美人化すると、医療者側も医療対象である患者さん側も、満足度が高いからです。「これは素晴らしい美しい!」と私が言えば、患者さんも「うれしいぃ~!」と答えるからです。
症例は37歳、女性。細面(ほそおもて)の患者さん。顔面輪郭は卵型で理想的ですが、上中下の比率は上顔面(生え際~眉の下)70㎜:中顔面(眉下~鼻下)60㎜:下顔面(鼻下~頤尖)65㎜です。中下のバランスが不満。中1/3が短いのは鼻尖が上方にあるためで、下1/3が長いのは上口唇(白唇部)が長いためです。
診察すると、鼻唇角が(側面で鼻柱と口唇の角度)110度を超えるので鼻尖が上方に向いている。鼻尖が上方で、しかも定規を当てると、鼻陵の延長線よりも低い。鼻柱基部〜Cupid‘s bowは20㎜です。15㎜以下が望ましいし、ANS,Anterior Nasal Spine=前鼻棘が前方にあるために外反が無い。いわゆる鼻の下が長くて、ノペっとしているタイプです。
鼻尖部隆鼻&下制術は耳介軟骨の2~3枚重ね:onlay がきれいです。但し軟骨移植はオープン法が好ましいです。鼻翼幅は34㎜と大きくないが、細面なので比べると大きいし、よく笑うので拡がらない様にしたいとの希望でした。でも縮めすぎると、逆に鼻尖との比率が崩れるので33㎜を予定しました。
下顔面が長いのに対しては、上口唇(白唇)短縮と口角挙上術の併施が求められます。二次的に取り組む事を承諾されました。
治したいのは顔面の縦比率です。患者さんは既に理解していて希望されました。どちらも何回もブログで提示している手術ですから、症例を見て理解していらっしゃいました。いきなり私がカウンセリングされている雰囲気でした。でも優先順位と日程の決定が難しいのでした。本症例では今回鼻の手術を優先します。
下に術前、術直後、テープ固定後と術後1週間と2週間の正面像を提示します。
13×10㎜の耳甲介軟骨を三つに分けて重ねてOnlay graft しました。鼻尖の形はダイアモンド型に作れました。これがきれいな鼻尖の条件です。しかも正面像でもハイライトが見えます。では位置は?。実は鼻尖下制術では腫脹によって鼻柱から鼻尖が持ち上げられてしまいます。術後早期は正面像ではむしろ鼻尖が上にあります。術後1週間ではまだ術前より上に向いています。術後2週間で術前と同じくらいまで下りてきました。それでは側面で比較してみましょう。
今回鼻柱と白唇をトレースして(えんじ色線)、鼻唇角を比較します。鼻稜から鼻尖もトレースしました(インディゴ色線)。上図左から術前左側面、術直後側面、術後1週間、2週間の側面像です。
鼻尖の上下の位置については術直後はかなり挙がっていましたが、1週間で半分下がりました。もっともまだ術前より上に向いています。2週間で術前と同角度まで下がりました。予定通りですね。鼻尖のツンッとした感じは見事に作れました。術前は鼻稜(鼻スジ)の延長線上より、鼻尖が後ろ(画像では右)にあります。術後1週間の画像では鼻尖が、鼻稜線よりわずかに前にあります。図では線と鼻尖が重なっているのがその証拠です。鼻尖がわずかに前にあるのがきれいです。アップノーズとはこの形を言い、白人では至上とされます。但し白人では鼻が長いからで、アジア人で鼻が短いのに鼻尖が前にあったら豚鼻に見えて×です。本症例では見事にきれいで鼻が長い、アップノースになりつつあります。
下面像では 術前と術直後で鼻翼の差と鼻孔の大きさが変わりました。術後の三画像では鼻尖の両サイドのくびれも見られます。ただし下面像で創をご覧いただくと目立つでしょう。術後1週間の抜糸直後にはまだ創跡が見えますが、見えなくなります。実際術後2週間では赤い線が薄くなっています。創跡の曲がり角の切痕,Notch も出来ません。新しい特殊な切開線を駆使したからです。下からの結果はまだまだ完成ではありません。
口周りの雰囲気は人のTalent=特性を反映している様に感じます。社会的な個性もで、それは人格の一部です。例えばエステティックライン(鼻尖と頤を結んだ線と口唇の前後位置)はゼロであるのが品が良く見えるのは当たり前です。人間だけが口で啄(ついば)まないから、口が突出していません。口が出ていない方が進化して見えます。対して、鼻が短く鼻の下が長いと品が無く見えます。要するに”鼻の下を伸ばして”いる様に見えるからです。男性ならスケベに見えます。
面長の美人輪郭の本症例では、これらの問題が解消すれば、かなりの美人度アップが望め、75点が85点になるでしょう。今回第一段階として鼻の手術をしたばかりです。鼻尖の手術は腫脹が鼻尖に集中するため上に持ち上げられますから、経過を待たないと出来上がりが見えません。つまり画像上でも長期的経過を診ていかないと美しさが解かりません。ようやく術後2週間で鼻唇角が小さくなりました。
鼻の美しさのポイントを説明します。鼻のバランスは縦横の比が黄金分割比=5:8が基準です。顔面の幅も同様で、本症例患者さんは理想的でした。鼻稜も長く鼻根の高さがあるから比率は5:8に近いのですが、鼻尖が上方にありながら高さが低いため、中顔面の中心である鼻の美容的要素が不足しています。尾根の稜線には両側の鼻骨が癒合する平面があります。画像に見られる様にハイライトも2本できます。本症例では鼻稜はストレートなので、鼻尖をダイアモンド型への増高と下制術が適応になりました。
鼻尖の手術は腫脹が集中して形態が出来上がるのはまだまだ先です。これまでの症例でも数週間後には必ず見事な鼻尖が見えてきました。本症例では2週間で見えてきました。