2017 . 11 . 8

黒目整形非切開法は素晴らしい結果なんです。

もちろん黒目整形は、黒目(角膜)を大きくする手術ではありません。角膜の露出を増やします。つまり開瞼力を強化します。開眼時は眼瞼挙筋の収縮が起きますが、不随意的です。いや、覚醒して行動している間には、目を開いていたい意志は働いていますが力を入れている自覚はないでしょう。本当は眠くても、やらなければならないことがあるから目を開いていようとするなら、それは随意的な行動です。

ただし収縮の程度、つまり目を開いた時の大きさは無意識(自律神経系の働き)に調節されていて、しかも挙筋の筋力は(先天的)個体差があり、また筋力が瞼縁に伝達されるかどうかの構造にも(後天的)個体差があります。また瞼縁が挙がっていても、皮膚が一重瞼や加齢による弛み(皮膚伸展)で被っていれば黒目の露出は減ります。このようにいろいろな要素が加わる訳ですが、基準として第一眼位(=顔面正立位での水平視)で黒目の上が2㎜以上隠れていたら開瞼低下です。この状態、つまり眼瞼下垂症の原因は上記の如く様々ですが、黒目整形とはこれらを改善する手術です。

ところが、眼瞼下垂症の診断法は確立していますが、勉強していない医者は診断出来ない。ただし合併症から眼瞼下垂症を疑うのは容易です。合併症は多岐に渉りますが、その機序(メカニズム)を知らなくても、治すことは出来ます。私はメカニズムを知って診断し、手術法を選び、眼瞼下垂症を治して患者さんを悦ばせてきました。

合併症には、重瞼の乱れ、増加、窪み目。三白眼や前頭筋常時収縮に因る額のしわ等と形態的にも多くこれらは目に見えます。もっと根本的な合併症は交感神経過剰状態に因る全身症状です。頭痛、肩こり、腰痛。食欲低下、羞明、不眠傾向等々神経症状は滝の様に流れます。

最近では見える合併症は患者さんが気付いて、来院のきっかけになります。今回はその様な症例で、私がメカニズムを説明して、眼瞼下垂症の診断の下に、黒目整形非切開法を施行して改善度が高かった症例です。「良く出来ました。」と言いたい所ですが、経過を追っていきましょう。そして足りない面はないか検討していきましょう。

症例は37歳の女性。先天性二重まぶた。20歳ころから三重以上に重瞼線が増えて、くぼみ目も生じた。ソフトC.L.20年で後天性眼瞼下垂が起きてきていると考えられる。ご覧の様に大きなコンタクトレンズを装用しているから判らないが、三白眼を生じていると自覚している。LF, Levator function (挙筋筋力正しくは挙筋滑動)は16mmと正常値で筋力低下はない先天性眼瞼下垂症はひていてきである。MRD, Margin Reflex distance (瞼縁から角膜中心の距離;正常値>3㎜)は2.5mmと正常値以下で、後天性眼瞼下垂症ではある。重瞼線は多数となっているが、生来のラインと思われる線は見出せる。

目的は重瞼線が乱れて目立つし、窪み目も老けて見えるから治したい。現症からして先天性眼瞼下垂症では無いと考えられ、前頭筋の収縮も診られることから、原因は後天性眼瞼下垂に有ると考えられる。それならば黒目整形非切開法=切らない眼瞼下垂手術=NILT法で治せると診断されました。重瞼線はどれかを強化した方が綺麗ですが、上の線に2点でデザインしました。計測はしていませんが、ご覧の様に目の窓の間が離れていて、蒙古襞は拘縮:目頭に突っ張った皮膚が斜めにピンっと水かき状に見られて、内側が挙がり難いつまり吊り目になると予想された。当然に私の得意な目頭切開Z−形成法=拘縮解除術の適応ですが、今回先ずは。簡単な手術から施行しましょうということになりました。

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上が術前と術直後の画像です。術直後は撮影時に疲労で開いていませんでした。よくあることですOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

術後1週間で経過を見ると、ご覧の様に綺麗で、目の開きも丁度良い。若々しくキリッとした美人の雰囲気を醸し出しています。上右は術後2週間です。

下に2列、近接画像の左から術前、術直後、術後1週間を並べてみましょう。

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敢えて今回第一に気になることを言えば吊り目が強調されて見えます。それはそれでキリッとしていいのですが、自然では有りません。開瞼は充分に得られ、結果的に重瞼はクッキリとして綺麗です。開き過ぎと訴えられるかも知れませんが、約2週間は後戻りが起きますから術後2週間の時点では適切です。日常生活では、開瞼力を随意的に力を抜けば凌げます。

診断は治療法の選択の為にあります。第一に手術適応か否か。手術法の選択としては、ダウンタイム(病気なら病悩期間ですが、美容上はこの様に言います。)&費用と効果&持続性を天秤にかけて検討します。眼瞼下垂症は先天性と後天性に分けて手術法を使い分けます。

先天性眼瞼下垂症は重症度に応じて生下時に治療されますが、軽症例は放置され、成長後に治療されることが多い様です。我々がその際に間違って適応しない手術をすると効果が得られないか、またはちょっと挙がっても直ぐ戻ります。原則的に先天性筋性眼瞼下垂症に対しては挙筋短縮術が適応で、重症例では吊り上げ術が適応になります。

後天性眼瞼下垂症は加齢と共に進行しますから、程度の差はあれど万人に生じます。またコンタクトレンズや擦る外力等外的な物理的要因は進行を早めます。そして、後天性眼瞼下垂症には様々な付随症状があります。徐々に目が開き難くなるのに対して、脳が反応して気張っちゃうから神経症状が起きてくるのです。ちなみに先天性では生まれつき開いていないので神経は反応しませんから、神経症状は起きてきません。後天性腱膜性眼瞼下垂症に対しては、LT法=切らないで眼瞼結膜側から挙筋を糸で縫い寄せて修復する方法が効果的です。本症例が典型です。

上に書いた様に蒙古襞の拘縮が強い為に、眼瞼の内側方面が突っ張っています。中央から外側方面が良く開いたので差が多くなりました。もっとも現在吊り目は普通に存在します。重瞼術だけしか出来ない医者が多いし、眼瞼下垂症手術をまともにする形成外科医は目頭切開を出来ないから、内側が挙がっていない人は沢山います。その中で私は自然な眼瞼の形態と機能を作り上げるべく30年間研鑽してきました。少なくとも本症例の機能と形態はかなり充足出来ました。今後の経過を診ていきたいと思います。術後2週間で落ち着いた頃に検討しましょう。

そこで今回術後2週間での画像を頂きました。

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なので、眼瞼部の画像と近接画像を加えます。説明は次回以降にします。