眼瞼の手術の中でも、切開法で眼瞼下垂症手術に重瞼術を加える場合は保険診療になりますから、コストオフをできません。でも同時に目頭切開を併施する必要性がある症例では、こちらは自費になりますから、コストオフを希望される症例も少なくありません。そうは言っても、コスト面から保険手術を単独で受ける患者さんが半数はいます。今回の症例は目頭切開の必要性が高い一例ですから、やはりブログ提示症例を承諾されました。なお、目頭切開は当院の得意のZ-形成法以外の方法を受けてはいけません。特に本症例の様な蒙古襞の場合には絶対的です。後段で説明します。
症例は28歳の女性。先天性一重瞼で5年前他院で埋没法重瞼術を受けているが、1か月で外れた。左は追加したが、右は重瞼がないまま。幼少時から頭痛を感じていた。成人後には肩凝りも伴い始めた。上方視で前頭筋疲労つまり眼瞼下垂症に対して常に前頭筋収縮して眉を挙げて代償してきました。LF, Levator function : 挙筋筋力(挙筋滑動):11.5mmと軽度先天性眼瞼下垂症は伴うが、横径が小さいから正常域ではある。眼裂横径22mm、内眼角間35mm、角膜中心間56mmと蒙古襞の被さりが強く、しかも見ての通りに縦に突っ張っている(拘縮が強く眼瞼が開きにくい)。この様な形の蒙古襞はZ-形成法による目頭切開術が必要です。
手術法としては、Fenirephlin test.でよく 開くから、眼瞼下垂症は後天性が主体と考えられ、LT法(眼瞼結膜側から挙筋腱膜を瞼板に縫い寄せる方法)で可能と診断される。ブジーによるシミュレーションで重瞼線(下方切開線)は左の残る線が希望された。切除幅(上の切開線との間隔)は最低限の2mm。Puffy eyeでは無いので(ご覧の様に埋没が効いている右はむしろ窪んでいる。)、眼窩脂肪を焼くかは手術中判断の予定としました。目頭切開(蒙古襞の拘縮の解除術)は、定式の一辺4mm60度のZ-形成術を蒙古襞の稜線にデザインします。
画像を並べます。上左が術前、上右が術直後、下左は手術翌日、下右は術後1週間です。
いつもの様に術直後は出血が見られます。翌日には止まっていますが、今度は腫脹が亢進します。毎回書いています通り、48時間がヤマです。その通りに術後1週間では引き始めました。
近接画像は術前、術直後、術後1週間の順で提示します。
当院の得意な手術で定番となりました。眼瞼下垂手術は二つの手技を組み合わせます。開瞼は瞼縁がどれだけ挙がるかと、瞼縁の前に皮膚等の前葉成分が被さるかの二つの要素があります。
基準は顔面正立位(医学的には*フランクフルトラインが水平)での正面視の第一眼位で見ます。これらの画像はそのように撮影しています。一応向きが揃っていますよね?!。
*フランクフルトラインとは、耳孔(外耳道孔)上縁と下眼瞼の眼窩骨下縁を結ぶ線です。正確を規するなら、耳孔に棒を入れて、撮影時にカメラから光線を当てて眼窩下縁を合わせる方法があります。規格撮影法と言います。
開瞼を司る眼瞼挙筋は、下方の約1センチは腱になっていて収縮しません。先天性眼瞼下垂症は上方の筋体の筋力が生まれつき弱い筋原性です。後天性眼瞼下垂症は筋力は正常域でも挙筋腱(膜)が瞼板からはがれるなどして筋力が伝達されない状態です。挙筋筋力やフェニレフリンテストで鑑別します。先天性に後天性が合併している症例も少なくありません。本症例はそうです。
一重瞼は先天性疾患つまり病気です。重瞼術は先天性皮膚性眼瞼下垂症を治す手術です。日本人では約半数の人が一重瞼ですが、約2万年前にモンゴルで突然変異の遺伝子が産まれ、東アジアに蔓延してしまったからです。開瞼機能の低下を伴うので治すべきです。
同時に蒙古襞の遺伝子も突然変異でできました。日本人では、蒙古襞は程度差はありも必ず発生しています。一重瞼の人の平均と二重瞼の人の平均で3㎜の差があります。ですから重瞼術を行なう際は蒙古襞を3㎜退けないと自然な形態と機能になりません。二重なのに蒙古襞が被さって吊り目だといかにも重瞼術を受けた瞼の形態で不自然になりバレバレです。だから同時に治すことをお奨めしています。
本症例は典型的な症例で蒙古襞が水かき状に被さり、拘縮が強い。埋没法の重瞼術では改善出来なかった。だから、この手術の組み合わせが適応です。
前回は手術直後と翌日だけの画像でした。今回術後1週間目の画像を追加しました。本症例は腫脹が強い方で、機能的評価が難しく、形態的な改善性は手術直後はむしろデザイン通りですが、翌日は評価不能状態です。これまで毎回述べてきた様に、手術直後よりも48時間後の方が腫脹等は亢進します。これも毎回述べてきた様に、若年者では回復も早く、術後1週間の抜糸時には、意外と良くなっています。でも形態と機能の評価は次回以降にしたいと思います。