最近のブログ提示症例は、眼瞼と口周りが半々くらいになりました。正直な術後経過と見事な完成結果を載せてきて、評判になっている様です。症例が増えて書くのが大変ですが、手を抜くことはしません。いえ、それは手術はもちろん診療は誠心誠意の丁寧な行為を怠らないし、そのうちの多くをブログ提示するのですが、内容も一人ひとりの個性に応じてバリエーションがあるのをご説明していきます。今回は特にその一例として皆さんにも判りやすい症例でしょう。
症例は22歳、女性。先天性一重瞼で糊やテープでも二重まぶたにならない。これは先天性皮膚性の眼瞼下垂です。LF,Levator function: 挙筋筋力(正しくは挙筋滑動距離)14mmと正常範囲ではある。画像でご覧様になれる様に、水かき状の蒙古襞の拘縮強い。眼裂横径25㎜、内眼角間35㎜角膜中心間58㎜と眼球は離れていない(顔が小さい)が眼の間は離れている。典型的な蒙古襞の被さりが多い症例です。
当然いつものやつ、黒目整形ですが、時間的に切開法は難しいとのことで非切開法の黒目整形NILT法(切らない眼瞼下垂手術)と一重瞼の標準的な蒙古襞を二重瞼の標準的な蒙古襞に変えると共に、拘縮(水かき状の突っ張り)を解除する一辺4mmのZー形成法での目頭切開が適切と考えられます。年齢からして判る様に四月から就職して社会生活が変わるので3月中に手術を受けたいとの希望でした。遅い!手術枠が満席です。NILT法だけなら枠がありそうでした。末広型の最高位でNILT法を2点することとなりました。これだけでも目的の半分は達しられます。
画像を見て如何でしょう?。
術前画像は二葉載せます。皮膚性眼瞼下垂症に対する代償性に、開瞼時に常時前頭筋の収縮が不随意に起きています。眉が約1㎝も挙がっています。
NILT法を施行しました。術直後は傷みで顔を下げていました。しばらく冷却して内服薬(消炎鎮痛剤)を服用したら、すぐに痛みが引いて顔を上げて撮影して下さいました。眼瞼挙筋で開ける様になったので前頭筋収縮が緩和され、眉は元の位置に降りました。
近接画像を見比べて下さい。
とにかく眉の位置が降りました。前頭筋の代償性収縮がされないともとの位置に戻ります。一重まぶたという状態=先天性皮膚性眼瞼下垂症で、眼瞼が皮膚で覆われていると視界が得られないのを脳が感知して自動的に前頭筋への信号を発し続けます。バイパスです。眼瞼が容易に開ける様になるとそれだけで視界が得られるから、脳からの信号が絶えておでこの力が抜けて眉が元の位置に戻ります。元の位置とは眼を閉じているときの位置です。
今回は取り急ぎ非切開法の黒目整形=切らない眼瞼下垂手術=NILT法をさせていただきました。NILT法は眼瞼挙筋を眼瞼結膜側から折りたたんで瞼板に縫合し、挙筋の筋力が瞼縁に伝わり易くする方法です。同時に二重瞼を作製します。二重瞼にすると皮膚を持ち上げなくてはならない為に挙筋に負担が掛かり、それまでの力の入れ方では開きが足りなくなり得るので、挙筋を強化した方が良いのです。
本症例は蒙古襞が水かき状でZ-形成法の適応度が高かったのですが、時間が取れなくて申し訳なかったのです。いつか時間を取ってしましょう。ただし、重瞼線が内側の点から蒙古襞に向けてカクッと曲がって、不自然なラインにはなりませんでした。もちろん目が離れた感は解消していません。そこでよく見ると、見た目の離れた感のもう一つの理由は鼻根の低さにもあります。目と目の間の距離は鼻があると認識されなくなります。衝立てが立つと距離が半分ずつに見えるからです。鼻根を高くすれば蒙古襞も引かれますがその効果は微々たるもので、衝立て効果の方が大きいのです。鼻根から眉骨に掛けての彫りをヒアルロン酸で少しずつ作っていけば小さな変化で治せます。
毎回書いて来ましたが、目頭切開は蒙古襞の交縮を解除する目的と、被さりを無くす目的の二つを満たす手術をしなければ異常感が残り、しかも機能と形態の二面を改善出来ません。ですから、従来のデザインでの手術法で目頭切開を受けた人は不自然に見えてしまいました。
一辺4㎜のZ−形成法は機能と形態を満足に改善出来る唯一の手術法です。理論的にはこれまで説明してきた様に自明ですし、二重瞼の自然な形態に改良出来るのはこれまでのブログで見ての通りです。他の手術法で不自然な形態になったのを修正する方法としても利用出来ます。数例ブログに提示しています。もうすぐ全例の統計を取って学会発表する予定です。
本症例はNILT法を先行しましたが、結果は優良可のうちの“良”ですかね。今後目頭切開をしたら載せたいと思います。その前にもう一度NILT法の経過を魅せたいと思います。お楽しみに!